INTERVIEW

マテリアルリサイクルG-SHOCK誕生! サステナブルをG-SHOCKを通して表現するプロデューサーの想いとは?

マテリアルリサイクルG-SHOCK誕生! サステナブルをG-SHOCKを通して表現するプロデューサーの想いとは?

マテリアルリサイクルG-SHOCK誕生! サステナブルをG-SHOCKを通して表現するプロデューサーの想いとは?

バンドがちぎれたら、それまで? と、勘違いされそうなG-SHOCKですが、このブランドはそのような志向ではありません。長年の使用で傷んだ樹脂パーツの交換を行うなど、むしろサステナブルに長く付き合える腕時計なのです。そのG-SHOCKブランドから、今回初めてマテリアルリサイクル(※1)の新製品がリリース。早速、企画ご担当者に開発への想いをうかがってきました。

※1 組成を変えずにもう一度、製品に生まれ変わらせること。https://equallybeautiful.com/glossary/243
TOP画像:2024年4月に発売されたG-SHOCK「G-5600BG」(1万9800円)。
サステナブルへと力強くシフトするカシオ計算機
「やっぱりCASIOって、量産モデルに樹脂をいっぱい使っていて、言ってしまえば地球環境にネガティブなイメージもあるのかなと……。でも、我々も環境をしっかり意識しているんです。具体的には2020年を過ぎた頃から動き出しています」
そう話すのは、カシオ計算機 時計BU商品企画部長でありチーフプロデューサーの齊藤慎司さん。まず手掛けたのは、プラスチックの原料を石油由来からバイオマス由来(※2)へと変えていくことでした。
※2 https://equallybeautiful.com/glossary/78
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カシオ計算機 時計BU商品企画部長でありチーフプロデューサーの齊藤慎司さん。

はじめにPRO TREKブランドから導入が検討され、2022年モデル「PRW-61Y」で商品化を果たします。PRO TREKはトレッキングや登山など、アウトドア趣向のユーザーに愛用されています。彼らは特に、環境問題に関心が高いのです。そして以降のPRO TREK製品は、全製品においてバイオマスプラスチックを採用。さらなる品質確認を重ねたうえで、よりタフな使用が想定されるG-SHOCKブランドでも、バイオマスプラスチックの導入がはじまりました。
「ただバイオマス化が果たされても、これまでの製品と見た目は何ら変わりません」(齊藤さん)
それゆえユーザーと地球環境への想いを共有するきっかけが掴みづらかった面がCASIO側にはあったようです。G-SHOCKを通して環境問題への意識を少し高めてほしいが、外観で分かりやすく訴求することは難しい……。さぞかし歯がゆかったと思います。その後もさまざまな研究が行われるなかで、ついに商品化に至ったのが、今回のマテリアルリサイクルモデル「G-5600BG」でした。
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G-SHOCK「G-5600BG」のパッケージ。再生紙のボックス、麻袋の手提げ袋など徹底的にエコ仕様です。じつはこのモデルに限らず、G-SHOCKの上位モデルも含めて包装材のエコ化は進んでいるそう。齊藤さん率いるG-SHOCKブランドが、本気でサステナブルに取り組む姿勢をひしひしと感じます。

マテリアルリサイクルである理由
「バイオマスプラスチックへの置き換えが進む中で、生産工程の内側からも、何らかのアクションを起こせないか、というところがきっかけになりました」と、齊藤さん。
G-SHOCKの樹脂パーツは、主に射出成形で作っていきます。プラモデルの生産工程を想像してみてください。パーツごとに、液状に溶かした樹脂を金型に流し込み、次々にパーツが成形されていきます。その樹脂を流し入れる管(スプルー)のなかに、都度、余分な樹脂が残るのです。
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スプルーのなかで固まった樹脂。この材料がマテリアルリサイクルの対象となります。

「これまでは廃棄物として捨てられていたのですが、捨てずに再利用するのがこのモデルの主旨です。廃棄樹脂をもう一回粉砕して、バージンペレットと似た状態に戻しつつ、再度、混ぜ溶かして成形しています」(齊藤さん)
出来上がったG-SHOCKのマーブル模様は、マテリアルリサイクルの証。樹脂は組成変化させずに、そのまま液状にして溶かし込みます。黄色や赤色といったG-SHOCKらしい色彩が目立っていますが、それは黄色や赤色のリサイクル樹脂を使用しているから。リサイクル素材であることを隠さず見せているのが、G-SHOCKの正々堂々としたイメージと重なります。
「どの温度帯で適切に溶けていくか、混ぜ込む色の量はどれくらいかを鑑みて、コントロールしています。もうひとつはリサイクルする量ですね。やっぱりバージンプラスチックと、2回目のプラスチックでは多少なりとも、特性は変わってきます」(齊藤さん)
ここで特性変化について、齊藤さんが例えたのがチョコレート。一回溶かしたチョコレートをもう一回、冷やし固めたときに、まったく同じ状態には戻りませんよね? それと同じように樹脂もバージン材とまったく同じ状態になるわけではありません。その前提で、混ぜ合わせた樹脂の耐久性が許容範囲に収まる分量を探り、バージン材とリサイクル材の最適比率を割り出しているのです。
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粉砕してペレット状にした樹脂。そのまま溶かして再利用します。

