エネルギー問題と環境問題の解決を両立
2021年、ENEOSと凸版印刷株式会社(現TOPPANホールディングス)は、エネルギーの低炭素化と循環型社会の実現を目指し、古紙を原料としたバイオエタノール事業の立ち上げについて協業検討を開始した。従来では、サトウキビやコーンなどの可食原料を使用していたため、食糧との競合や天候による調達の不安定性が課題となっていた。
この取り組みでは、通常の再生紙だけでなく、リサイクルが困難とされる防水加工された紙やノンカーボン紙などの難再生古紙をバイオエタノールの原料として活用するというもの。廃棄される古紙を原料とするため、原料を比較的簡単に調達できるという大きなメリットがある。
処理プロセスにおいてTOPPANは、難再生古紙から不要物質を除去し、繊維分が豊富なバイオエタノール製造に適した原料を作る前処理技術を開発。いっぽう、ENEOSは従来の製造方法を一新する連続生産プロセスを開発している。
従来の製造では、全製造工程が完了した際に全ての生成物を製造窯から取り出し、新たに原料を投入する必要があった。ENEOSが開発したエタノール連続生産プロセスは、製造工程で原料を継ぎ足しながらエタノールを抽出し、連続的に製造することで製造効率を大幅に向上させている。
2024年3月に共同開発契約を締結した両社は、さらに具体的な実証事業を開始。日本製紙富士工場内にパイロットプラントの建設工事に着手することが決定され、この度、工事がスタートした。

パイロットプラントイメージ図
実証プラントの規模は、古紙の投入量として約1~3トン/日、バイオエタノールの生産量として約300リットル/日を予定している。2027年前半に稼働を開始し、この実証のフィードバックを活かし、2030年度以降の商用化を目指している。日本製紙は富士工場の敷地提供とパイロットプラントの一部(糖化発酵プロセス)の運転を担当する。
製造されるバイオエタノールは、石油に代わる多様な用途での活用が期待されている。自動車燃料としてのバイオガソリンや、航空業界で注目されているSAF(持続可能な航空燃料)、さらにバイオケミカル原料としての活用も検討されている。
バイオエタノールを原料とするバイオ燃料は、植物等を原料として製造されるため、原料製造から燃料燃焼までのライフサイクルアセスメント(LCA)でのCO2排出量が化石燃料と比較して大幅に少ない。古紙から作るという再生可能エネルギーとしての可能性も秘めており、実用化されれば持続可能な社会の実現へ大きく前進する。
将来的には自治体からの古紙回収システムの構築も検討されており、地域レベルでの資源循環システムの確立が期待されている。古紙を原料とした国産バイオエタノール製造技術が確立されれば、エネルギー自給率向上と環境負荷削減の両立が実現される。
資源に乏しい日本にとって、自国で生産できるエネルギーは貴重だ。バイオエタノール製造には、日本と地球の未来がかかっている。
ENEOS
https://www.eneos.co.jp/
TOPPANホールディングス
https://www.holdings.toppan.com/ja/
日本製紙
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