INTERVIEW

私たちの生活は、包材に支えられている。伊藤忠プラスチックスが語る、包材のこれまでとこれから

私たちの生活は、包材に支えられている。伊藤忠プラスチックスが語る、包材のこれまでとこれから

私たちの生活は、包材に支えられている。伊藤忠プラスチックスが語る、包材のこれまでとこれから

スーパーで夕食の食材を選ぶ。コンビニで昼食を買う。冷凍食品を電子レンジで温める。そんな何気ない日常の中で、私たちは食品の鮮度を疑うことがほとんどありません。いつでも新鮮なものを手に取れるのが、当たり前になっているからです。しかし、その当たり前は、食品を保護する包材(パッケージ)がなければ成り立ちません。今回は、包材の役割と、それを取り巻く今日の課題について、食品包材のサプライチェーン全体にワンストップで関わる伊藤忠プラスチックス株式会社に話を伺いました。

私たちの生活を裏で支える、食品包材
「皆さんが普段手にする食品は包材によって守られています。いわゆる食品包材と呼ばれるものですが、そこで重視されるのは酸素と水蒸気の出入りをコントロールするバリア性です。また、常温、チルド(低温保存)、冷凍と、用途によって食品包材の性能が決められていきます」
そう語るのは、伊藤忠プラスチックスの櫻井さん。包材第二本部の流通包材開発部長として、包材の変化を直に見つめてきた一人です。
「少し補足すると、バリア性には中身の状態を保つことと、外からの影響を防ぐことの両方があるんです。たとえば、コンビニのサンドイッチがおいしく食べられるのは水分が保たれているからです。また、酸素が通りやすいと酸化や腐敗が進み、食品が劣化するので、酸素を“防ぐ”というわけですね」
続けて話してくれたのは、包材第二本部でマーケティングを担う南部さん。櫻井さんたちが開発した包材を普及させていくために、日々マーケットをリサーチしています。
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左から南部さん、櫻井さん

おにぎりのフィルムを剥がす時に、私たちは“これがおにぎりを守ってくれている”とは考えもしません。ですが、そのフィルム一つとっても、商品に合わせて細かくカスタマイズされているからこそ、私たちは何も意識せずにすんでいるのです。
そして、食の多様性が進むとともに、包材は進化を続けてきました。しかし、そうした積み重ねの中に「課題が出てきた」と櫻井さんは続けます。
守るために進化し、守るために見直される
「包材業界で大きな転換点となったのが、中食※(なかしょく)市場の拡大です。その背景には、コンビニ市場の拡大があります。弁当容器やサンドイッチのフィルム、電子レンジに対応したチルド食品など、次々と出てくる新商品に応えるために新しい包材が次々に開発されていきました」(櫻井さん)
※お弁当やお惣菜などのこと。
市場が拡大するということは、より多くの消費者に安全に食品を届けなければならないということ。食品の保護を最優先にした結果、包材のスペックはより安全な方向へと定まっていきました。
「ただ、ここ数年で食品包材を取り巻く環境が大きく変化しました。例えば賞味期限が1ヵ月前後のチルド惣菜向けの袋包材は一般的にPET、ナイロン、PPフィルムといった素材の組み合わせで作られる事が多いですがこれらはプラスチック由来のもの。環境問題への意識が高まっていく中で、これまで通りの包材設計でよいか、見直す必要が出てきたんです」(南部さん)
私たちの生活は、包材に支えられている。伊藤忠プラスチックスが語る、包材のこれまでとこれから
その結果、本来必要とされる以上の包材を使用していたことが明らかになっていきました。食の安全を守ろうとするあまり、過剰に包装していた側面があったのです。
「分かりやすいところでいうと、コンビニで買うサンドイッチの包装の袋の厚みが変わかった事に気づかれた方もいるかもしれません。こうした、プラスチック使用量の削減(リデュース)は、環境問題に対する一つのアンサーです」(櫻井さん)
伊藤忠プラスチックスが取り組んでいるのはリデュースだけではありません。包材に使用する素材そのものの見直しも推進しています。その代表例が、割り当ててバイオマスPP(ポリプロピレン)を用いたファミリーマートのパスタ容器への導入です。マスバランス方式と呼ばれる手法を用いた、日本初の取り組みでした。
「マスバランス方式とは、石油由来の原料とバイオマス由来の原料を混合して使い、その投入比率を認証のもとで製品に割り当てる考え方です。原料を一気に置き換えるのではなく、従来の品質や生産体制を保ちながら環境対応を進めやすい手法なんですね。しかし、一目でそれとわかるものではありません。その分かりにくさや原材料のコストアップゆえに、導入までに様々なハードルがあるのも現実です」(櫻井さん)
私たちの生活は、包材に支えられている。伊藤忠プラスチックスが語る、包材のこれまでとこれから

