NEWS

廃棄太陽光パネルの行く末は? 行政の足踏みと、民間企業の挑戦

廃棄太陽光パネルの行く末は? 行政の足踏みと、民間企業の挑戦

廃棄太陽光パネルの行く末は? 行政の足踏みと、民間企業の挑戦

太陽光パネルの大量廃棄問題について政府のリサイクル義務化が費用負担を巡って頓挫するなか、日立製作所、イトーキ、トクヤマの3社が従来の常識を覆す技術開発に成功した。廃棄パネルの板ガラスを粉砕せずそのまま活用し、強度を保ちながらCO₂排出量を最大50%削減するオフィス家具への再利用を実現した。

世界初の板ガラス再利用技術を実現
2030年代後半。日本が直面するのは、年間最大50万トンという太陽光パネルの大量廃棄問題だ。普及期に設置されたパネルが寿命を迎え、一斉に役目を終える時期がやってくる。
そうした事態に備え、日本政府は使用済み太陽光パネルのリサイクル義務化を検討していた。だが、2025年8月末に義務化は断念された。リサイクルの費用の負担で折り合いがつかなかったとされている。
期限が迫る中で暗礁に乗り上げた形となったが、民間企業は粛々とした歩みを続けている。
日立製作所、イトーキ、トクヤマの3社による新たな挑戦だ。
3社が取り組んだのは、これまでの常識を覆すアプローチ。廃棄太陽光パネルから回収した板ガラスを粉砕せず、そのままオフィス家具に再利用する技術の開発だ。従来は砕いて路盤材やガラス原料にするのが一般的だったが、板ガラスの形状を保ったままでの活用を目指した。
最大の壁は劣化の問題だった。太陽光パネルの重量の約6割を占める板ガラスは、長期間の屋外使用により「亀裂」や「アルカリ溶出」といった劣化が生じる。安全性や耐久性を確保したまま再利用することは、技術的に困難とされていた。
廃棄太陽光パネルの行く末は? 行政の足踏みと、民間企業の挑戦
この課題を3社は連携で解決した。
まずトクヤマが独自の低温熱分解法で高品質な板ガラスを回収。
次に日立が、「亀裂」と「アルカリ溶出」の強度への影響を複合的に評価し、劣化要因を判別する画像処理と組み合わせることで、回収ガラスの強度を推定する技術を開発した。これにより回収ガラスの安全性と耐久性を確保できるようになったのだ。
そしてイトーキが、回収ガラスの微細な凹凸を逆手に取り、視線を遮る意匠材としてWeb会議ブースを試作。太陽光パネルから回収した板ガラスを粉砕せずにオフィス家具に再利用する実証実験を実現した。
三社の発表では「オフィス家具として使用可能な強度を保ちつつ、CO₂排出量を最大50%削減できた」とされている。
この世界初の取り組みが今後、どのような歩みを進めていくかはまだ分からない。
だが、行政が硬直する中で、民間企業は新たな道筋を示した。これは廃棄物処理を超えた、価値創造への転換にほかならない。
writer
Equally beautiful編集部
  • facebook
  • twitter
  • line