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微生物の力で水を浄化する「複合発酵」は、地球を水不足から守れるか

微生物の力で水を浄化する「複合発酵」は、地球を水不足から守れるか

微生物の力で水を浄化する「複合発酵」は、地球を水不足から守れるか

毎日使っている水道水。蛇口をひねれば当たり前のように出てくる清潔な水だが、2050年には世界で50億人が水不足に陥ると予測されている。限りある水資源をいかに有効活用していくかが、今、世界共通の課題となっている。

世界的な水不足への対策として
そんな中、東急株式会社、株式会社長大、東建産業株式会社の3社は、複合発酵技術を活用した水循環システムを2025年4月2日から導入した。導入先は、東急が渋谷で運営する新技術の実証実験拠点「SOIL(Shibuya Open Innovation Lab)」だ。
水循環システムは、トイレやキッチンから排出される汚水を複合発酵設備で浄化し、トイレ洗浄用水として再利用するもの。化学薬品を一切使用せず、微生物の働きによって再利用可能な水まで浄化することで、環境に配慮した排水処理を実現している。
ユネスコの「世界水発展報告書」によると、2050年には世界で50億人が水不足の状態に陥ると予測されており、水循環モデルを構築し、水資源を有効活用していくことが急務となっている。
「環境ビジョン2030」を策定している東急は、2030年までに連結グループ全体の水使用量を10%削減する目標を掲げている。今回の取り組みは、総合建設コンサルタントの長大が複合発酵技術の技術提供を行い、東建産業が複合発酵設備の稼働開始後の維持管理業務を担うという、3社連携による循環型社会の実現に向けた挑戦だ。
2年間の実証実験を経て都心部での検証開始
微生物の力で水を浄化する「複合発酵」は、地球を水不足から守れるか

「まいぱり」敷地内の複合発酵設備

3社は2023年2月から約2年にわたり、沖縄県宮古島市にある東急グループ施設「まいぱり」宮古島熱帯果樹園で、このシステムに関する実証実験を実施してきた。その結果、安定的な稼働と高い汚水処理能力を確認できたことから、都心エリアでの稼働の検証を開始することとなった。
微生物の力で水を浄化する「複合発酵」は、地球を水不足から守れるか
複合発酵技術とは、植物由来の酵素を用い、環境中の多様な微生物の働きの活性化により複合的な発酵を促進させ汚水を浄化する技術。従来の排水処理で課題となる悪臭や汚泥の発生を抑制することが可能だ。
SOILでは、浄化にあたって生物処理(複合発酵技術)を活用し、残留性のある化学薬品を一切使用しない。微生物の働きによって再利用可能な水まで浄化することで、環境に優しい排水処理を実現する。
不特定多数利用環境での安定稼働を検証
微生物の力で水を浄化する「複合発酵」は、地球を水不足から守れるか

SOILに導入した複合発酵設備

SOILでの複合発酵技術を活用した水循環システムの稼働を通して、不特定多数の利用者がいる環境下であっても、汚水の排出量、再生可能量、再生水の使用量のバランスを安定的に維持できるかを確認する。
また、導入施設の環境に応じて循環量の調整を柔軟に設定できるシステムの構築を目指すとともに、複合発酵技術で浄化された再生水の水質検査を定期的に実施し、精緻なデータを収集することで、安定した水処理を証明するエビデンスを蓄積する予定だ。
微生物の力で水を浄化する「複合発酵」は、地球を水不足から守れるか

SOIL外観のイメージパース

東急線沿線への展開も視野に
3社は今回の取り組みを通じて、複合発酵技術を活用したシステムの運用スキームを確立し、今後は東急線沿線をはじめとしたさまざまなエリアの施設へ導入を拡大することで、循環型社会の実現に貢献していく方針だ。
水資源の有効活用という世界共通の課題に対しての、日本の技術力を結集した新しいアプローチ。複合発酵技術を活用した水循環システムの今後の展開に注目が集まる。
writer
Equally beautiful編集部
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