もうひとつ注目したいのが、粉砕ペレットの形状。みじん切りのように細かく粉砕されたペレットですが、もとは管状(しかも先細っている)に固まった樹脂を粉砕したものですから、よく見ると形状がマチマチ。粉のように細かな破片も混ざっています。バージン材のように設計通りにカッティングされた紋切り型のペレットとは似て非なるもの。それを混ぜ合わせるのですから、やはり勝手が異なります。開発段階では、そうしたケースをひとつひとつ確認しながら、G-SHOCKの耐久性を担保できるか、入念に確認されました。
「このG-SHOCKをご覧いただいて、これは何なのだろうって興味を持っていただき、ブランドを理解してくださる人もいらっしゃると思う」と、齊藤さんは話しますが、まさにその通り! 
毎年発表されるG-SHOCKの新作の半数程度は、バイオマスプラスチックに入れ替わっているそうです。ただしカシオ計算機では、敢えて自社の時計が環境配慮型製品であることを高らかにアピールしてはいません。そんななかで、こうしたマーブルテクスチャーを持つモデルが登場すると、直感的にリサイクルアイテムだ! と、意識が向きます。
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色が強く出ているところと、薄っすら出ているところがランダムであり、個体差が出てきます。量産品でありながら、同時に一点モノでもあるというところにも面白みがあります。

時計ブランドが、環境配慮型モデルを作る意義
腕時計はアイテムそのものが小さく、リサイクルを手掛けても、社会に対するインパクトは小さいかもしれません。そのことに対してプロデューサーの立場から、齊藤さんがどう考えているのか、質問してみました。すると、とても頼もしい回答が……。
「正直なところ、時計だろうが、大型製品だろうが、あんまり関係ないかなと思っています。自分自身が関わることに対して、どういう意識を持つか。ビニール袋1枚のゴミを減らすのも、与えるインパクトとしては小さいものですよね。でもその積み重ねが、今の社会です。そこから未来をどう変えていくか。時計は常に腕にあるものですし、結構重要なポジションで、動機づけにもなると思っています」(齊藤さん)
齊藤さんご自身、サーフィンを趣味としています。海辺に身を置いていると、自ずと環境へと意識が向くそうです。サーファー仲間も皆、同様。お互いに影響し合うから、自分もさらに意識する。地球環境の保護を、完全に自分ごととして考えていることが、話の端々から感じられます。
「環境配慮型モデルをやらないっていう選択肢はもはやないと、僕は思ってます。そしてメーカーとして後手にも回りたくない。やるなら、さっさとやろう。どんどんやろうっていう思いです」(齊藤さん)
カシオ計算機の場合、扱うアイテムは時計に留まりません。同社が扱う電卓、さらには楽器……。時計で培った環境配慮のノウハウは、社内の他アイテムへと波及していくことも十分に考えられます。
プラスチックのリサイクルは、ともすると導入コストや開発費だけがかさみ、しかも既存モデルと見栄えも変わらず、どこからもコストアップ分を回収できずに、開発現場が板挟みとなるケースも多々見受けられます。そんななかで今回のG-SHOCKは、リサイクルをアイコン化することでブランド姿勢の強烈なアピールを達成。ユーザーに対しても、マインドチェンジのきっかけを与える貴重なモデルとなっています。
G-SHOCK リサイクルへのさらなる課題
G-SHOCKを含む、CASIOブランドの時計を製造するマザー工場は、山形県東根市にあります。その工場で使用する電気を再生可能エネルギー由来の電源に転換し、CO2排出量をゼロとする取り組みをこの4月からスタートさせました。カシオ計算機 コーポレートコミュニケーション本部 サステナビリティ推進室 五十嵐和典室長はこう話します。
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カシオ計算機 コーポレートコミュニケーション本部 サステナビリティ推進室 室長 五十嵐和典さん。

「弊社の場合は、UPDATERさんの『みんな電力』(※3)という顔の見える電力を採用していまして、RE100申請できる電力採用がはじまっています」
※3  https://minden.co.jp/
環境対策における会社としての指標を具体的に設定しているカシオ計算機。自社(Scope1※4)および自社で使用する電力発電(Scope2)時のCO2排出量を2030年までに38%削減(2018年比)、2050年までには実質ゼロを目指しています。
※4 https://equallybeautiful.com/glossary/270
さらにパートナー各社(Scope3)のCO2排出量を2030年までに30%削減(2018年比)を掲げ、すでにアクションを起こしています。華やかな側面がクローズアップされがちな腕時計ブランドも、こうして地球環境問題に正面から取り組んでいる事実は、ぜひ知っておきたいところです。また、そうしたブランドの想いに共感できるかどうかが、これからの消費選択行動の主要ファクターになるとEqually Beautifulは考えています。
腕時計は常にユーザーとともにあって、自分自身を表現する象徴として存在します。そのブランドが誇らしい活動をしていると、身につける側も誇らしい気持ちになります。その意識変容は、やがて行動になって表れてくるはず。
そうしたプラスの循環が生まれるきっかけとして、今回紹介するG-SHOCKは社会に認知されていくのでしょう。
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カシオ計算機 コーポレートコミュニケーション本部 サステナビリティ推進室 室長 五十嵐和典さん(左)と、時計BU商品企画部長でありチーフプロデューサーの齊藤慎司さん(右)。

writer
Equally beautiful編集部
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