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パーム油フリーの化粧品はできるのか。熱帯雨林を守るための味の素の挑戦

パーム油フリーの化粧品はできるのか。熱帯雨林を守るための味の素の挑戦

パーム油フリーの化粧品はできるのか。熱帯雨林を守るための味の素の挑戦

環境保護が声高に叫ばれる中でも、東南アジアの熱帯雨林は伐採され続けている。その主な理由のひとつが、アブラヤシのプランテーション拡大だ。アブラヤシの果実から搾られるパーム油は安価で大量生産が可能なため、世界で最も消費される植物油となり、食品から洗剤、化粧品まで幅広い製品に使われてきたのだ。

だがそれは、熱帯雨林の大規模な伐採と CO₂ の大量放出、農園で働く労働者の人権侵害と常に隣りあわせだった。加えて、生産地が赤道付近の温暖多雨な地域に限られるため、気候変動や地政学的リスクによって供給が不安定になりやすいという構造的な脆弱さもある。
化粧品業界も、この問題と無縁ではない。
シャンプーや洗顔料に配合される界面活性剤(水と油をなじませ、汚れを落とす成分)の多くは、パーム油を原料として製造されてきたのだ。
持続可能な原料への転換が業界全体の課題となる中、微生物が産生する「バイオ界面活性剤」への関心が高まっており、その世界市場は2021年から2030年にかけて年率13%の成長が見込まれている。しかし従来のバイオ界面活性剤は、泡立ちの弱さや色・においの残りという課題から、化粧品への実用化が難しいとされてきた。
その壁を乗り越えたのが、味の素株式会社だ。2026年3月、同社は発酵技術を用いてパーム油も石油も使わずにアミノ酸系界面活性剤を製造する新製法を発表した。
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世界各地で安定調達できる糖を原料とし、微生物に与えることで「バイオアシルグルタミン酸」を生み出す仕組みだ。キーとなったのは、同社が長年培ってきたアミノ酸研究の知見。これを応用することで、従来のバイオ界面活性剤が抱えていた泡立ち・色・においの課題を解消し、肌への刺激が少ないというアミノ酸系本来の特性もあわせ持つ素材の製造を可能にした。
パーム油フリーの化粧品はできるのか。熱帯雨林を守るための味の素の挑戦
現在は量産化・商用化に向けた実証実験を進めており、2026年中にはシャンプーや洗顔料メーカーへのサンプル出荷を開始する予定だという。
この試みが本格化すれば、熱帯雨林の破壊を止められるだけではなく、原材料の輸送コストや二酸化炭素排出量も大きく抑えられるはずだ。
しかし一方で、新しい技術や素材には往々にして原価の高騰が伴うもの。
各メーカーがコスト上昇を呑んで、パーム油への依存をどのタイミングで打ち切るのか。
この先求められるのは、原材料の見直しだけではなく、利益構造の変革であるのかもしれない。
Q&A
Q. 界面活性剤とは何ですか?
A. 水と油のように本来混ざり合わない物質を均一になじませる働きを持つ化合物である。シャンプーや洗顔料が泡立ち、汚れを落とせるのはこの成分の作用によるものだ。化粧品・洗剤に不可欠な原料であり、これまでその多くがパーム油や石油を原料として製造されてきた。
writer
Equally beautiful編集部
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