上田商会、100年の歩み
EB まず、今日までに為されてきたことなどの、貴社の歩みについてお教えください。
上田商会 1925年に当社の前身である上田工業所が北海道滝川市で創業し、灌漑用水路に使用されるコンクリート製品の製造を開始しました。その後登別市に工場を作り、1950年に分社独立したのが現在の上田商会です。それ以来当社は道路用コンクリート製品を中心に、道央圏から道南圏にかけて工場や営業所を配置し、事業を行ってまいりました。今年で創業97年目を迎えています。
この他、主に都市部の高層建築物に使用されるコンクリート製の梁や柱等を製造し、北海道外にも納品。13年前から維持補修工事業も始め、建築物や土木構造物のリニューアル工事にも携わっております。今年3月には移動式コンクリートサウナ「CUBERU」の販売を開始しました。より多くの人に共感いただける商品開発を目指しております。
サステナブルかつ、低コストのワケ
EB 今回新たに発売された、『エシカルコンクリートTUTUMU』を用いた新製品の概要についてお聞かせください。
上田商会 エシカルコンクリートTUTUMUは、通常のコンクリートに比べセメント使用量を削減し、産業副産物であるフライアッシュや高炉スラグ微粉末を使用したコンクリートです。一般的なセメントを使用したコンクリート製品に比べて、材料由来の二酸化炭素排出量が平均41%(※)、1トンあたり約50kg削減されます。
また、強度・耐久性においては通常のコンクリート製品よりも向上します。当社では一部の配合を指定された製品を除く全てのコンクリート製品にTUTUMUを使用します。将来的には再生骨材の利用も視野に入れており、天然資源の枯渇リスクに対応していく考えです。
※工場毎に配合が異なるため、CO2削減割合は全社の平均値です。
EB 今回の『エシカルコンクリートTUTUMU』は、申し上げていただいた通り環境に配慮した製品でありながらも、従来のコンクリート製品と同価格ということで、サステナブルな社会の実現に大きく貢献することと思います。コストをここまで抑えるに至った、貴社の特別な工夫などがございましたらぜひお聞かせください。
上田商会 我々の業界では近年、低炭素型あるいはカーボンネガティブ型のコンクリート製品というものは開発されております。しかし様々な理由から価格が高くなってしまうため世に普及しづらいという課題がありました。
そこで当社は、先端的な技術を使わずに広く普及させることが可能な低炭素型コンクリート製品のモデルを作ろうと考えました。そのため、従来のコンクリート製品と同価格というのは開発当初からのテーマとして定めていたことです。TUTUMUに使用されている「フライアッシュ」は、生産性向上や美観向上を目的として既に当社では使用していました。
また「高炉スラグ」も、建設業界では構造物の特性によって古くから広く使用されている材料です。これらすでにある一般的な材料を組み合わせて低炭素型のコンクリートを製造し、全ての製品に適用するため、当社では設備投資を行うと共に配合実験を繰り返し、TUTUMUのリリースに至っております。実際には一般的な材料の組み合わせとはいえ、若干のコスト上昇はあります。それでも価格に転嫁しないということが、普及に向けた当社の覚悟と捉えて頂ければと思います。
将来的には業界内でも低炭素型コンクリートが普及し、コンクリート製品がサステナブルな社会の実現に貢献しているということが広く認知されることを願っております。
『TUTUMU』の「これから」
EB 最後に、今後この製品を生活者の身近なものにしていくために、貴社が行っていらっしゃる取り組み等がございましたらお聞かせください。
上田商会 各自治体やデベロッパーさんに対して普及活動を行うという事は勿論ですが、建設産業だけにアプローチしていても一般の方にとって身近になるということは難しいと考えております。そのため当社の歩みでも少し触れましたが、コンクリートサウナ「CUBERU」のような一般顧客も販売対象とするような製品でもTUTUMUを使用し、低炭素型コンクリートの認知を広めていくことが肝要と捉えています。
また、TUTUMUを使用した製品売上の一部は北海道コンサドーレ札幌のSDGsプロジェクト「PASS」に寄付し、地域の子供たちへの教育事業に充てて頂くことになっております。コンサドーレ×エシカルコンクリート×UEDAの事業が地域に還元されることにより、より生活者の身近な存在になれたらと思っております。将来的には低炭素型のコンクリートだったら、こんなものを作ってみたいなという声が一般の方々から聞けるようになると嬉しいです。
コンクリートから社会を豊かに。上田商会の挑戦はこれからも続いていく。