品質への妥協なき追求が生んだ課題
シャネルは言わずと知れた世界有数のラグジュアリーブランドだ。その規模は非常に大きいものの、素材や職人の技にこだわり、大量生産・大量廃棄が問題視されるファッション業界とは少し距離が遠いようにも感じる。
そんなシャネルがなぜ、5,000万〜8,000万ユーロもの大規模投資を行い、業界を牽引する役割を担うのか。
「私たちは新しい持続可能性や報告要件を満たさない複数のサプライヤーとの関係を近年断ち切りました」
シャネルのファッション部門プレジデントのブルーノ・パブロフスキーは、とあるメディアにこう語った。
この発言は、シャネルが直面している深刻な現実を物語るものだった。
この発言は、シャネルが直面している深刻な現実を物語るものだった。
参考品質にこだわるシャネルは、素材に妥協を許さない。だがその一方で、環境問題の悪化やトレーサビリティの限界、昨今の世界情勢によって安定的な供給が危ぶまれているのだ。
Nevoldに込めた狙いと願い
今後もブランドを継続させていく上での、原材料の調達危機。それを打破すべき発表されたのがNevoldだ。
Nevoldの核となるのは3つの企業。リサイクル事業を手がける「L'Atelier des Matières」、欧州有数のウール紡績工場「Filatures du Parc」、革リサイクル専門の「Authentic Material」だ。
シャネル単独では必要な規模を構築するには限界があった。だからこそ、独立したオープンプラットフォームとして設計され、競合他社やスポーツブランド、ホテル業界まで巻き込んで、高品質リサイクル素材の市場を創出しようとしている。
この取り組みの主語は、あくまでブランド側であり、環境への配慮ではない。だが、結果として地球の環境問題にも貢献している。
これは、Nevoldという名前に込められた「決して古くならない」という願いにも通ずるものがあるのかもしれない。
最高品質を追求しながら、同時に地球環境にも配慮する。一見矛盾するようなこの両立こそが、新しい時代のラグジュアリーの条件になっていくのだろう。
シャネルが描く循環型の未来。それは、美しさと責任が共存する、これまでとは違うラグジュアリーの姿だった。