廃棄への危機感に反して、拡大するリサイクル市場
グローバル調査会社であるIMARC Groupのレポートによると、世界の繊維リサイクル市場は2024年に54億ドルに達し、2033年には67.1億ドルに成長すると予測されている。年平均成長率は2.39%だ。
地域別では、ヨーロッパが最大の市場だ。EUの厳しい廃棄物管理規制に加え、消費者の環境意識が高いことが背景にある。北米も規制の強化、消費者意識の高まり、リサイクル技術への投資により、大きなシェアを占めている。
ただし、リサイクル市場で最大のセグメントは「プレコンシューマー繊維廃棄物」、つまり製造過程で出る余り布や端材だ。
消費者が使った後の廃棄物と比べて、処理が簡単でコストも低い。汚れがなく素材も均一なため、選別やリサイクルがしやすい。製造施設では、こうした廃棄物を新しい繊維製品に再利用することで、廃棄物と資源消費を大幅に減らしている。
流通では、小売店や百貨店が最大のシェアを持つ。リサイクル繊維が消費者に届く重要な場所だ。店舗の広いネットワークを通じて、持続可能性を求める消費者の需要に応えているのだ。
しかし、根本的な「市場に出回った衣類の廃棄」に対しての、直接的なアンサーではない。
それを示すように、EUではスウェーデンの繊維再生企業Rejuを中心に「欧州循環型的テキスタイル連合」が立ち上げられた。
そのマニフェストには、こう書かれている。
「我々は繊維廃棄物を避けられないものとして受け入れることを拒否する。代わりに、それを私たちの世代が解決できる課題とみなす」
EU、衣類廃棄の現在地
EUは既に2025年に売れ残りの服・靴の廃棄を禁止する法案を施行した。フランスは2022年から先行して「衣類廃棄禁止令」を導入している。規制の網が広がる中、業界全体での取り組みが求められていた。
欧州では年間1,260万トンの繊維廃棄物が発生しており、その大部分が埋立、焼却または輸出されている。新しい衣料品へのリサイクルはわずか1%に過ぎない。
連合は、この状況はもはや容認できないと強調する。そして、EUに対し、使用済み繊維廃棄物を、グリーン雇用、イノベーション、競争力の原動力へと変革するよう呼びかけている。
規制だけでは解決できない
規制だけでは解決できない
「自主的な取り組みは著しく不十分であることが証明された。リサイクル素材への需要を喚起するためには、拘束力のある基準が必要だ」
連合側はこう主張する。一部のファッションブランドによる循環型の取り組みだけでは、大量廃棄問題は解決できない。規制と投資がセットで動かなければ、システムは準備できないのだ。
「システムの準備ができていなければ、たとえ最も先見的な規制であっても期待どおりの成果を上げられないリスクがある。我々はそのギャップを埋める助けになるためにここにいる」
連合は変革を推進するため、3つの政策の柱を掲げた。
1つ目は、競争力ある欧州繊維チェーンの確保。環境および労働基準を守るために、生産を欧州に戻すこと。
2つ目は、高品質な繊維→繊維リサイクルの優先。使用済み繊維廃棄物を、新しい繊維の主要原料とすること。
3つ目は、繊維製品におけるリサイクル素材の義務化。野心的でありながら現実的な目標を、段階的に導入すること。
Rejuの CEO、Patrik Frisk氏は言う。「Rejuはシステム変革を目指す会社であり、変化は協力によって起こると強く信じている。だからこそ、この連合は業界全体が共に変革を推進するために重要だ」
連合は、政策立案者との対話を進めるための行動を開始し、繊維バリューチェーン全体の他の関係者にもこのミッションへの参加を呼びかけている。
ここには、繊維廃棄物リサイクル市場の拡大の影響は少しも感じられない。むしろもっと切実な叫びが込められているのだ。
真に求められる消費後の廃棄物も含めた循環。
数字上は成長する市場と、市場の数字だけでは見えてこない現実。
このギャップを埋められるかどうかは、これからの数年にかかっている。