マスバランス方式を採用したパスタの容器

「通常の素材よりもコストが嵩むのも課題です。包材は日常の中に自然に溶け込みすぎているぶん、すぐに価格に反映しづらい。正しい取り組みだからといって、広がるわけではないんです。ですから今は踏ん張り時だと思っています。環境対応は一社だけで完結するものではなく、業界全体で積み上げていくものですから」(櫻井さん)
それでも、ファミリーマートでの実績を足がかりに、化粧品メーカーや、医療分野においては検査キット容器への採用など食品以外の分野にもマスバランス方式は着々と広がっています。
そこにあるのは、少しでも今の状況を変えていきたいという各企業の想いなのかもしれません。
これからの包材は、どう変わっていくのか
いつの日にか、素材のコストも吸収できるようになったら、包材はどのように変わっていくのか。南部さんが見据えているのはユニバーサルデザインの広がりです。
「今後少子高齢化が加速していきますから、誰でも開けやすく、中身も一目でわかるものが求められていくことになります。AIやQRコードを活用すれば、外からでも鮮度が分かるような仕組みも実装できるはずです」(南部さん)
「様々な角度からユーザーのニーズを満たしていく、ということでしょうね。開発側の目線で言いますと、素材の価格や作り手の不足といった課題に対応していく中で、包材の種類やスペックの画一化は進んでいくと考えています。そこでは包材メーカー様との連携が欠かせませんし、情報のキャッチアップも大切です。幸い私たち伊藤忠プラスチックスは川上から川中、川下まで一気通貫に関わることが出来ますから、その強みを新しいモノづくりに活かしていきたいです」(櫻井さん)
私たちの生活は、包材に支えられている。伊藤忠プラスチックスが語る、包材のこれまでとこれから
「『Plus it up』ですよね。私たち伊藤忠プラスチックスは、素材を通して暮らしに付加価値をプラスすることを目指しています。環境対応はもちろん重要ですが、包材としての機能も守っていかなければならない。そのバランスを見ながら、より良い包材で、保護する商品の価値を高めていくこと。その道の先に、新しい包材があるはずです」(櫻井さん)
私たちの生活を当たり前に守ってくれている、包材。その“当たり前”をこれからも守っていくために、包材は進化を続けていきます。
本記事を読み込むうえで押さえておきたいポイントを、Q&A形式で整理しました。
Q1. なぜ食品包材は、長いあいだ見直されにくかったのですか?
A. 食品を安全に届けることが最優先だったからです。内容物の保護を重視すると、包材のスペックは自然と安全側に寄っていきます。その仕様が業界の標準として定着し、長く踏襲されてきたため、「変える理由」が表に出にくかったのです。
Q2. サンドイッチの包装の厚みを下げたのはどういう意味があるのですか?
A. 食の安全を守る機能は維持したまま、使うプラスチックの量を減らせる余地があった、ということです。これまで当たり前とされてきた仕様を見直した結果、必要以上に使っていた部分が見えてきた。その変化が、身近な包装のフィルムの厚みを変える形で表れています。
Q3. マスバランス方式は、なぜ理解されにくいのですか?
A. 製品の見た目や使い心地が大きく変わるわけではないからです。環境対応として意味のある取り組みでも、消費者や社内関係者に変化が伝わりにくい。その“分かりにくさ”自体が、導入のハードルになっています。
writer
Equally beautiful編集部
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