異業種7社がチームを結成。新しいバリューチェーンを構築
「Bio Material Transformation」(BMT)とは植物から全成分を抽出し、すべてを再度活用することを意味する。これはS-Bridges社の登録商標で、単なるリサイクルやアップサイクルを超えた次世代の資源活用モデルで、タンパク質危機、食品廃棄、そしてカーボンニュートラルといった諸問題を解決する手段として期待されている。
S-Bridgesが開発した抽出技術は、酵素と湿式粉砕を組み合わせることで植物細胞の壁を軟化させ、成分の抽出効率を飛躍的に向上させている。この手法により、従来では取り出せなかった細胞質内のタンパク質や栄養素の抽出が可能となったのだ。
一般的に飲料用に使用される茶葉は、その成分の約20%しか活用されていない。しかしこの技術により理論上100%の成分活用が実現できるという。また、この技術は茶葉以外の多様な植物にも適用可能だ。
この技術を用いて茶葉を対象にしたオープンイノベーションを実施した結果、その有効性に注目した6社が集結し、業界の垣根を越えたチームが結成された。
本取り組みに参画するのは、株式会社アイシン、アサヒ飲料株式会社、デンカ株式会社、カゴメ株式会社、オルガノフードテック株式会社、帝人フロンティア株式会社、そしてS-Bridges株式会社の計7社。完全なサーキュラーエコノミーを実現するためには、素材の調達から製品化、物流、販売に至るまで一貫性のあるバリューチェーンの構築が不可欠だが、その実現には異なる分野の企業の連携が鍵を握る。
このチームは、飲料・食品、化学、繊維、輸送機器といった多様な分野の企業から構成されている。それぞれが持つ技術やノウハウを融合。サーキュラーエコノミーの実現に向けて動き出した。

現在、最初のプロジェクトとして静岡県を拠点に茶葉を素材とした新製品の共同開発が始まっている。抽出されたタンパク質や繊維は、食品、繊維製品、化粧品、さらには工業用途に至るまで多岐にわたる可能性を持つ。さらに今後は、静岡県内の企業で構成される「BMT静岡」チームも立ち上がり、地域経済との連携を強化しながら、対象植物や地域の拡大を図る予定だ。
BMT事業は、資源の有効活用を通じてタンパク質の自給率向上やエネルギー使用の削減、廃棄物の最小化など、さまざまな面で持続可能な社会の実現に貢献することが期待されている。静岡発のこの革新的な取り組みが、やがて世界各地に広がり、地球規模の課題解決へとつながることを目指している。
この取り組みは、静岡から特産物である茶葉を活用するというローカルな取り組みが発端だ。それがオープンイノベーションにより各々の知見や技術が投入され、大きなプロジェクトとして成立している。日本には他にも、アイディアのままになっているプロジェクトや成長段階のプロジェクトが多くあるだろう。それらをいかに発掘し、前進させていく。それが日本の未来を創り上げるのに必要なのではないだろうか。