前回に引き続き、日本サニパック株式会社(以下、日本サニパック)の取り組みを紹介していきます。日本サニパックはごみ袋をメインにしたメーカーですが、商品開発にあたっては事前に消費者の意識調査を繰り返しているそうです。ただ作るだけではなく、「わかってもらえて、買って使ってもらえる商品」を世に送り出す、ということに根本的に取り組んでいるのです。
会議室ではモニターを使ってわかりやすくお話しいただきました。
「調査して分かったのは、環境に対する意識が高い世代は60代、70代であるということです。さらに、環境問題の中で一番意識されているのは地球温暖化でした。次に海洋プラスチック、水資源と続きます。この調査結果を受けて、「nocoo」はCO₂削減を実現しながらも破れにくく、さらに低価格であり、サイズバリエーションも多く、環境対応もできているということにフォーカスした商品になりました。環境配慮型が消費者にどう認知されるのかについても意識調査しているのですが、環境配慮型に対しては付加価値を感じない人がほとんどでした。従来型のごみ袋が100円で、環境配慮型が120円の場合、どちらを買いますか? という質問には従来型を購入するという回答がほとんどでした。つまり、環境配慮型の商品は評価はされるかもしれませんが、経済的には価値を見出してもらえないと読み取ることが出来ます。環境に優しく、さらには安いということが求められているとも言えるでしょう」
どんなに環境に配慮しようとも、買ってもらえない商品には、商品価値がない。そんな結果が出ている中、「nocoo」は価格優位性も保っています。
「価格の部分については企業秘密とさせていただきたいのですが、ごみ袋から始まったメーカーだからこそ、徹底的に考え抜き、実行できているのかもしれません。私たちは今の時流だけではなく、未来のことも考えています。たとえば、今叫ばれているプラスチック問題を考慮して、ごみ袋を紙に戻す選択肢があるのか? と問われたら、現段階ではないと断言できます。なぜなら、紙では水が漏れるという難点があります。日本サニパック自体も紙のごみ袋からスタートはしていますが、衛生面で昭和の時代に戻ることが現在受け入れられるかと言ったら、それはNoです。衛生面だけではなく、街には悪臭も立ち込め、想像もつかない現実が待っていることは間違いありません。また紙のごみ袋は中身が見えない事により、ごみ回収作業員の安全確保上も問題があり、分別の徹底にも悪影響を及ぼします。ですから我々は、次の一手を打ち出しました」
そういって井上社長がモニターに映し出したのは、バーチャルタレントの「キズナアイ」さんでした。
コラボで作られたキズナアイさんのsanipak応援旗と井上社長。
Copyright 「©Kizuna AI」
「ごみ袋をきっかけに環境問題を意識してもらうために重要なのは、情報発信です。そのために、従来の企業イメージからは考えられない方にオファーする必要がありました。それが、キズナアイさんでした。キズナアイさんにサニパックの応援団長になっていただいてから、ホームページの閲覧者数は10倍以上に跳ね上がりました。また、Twitterもフォロワー数が4万人を超えました。こうした活動がやがてごみ問題、環境問題への意識に繋がっていただけることを願っています」
ごみ置き場がお花畑ってどういうこと!?キズナアイが大絶叫!
「我々の一手は広報戦略だけではありません。日本サニパックにはごみ袋、ポリ袋だけでおよそ800アイテムありますが、これらすべてを環境配慮型にします」
地下にはなんと全800種のごみ袋、ポリ袋のサンプルが! 社長自ら棚を動かしてオープン!
800ものアイテムの原料から変えていく。それは、会社そのものを生まれ変わらせるほど、大掛かりな挑戦です。
「主力商品だけを目立たせるというやり方もありますが、我々はそこから逃げずに、かつ3年間でやり遂げてみせます。実際に今の「nocoo」には手ごたえを感じています。多くの企業様からお問い合わせをいただき、今までお取引のなかった企業様からも賛同していただいています。一般向けに販売される小売業からだけではなくホテルや工場からと、業種もさまざまです。この勢いで全商品、もうやるしかありません」
自らを追い詰めるとも取れる発言でしたが、井上社長の雰囲気は柔らかでした。周りの社員の方々も、にこやかで、楽しくやっていらっしゃることが十分伝わってきます。
取材時に見せていただいた日本サニパックグッズの数々。遊び心にあふれていました。
Copyright 「©Kizuna AI」
さらに、日本サニパックは多方面で社会貢献もしているそうです。
「渋谷の会社ということで、先ほどの「渋谷区のごみ集積場をお花畑に」プロジェクトをはじめ、地元を大切にしていくことを考えました。渋谷区にはさまざまな問題を抱える子どもたちを救うための「こども食堂」があります。コロナの影響で1/4から1/3が一時休止、もしくは閉鎖となりました。コロナ禍で、何か食材をと思い「何が欲しいですか?」と尋ねたところ、切実に「お米」と言われました。そこまで逼迫していることを目の当たりにし、子どもたちの笑顔を取り戻すために他にも何か出来ることがないかと常に模索しています」
企業理念さえも超えた社会貢献。日本サニパックは自身の商品の枠組みを超え、より大きな社会に貢献していくことを目指しています。
「湘南エリアでは「Beach clean」の活動に協力しています。ごみ袋で社会貢献をということでごみ袋の提供をしていて、あいにくコロナ禍の今はできませんが、ボランティアとして社員有志でごみ拾いに参加しています」
行動を起こせば、そこに関わる人は必ず地球環境にさらに関心を持っていくはずです。大きな社会貢献は、スローガンである「きれいな地球と、きれいな心を。」に通じていることがひしひしと感じられました。
とても素敵な会社でした! ありがとうございました!
取材中、ほとんど「SDGs」という単語が出てきませんでした。SDGsという目標はもちろん大切ですが、SDGsという言葉を超えて地球環境を良くする、つまりはSDGsの根幹にまでアプローチするという考えが強くあるからだと思います。日本サニパックは「きれいな地球と、きれいな心を。」のもと、加速度をつけて進み続けていると思える取材でした。