TOP画像:日本サニパック株式会社 井上充治代表取締役社長
子どもたち全員のメッセージを、地域のゴミ袋にプリント
3時限を使ったその内容は、日本サニパック代表取締役社長 井上充治さんが渋谷区域のゴミの現状を語る座学からはじまります。
2023年11月14日。1時限目は臨川小学校の体育館で行われた5年1組、2組合同の座学授業。渋谷区ではゴミがどのように処理されているのか、井上社長は子どもたちに優しく語りかけます。
「子どもたちの身近なところで、渋谷区の焼却炉がどこにあるか、どのくらいのゴミが排出されているか。そうした具体例で、ゴミ処理への関心を持ってもらうことから授業をスタートしました」
渋谷区で排出される家庭ゴミ1年間分の総量とは、およそ5万トン。渋谷区の人口が約23万人(※2)です。すると子どもたちはすぐさま計算して、ひとり当たり約217キロのゴミを年間で排出していると割り出しました。
(※2)https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kusei/tokei_shibuya/jinko/jumin_toroku.html
そして話は、日本サニパックが製造している環境配慮型ゴミ袋「nocoo」へ。“NO CO2”(ノー シーオーツー)という思いから命名されたこのゴミ袋を使用すると、ゴミ焼却時に排出されるCO2のおよそ20%が削減されると聞き、子どもたちは興味深々です。
座学の次はグループごとに分かれての話し合い。最終的にメッセージをビジュアル化して子どもたちそれぞれの思いをまとめています。
「次に、nocooを子どもたちにデザインしてもらいました。先生が伝えたかったのは、ゴミ袋を使う人たちの気持ち。街を歩いている人、仕事をしている人、渋谷に暮らす人、そういう方々にアピールできるメッセージを、デザインを通じて子どもたちに考えてもらいたかったのです」
こちらは、外袋のデザイン案。短い文章で、伝えたい内容を良くまとめています。
外袋(パッケージ)も同様です。今度は先生が「パッケージはどこで見られるんだろう?」と問いかけました。すると「お店です!」と、子どもたち。店頭でお客さんに手に取ってもらうために、どんなデザインがいいのだろうと、子どもたちは考えていきます。
「この授業の目的は、子どもたちのゴミ問題に対する関心を惹くことです。授業ではゴミの分別を指摘した子どももいれば、地球をキレイにしたいという壮大なテーマを掲げた子どももいました。限られた時間でしたが、みんな、よく話し合ってくれました」
子どもたちの目は、一様にキラキラとしていたそうです。将来の地球に対して、自分たちができることは何か、子どもたちは一点の曇りもなく未来を見つめます。そんな姿に、周囲の大人たちは襟を正す思いだったそうです。
「実は、このプロジェクトの実現までには、紆余曲折がありました」と、井上社長。子どもたちのデザインを、実際に袋に印刷するとなると、その費用は小さなものでは済みません。ゆえに先生たちとの打ち合わせ段階で、プロジェクトは一旦縮小方向に向かったそうです。ゴミ袋への印刷の代わりに、子どもたちがデザインした紙資料を挟む案が採用されるところでした。
「その話を聞いて、ちょっとまずいなと思いましてね。それでは子どもたちに対しても真剣さが伝わらない。先生の熱意も失ってしまいかねません。この際、採算は度外視して、実際に子どもたちのデザインをゴミ袋に印刷して製品化しようと、話を戻しました」
そうやって出来上がった、東京都渋谷区立臨川小学校の児童が作ったnocoo製品。この袋には5年1組、5年2組、それぞれ全員の子どもたちのイラストが印刷されています。その子どもたちの情熱が、周囲の大人を突き動かしました。子どもたちからのメッセージを載せたnocoo製品が、臨川小学校周辺のスーパーマーケット、ドラッグストアで販売されることになったのです。
2024年3月11日、子どもたちがデザインしたnocoo 販売初日の店頭(NATIONAL AZABU広尾ガーデンヒルズ)にて。
「日本サニパックは、地域に愛される会社でありたい。その思いで臨川小学校からの要請をお受けしましたが、大手小売店の方々も同じ気持ちでした。企業の社会貢献の原点は、地域への貢献です。その地域の子どもたちと一緒に、地域の未来を考えることがとても大切なことだと思うのです」
本プロジェクトは、臨川小学校の先生たちと今回初めて作り上げた課外授業でしたが、最終的にはゴミ袋が製品化され、その製品が地域で販売されるという、地域の大人を巻き込んだ実りのある内容になりました。「地球の笑顔はみんなの笑顔」という子どもたちのメッセージは、大人の心にもストレートに刺さります(つづく)。