フッ素と炭素の化合物であるフロンは化学的に安定した性質があり、人体への影響も少ないという利点があります。冷蔵庫やクーラーなど、多くの製品に使用されてきましたが、1980年代にCFCやHCFCといった特定フロンを一因としたオゾンホールの拡大が確認されました。
オゾン層は有害な紫外線から地球上の生物を守る役割を果たしており、国際的に取り組まねばならない問題として広く知られることになりました。
1988年、「オゾン層の保護のためのウィーン条約」(以下、ウィーン条約)が発効されました。ウィーン条約では“オゾン層の観測・研究への協力”、“法律・科学などの情報を交換すること”が掲げられ、人間ひいては地球環境の保護へと向けた枠組みを作りました。
ウィーン条約の補完として1989年に発効されたのが、モントリオール議定書です。モントリオール議定書では、特定フロンを含むオゾン層破壊物質(ODS)の生産と消費を制限しました。
ODSの段階的な削減のための時間枠を設定し、強制力を持たせたのもモントリオール議定書の特長です。また、当初から途上国を視野に入れており、ODSの代替品や技術の開発、移行を支援するための国際的な協力と情報交換を奨励しています。
議定書の実施により、多くの国でODSの使用が大幅に減少し、オゾン層の破壊が抑制されました。これにより、地球上の生物が紫外線からの保護を受けることが可能になりました。一方で、特定フロンに代わる物質として使用が進められてきた代替フロンはオゾン層への影響は少ないものの、地球温暖化を促進するといったマイナス面も明らかになりました。現在では代替フロンの資料量削減も、国際的な目標となっています。
モントリオール議定書の功績は、ODSの使用料削減だけではありません。モントリオール議定書を機に、環境問題に対する国際社会の協力と行動の重要性が認識され、世界各国が共通の目標に向かって協力するモデルが構築されたのです。後に続く、京都議定書・パリ協定に大きな影響を与えたと言えるでしょう。