日本が「資源“循環”大国」になる未来
使用済み製品を再び同じ製品として再生する「水平リサイクル」。環境負荷を大きく軽減する方法であるが、使用済み製品から同じ品質のものを作り出すには、手間や高い技術が求められるなど、コストがかかることが大きな壁となる。
廃棄窓ガラスは、国内で毎年50万トン以上も発生しており、これらは埋め立てやカスケードリサイクルによって処理されてきたが、資源の浪費や環境負荷の面で課題が指摘されていた。
今回のスキームは、まず廃棄物処理を担うオリックス環境が、改修現場から廃棄窓ガラスを回収し、アルミサッシなどの付属部材を分離。その後、TREガラス株式会社が回収ガラスを粉砕し、カレットと呼ばれるガラス原料に精製、品質確認を行う。
最終的にAGCが、このカレットを使用して新たな建築用板ガラスを製造する。オリックスはこの全体スキームの構想およびマネジメントを担っており、関係各社の強みを最大限に生かすことで、経済的にも持続可能なリサイクル体制の確立に至った。
この仕組みの構築により、窓ガラスの廃棄に関する課題解決が大きく前進する。再利用されたカレットは、1トン利用するごとに、バージン原料(珪砂やソーダ灰などの未使用原材料)を1.2トン節減できる見込みがあるという。また、バージン原料に比べてカレットは低温で溶解できるため、製造過程におけるエネルギー消費の低減にもつながる。
さらに板ガラス1トンの製造に際して、原料調達から製造までの過程で排出される温室効果ガス(GHG)を約0.5~0.7トン削減する効果も見込まれている。
そのほか、原材料の輸入依存度を下げる点でもメリットが大きい。ガラスの主原料である珪砂やソーダ灰の多くは海外から輸入されており、経済安全保障やコストの観点からも、国内資源の循環利用は重要性を増している。
今後は、参加企業の拡充を図るとともに、建築用以外のガラス、たとえば太陽光パネルや自動車の窓ガラスなど、他用途への展開も視野に入れて検討が進められる。
両社は協力関係を深め、ガラス水平リサイクル事業の拡大と持続可能な社会の実現に向けて、さらなる取り組みを進めていく構えだ。今回の試みは、単なる資源循環の枠を超え、日本が「資源循環大国」になる布石として、大きな意義を持つ。