亜鉛やマンガンなど、肥料の元を抽出
日々の暮らしを支えてくれている乾電池。近年頻発する災害時の備えとして必ず非常持ち出し袋には用意しておきたい品物だ。アルカリ乾電池、マンガン乾電池、ニッケル乾電池などさまざまな種類のものがあるが、なかでもアルカリ乾電池とマンガン乾電池の中身には亜鉛やマンガンといった資源が含まれている。
中部保全株式会社によると、乾電池のリサイクル率は約2割程度で、その多くが埋め立て処分されている。乾電池をリサイクルし、資源を再活用することは、サステナブル社会の実現に必要不可欠だ。
そのようななか、パナソニックエナジーは、乾電池の新たな価値を引き出すため、使用済み乾電池を有効に活用する方法を模索してきた。これまでにも乾電池の材料リサイクルに関する実証実験を行い、さまざまなパートナー企業と協力している。

その中で、パナソニックは2023年からTOMATECと協議を開始し、実証試験を経て、2024年9月に使用済み乾電池を原料とする熔成微量要素肥料のリサイクルプロセスを確立した。このプロセスは、パナソニックが乾電池からブラックマスを分離し、TOMATECがコーティング、封止、絶縁など様々な特性を利用した機能性ガラスに加工する独自のガラスフリット化技術を用いてその混合粉末を熔成微量要素肥料(※)に加工する。これは、両社にとって初めての取り組みだ。
亜鉛、マンガン、鉄などが含まれる微量要素肥料は、作物や土壌に必要なミネラルを補充し、作物の成長を促進する役割を果たす。これにより、効率的な作物栽培が可能となり、土壌の健康維持や食料生産の安定化に貢献する。また、持続可能な農業を支える重要な資源となる。

今後、パナソニックとTOMATECは、電池由来の微量要素肥料の活用拡大を進め、さらなる資源循環を進めるとともに、環境への取り組みを強化するとしている。最終的には、「飢餓や貧困の解消」といった社会課題の解決に貢献することを目指しているという。工業と農業というまったく異なる要素を繋ぐ仕組みが、これからのリサイクルには必要なのかもしれない。
(※)熔成:使用済み乾電池に含まれる亜鉛・マンガンを溶融し、ガラス化することで還元され、作物が吸収しやすい状態にするプロセス。