音楽活動と環境保護の両立
ボーカルのクリス・マーティンは以前から環境問題に強い関心を持っていた。大規模なワールドツアーを重ねる中で、音楽活動が地球環境に与える負荷の大きさを実感していたのだ。
転機となったのは2019年。新アルバム「Everyday Life」をリリースしたにも関わらず、Coldplayは従来のような大規模ツアーを一時的に見送ることを決めた。環境への配慮を重視し、より持続可能なツアーの方法を検討するためであった。
2年間の準備期間を経て、2021年に始まった「Music of the Spheres World Tour」は、音楽業界に新たな視点をもたらすものとなった。
このツアーは、“REDUCE”・“REINVENT”・“RESTORE”という3つの明確な方針に基づいて設計された。
“REDUCE(削減)”では、リサイクルを徹底し、CO2排出量を50%削減することを目標に掲げた。実際には目標を上回る59%の削減を実現している。
“REINVENT(革新)”では、新しい環境技術をサポートし、持続可能で超低炭素のツアー方法を開発した。注目すべき成果が、BMW社と共同開発した世界初のモバイル充電式ショーバッテリーだ。リサイクル可能なBMW i3バッテリーを活用したこのシステムにより、ステージ全体を再生可能エネルギーで稼働させることが可能になったのだ。
“RESTORE(回復)”では、自然・技術ベースのプロジェクトへの資金提供により、ツアーを環境にとって有益なものにすることを目指した。販売されたチケット1枚につき少なくとも1本の新しい木を植え、その生涯にわたって維持することを約束している。
ペットボトルから生まれるレコード
ツアーでの取り組みに加えて、Coldplayは音楽制作でも新たな挑戦を始めた。全10枚のアルバムを「EcoRecord」として再発売するのだ。
EcoRecordとは、リサイクルされたペットボトルから作られるレコードのことだ。9本のペットボトルから1枚のレコードができる。回収されたペットボトルを洗浄し、小さなペレットに加工してからレコードの形に成形する。普通のビニールレコードと音質は変わらないが、製造時に出るCO2を85%削減できるのだ。
つながりから生まれる未来
「Coldplay」というバンド名は、友人のバンドから譲り受けたもの。ただ単に「響きがいいから」という理由だったというが、見方を変えれば「つながり」を大切にしているからなのかもしれない。
Coldplayの環境への取り組みを見ていても、その「つながり」というものを大切にしているように感じられる。
20年以上音楽界のトップにいるColdplayの「新しいステージ」。それはコンサート会場だけの話ではない。音楽と環境がうまくいく未来を、彼らが作ろうとしている。