藻類を混合することで、意匠性と環境性を両立
「DURABIO™」は、植物由来の「イソソルバイド」を主原料とするバイオエンジニアリングプラスチックの一種。バイオエンジニアリングプラスチックは、従来の石油由来プラスチックと異なり、植物を原料にして合成された高機能樹脂のことで、環境負荷の低減が期待されている次世代素材だ。
本素材は、一般的なポリカーボネート樹脂と比較して、優れた透明性と光学特性を備えている。さらに、耐久性や紫外線や湿度など耐候性にも優れており、実用面でも非常に高い性能を誇る。
加えて3Dプリンタとの親和性が高いことも特徴で、素材の押出や積層といった造形工程においても高い安定性をもつため、造形材料としての採用例も増加している。今回、インテリアへの採用事例もあることから、「DURABIO™」を素材とした「藻類スツール」が3Dプリンタで製作された。
このスツールは、日本政府館に協賛する共創プロジェクト「双鶴(そうかく)」の一環で開発されたもの。日本の伝統工芸を想起させる、落ち着いた日本的な色合いと繊細なディテールが印象的なプロダクトに仕上げられている。
本プロジェクトは、慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート(KGRI)に所属する田中浩也氏が基本設計を担当し、同大学の湯浅亮平氏が詳細設計を行なった。また、材料設計および色彩調整は、同研究所員であり株式会社放電精密加工研究所に所属する高橋昭人氏が担っており、産学連携による高度なデザインと素材活用が実現された。
スツールは万博開催期間中、日本政府館内に約50脚設置される。三菱ケミカルは今後も「DURABIO™」のさらなる展開を通じて、高付加価値かつサステナブルな製品の提供を目指し、持続可能な社会の実現に貢献していくとしている。
サステナブルな考えや環境問題へのアプローチが欠かせない大阪万国博覧会。各国・各社のパビリオンだけでなく、あらゆる箇所に高い技術と想いが込められている。万博にいった際は、こういった見落としがちなポイントにも注目しながら楽しんでもらいたい。