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海の嫌われ者、ナイロン糸が海に還る日

海の嫌われ者、ナイロン糸が海に還る日

海の嫌われ者、ナイロン糸が海に還る日

釣り糸の多くに使われるナイロンは、これまで海の嫌われ者だった。 生分解性がなく、一度廃棄されれば、海洋汚染の原因になるからだ。 時間の経過とともに砕けていくナイロンは、やがてマイクロプラスチックとなり、長く海に残り続ける。

教科書が、書き換えられる日
汚れるのは海だけではない。
その中で暮らす多様な生き物たち…ウミガメ、水鳥、魚類など、海の生態系全体に悪影響を及ぼす。 漁網に絡まったウミガメの写真を目にしたことがある人も多いだろう。 釣り糸もまた、同じように生き物に絡まり、命を奪いかねない存在なのだ。
海に生かされ、釣りを仕事とし、趣味として楽しんできた。そのはずなのに、意図せず海を汚し続けてきた。
しかし、そんな現実を覆そうとする発見が、2025年5月に発表された。
始まりは、愛媛大学イノベーション創出院南予水産研究センターが中心となって行っていた世界最大規模の海洋生分解性ポリマーのフィールド試験だった。市販されているナイロンの釣り糸の一部の分解が認められたのだ。
この結果を受け、東京大学、九州大学、化学物質評価研究機構の各チームが市販のナイロン釣り糸について分解テストを実施した。
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すると、一部の製品は天然の植物繊維として知られるセルロースと同じレベルで海の中で分解することが確認された。長年にわたって「ナイロンは自然には分解しない」とされてきた常識が、ひっくり返った瞬間だった。
だが、まだすべてが解明されたわけではない。なぜ一部のナイロンだけが海で分解するのか。その仕組みを完全に解き明かしたわけではないからだ。
今後は分解のメカニズムを解明し、分解性を持つナイロン製品を見分ける方法の確立、さらに漁網など他の漁業用プラスチックへの応用が見込まれている。
海で分解されるナイロンが当たり前になれば、海洋汚染の改善につながる可能性がある。
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生みの嫌われ者 ナイロン糸が海に還る日は、遠い未来の話ではないのかもしれない。
writer
Equally beautiful編集部
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