EQUALLY BEAUTIFUL編集部を迎えたのは、日本サニパックの井上充治社長のあまりに印象的な言葉でした。
「昨今のSDGs、脱プラ(脱プラスチック)、反プラ(反プラスチック)という流れは、プラスチックを主原料とした製品を作る会社としてはアゲインストのように感じられることもあります。ですが、我々日本サニパックはこの流れに対して、真摯に、真正面から向き合うことにしました。そのために設立から50周年という節目の年に企業理念とロゴを見直しました。その際に制作した冊子の文章も、最終的にはコピーライターさんに手直しはしていただいておりますが、すべて私が書かせていただきました」
設立50周年に作られた「sanipak BRAND STORY BOOK 1.0」と「sanipak Message for sustainable society」
とおっしゃって手に取られたのが、「sanipak BRAND STORY BOOK 1.0」でした。この冊子の冒頭では世界が抱えるごみ問題が描かれていました。ごみを食べている牛の姿、水面がごみでまったく見えない川の景色。今この瞬間にも存在しているものの、普段我々が決して目にすることのない悲惨な光景です。
そうした現状だけではなく、冊子には会社のスローガンも書かれていました。
ごみを考えるということは地球を考えることであり、人の心を磨くこと。そんな風に読み取ることの出来るスローガンです
「企業が環境対応に取り組む時、分かりやすいのは対象を主力商品に絞り込むことです。原材料の切り替えに伴うコストや、外部への宣伝効果を考えた時、主力商品以外への注力は難しいかと思います。ですが、私たちは主力商品に関わらず、すべての商品に真正面から取り組むと決めました。ビジネスで収益を生み出しているからこそ、本気でSDGsに取り組めるのです」
日本サニパックではさらに渋谷区の企業ということで、渋谷区のごみ問題にも対峙しています。その一例が渋谷のハロウィーンのごみ回収です。かぼちゃに見立てたオレンジ色のごみ袋を協賛することから始まったこの取り組みは、渋谷区のごみ集積所をお花畑にしようというプロジェクトへと発展しました。日本サニパックの商品「nocoo(ノクー)」に、お花のイラストをプリントし、集まったごみ袋でお花畑を生み出すというものです。渋谷区とコラボしたこのごみ袋は、現在渋谷区推奨ごみ袋となっています。
「今年の我々の主力商品は「nocoo」です。この名前は「No CO₂ 」という意味から名付けました。ごみ袋は燃やすことが前提の商品です。通常のプラスチック製品はリサイクルという視点も必要です。一方ごみ袋は工場から生まれ、最後に焼却されるというライフサイクルであるため、焼却時にCO₂をいかに削減できるかにかかっています」
隣に座る社員の方お二人をO(酸素)に見立て、CO₂をジェスチャーでわかりやすく教えてくださった井上社長。
「プラスチックの使用量を抑えることで製造時にも焼却時にもCO₂の排出量を削減します。そのために主原料となるポリエチレンに、天然ライムストーン(石灰石)を約20%配合しているのです。とはいえ、劣化しづらく、また強度もあります。さらに、この「nocoo」はそれを低価格で実現しています」
成人男性の手でもなかなか破れない強度を持った「nocoo」。
ちなみにポリエチレンは、プラスチック素材の中でも、最も原料価格が安く、加工しやすい素材の一つで、リサイクル表示では「PE」と表記されるものです。ポリ袋に使われることが多い素材です。また天然ライムストーンとは日本では「石灰石」と呼ばれるもので、日本で唯一自給自足できる石材です。
「天然ライムストーンはヨーロッパのものを使用しています。日本の石灰石は粒子が荒く、それを細かくするのに時間と手間がかかりますが、ヨーロッパのものは粒子が細かく、袋の薄肉化を可能にしてくれました。薄肉化出来たことで更にプラスチックの使用量を削減することにも成功しました」
どの家庭にも必ずある、ごみ袋。環境問題やSDGsを意識する時、私たちはごみそのものを意識することはあっても、ごみ袋のことまで深く考えることはありません。ですが、ごみ袋で変えられる未来もあるのだと、そう感じられる時間でした。後編では更に深くお話を伺っていきます。