鉄道会社にとっても負担となる忘れ物傘に新たな価値を
JR西日本の近畿エリアにおける駅・列車での傘の忘れ物は、1ヶ月で約9,000本にものぼり、このうちビニール傘が約4200本(重量換算で約1600kg)も占めている。これまで、持ち主が現れなかった忘れ物傘は、月に4,000〜5,000本で、主に産業廃棄物として処理されてきた。
このプロジェクトでは、忘れ物ビニール傘を完全に新しい傘として再生する循環システムを構築、サーキュラーエコノミーの実現に近づいた。
まず、駅構内で回収された忘れ物ビニール傘は平林金属株式会社に集められ、金属部分とシート部分に分別される。シート部分はオカモト株式会社でペレット加工され、再生シートとして生まれ変わる。その後、ジェイアール西日本商事株式会社とオカモト株式会社の企画・製品化によって、新たなビニール傘として完成するのだ。

特筆すべきは、従来は廃棄されていたシート部分の再資源化を実現したところだ。これにより、ビニール傘のリサイクル率は重量比で約90%まで向上し、産業廃棄物の大幅な削減と資源の有効利用が可能になった。
ペレット化された材料は傘の製造だけでなく、ネームホルダー、クリアファイル、小物ケースなど、様々な製品へ応用できる。これにより、リサイクル材料の用途拡大と新たな価値創造が期待されている。
JR西日本は、製造されたリサイクル傘を株式会社JR西日本ヴィアインが運営するJR西日本ヴィアインホテルズの貸し出し傘として試験導入を予定している。また、リサイクル傘の活用先の拡大や、ペレットを活用した上記の傘以外の製品化についても検討を進めているという。
この取り組みは、JR西日本グループの環境基本方針に基づく循環型社会構築への貢献の一環として位置づけられている。ビニール傘の普及によって使い捨てられ、ロングライフな品物ではなくなった傘。本プロジェクトは、資源の有効活用と環境負荷の観点から、鉄道業界の環境配慮型事業の新たなモデルケースとして注目されている。