INTERVIEW

今、プラスチックを取り巻く現状を知っておきたい。#3 「時代の波はバイオマスプラスチックに」

今、プラスチックを取り巻く現状を知っておきたい。#3 「時代の波はバイオマスプラスチックに」

今、プラスチックを取り巻く現状を知っておきたい。#3 「時代の波はバイオマスプラスチックに」

今注目の環境に配慮したバイオプラスチックの中でも「バイオマスプラスチック」には特筆すべきことが多々あるようです。リサイクルやインフラ問題などを含めて、プラスチック界の優等生とも言えそうなバイオマスプラスチックについて、さらに詳しく伊藤忠商事の小林拓矢さんに今回もお話を伺いました。

新しいことを始めるとき、たとえばスノーボードを始めるとき「形から入る」という人がいます。ボードからウェア、小物まで揃えると結構なお金もかかります。もちろん、新しいものを揃えて「これからやるぞ!」という気分を盛り上げることは大事です。けれど、大きな負担をかけずに知り合いから借りて始めることができたら、始めやすいこともあるはずです。バイオプラスチックもまだまだスタートしたばかりです。そんな話を伺っていこうと思います。
EQUALLY BEAUTIFUL(以下「EB」)前回はプラスチックの全体とバイオプラスチックに関してのお話を伺いました。バイオプラスチックの中でもかなり優秀な存在がバイオマスプラスチックだと思いました。
バイオマスプラスチックが普及していくには、どうしたら良いのでしょうか?
小林拓矢さん(以下「小林」)カッコいいとかオシャレとかそんなキラキラした華やか世界ではなく、身近なところに落とし込みができたら良いと思っています。遠い世界が自分の身近なものに感じて欲しいのです。
EB このインタビューの1回目でもお話しされていた食品パッケージやシャンプーのボトルなどが良い例なのですね。日々のゴミを見ていても、プラスチックゴミの多さは誰もが実感しているはずです。プラスチックゴミが多いことを受け入れたとき、どうするかが大事なことなのだと思います。こうしたことを踏まえながら、小林さんの言葉でバイオマスプラスチックの良いところをお教えいただきたいと思います。
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小林 まず、バイオマスプラスチックの良いところを挙げると大きく、5つのポイントがあります。1番目はCO2削減が期待できます。つまり温暖化対策の一環になるのです。石油化学原料と違い、バイオマスプラスチックの原料は植物由来のトール油であれば樹木が育つ間にCO2を吸収してくれます。また廃食油も植物由来なのでCO2削減に繋がると考えられます。2番目は一部のものですが「非可食性」であることが挙げられます。同じ植物由来でも食べられるものを原料に使えば、その食品が減るというデメリットがあります。つまり食品競合がないというわけです。3番目は物性です。少し専門的になりますが、バイオマスプラスチックは石油化学原料由来のプラスチックと見た目も品質もまったく変わらないのです。プラスチックとしての価値を損なうことなく、環境に配慮できるということです。4番目は既存のリサイクルループを崩さない、ということです。これも専門的になりますが、例えば、一部の生分解性プラスチックは既存のリサイクル工場に混ざるとリサイクル樹脂の品質に悪影響を与えるため、欧州などでは禁止されているエリアもあります。バイオマスプラスチックは既存の石油化学原料のプラスチックと品質も同じでその由来が違うだけのものですので、一緒にリサイクルできるのです。5番目は追跡性が挙げられます。英語で「traceability」と言います。難しくなってしまうかもしれませんが、説明させていただきます。原料投入量と同原料を用いた製品の出荷量は厳密に管理されなければならないのです。そのため原料から包装材加工まですべてのサプライチェーンで第三者認証機関から監査を受ける。ユーザーも「認証されたバイオマス製品」を安心して手にすることができるのです。
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EB 2番目の非可食性という意味では、昨今、サトウキビ由来のバイオプラスチックがありましたが、これはまだ可食のもので、食品競合がありますね。廃食油やトール油など新しいものがそうした課題を解決するものとして出てきていると理解しました。5番目に関してはこの追跡性によって、原料から成形され、商品になり、ブランドオーナーさんが買い、小売店に並ぶまでを監査することができるというわけです。この商品は第三者認証機関から監査を受けた「バイオマスプラスチックです」という信頼性の高いものが私たちの元に届くということですね。
小林 そうですね。そのためにもうひとつ必要なことがあります。それがマスバランス方式という考え方です。これによってバイオマスプラスチックの社会実装ができるようになると考えています。
EB そういえば、これ以外にもバイオマスプラスチックは既存のプラスチックと同じ工場で作れると聞いています。
小林 原料だけではなく、インフラにおいても環境に配慮のある重要な利点だと思っています。バイオマスプラスチックは新しい工場を作る必要もなく、今までの石油化学原料の既存の工場で作ることが可能なのです。結果的に環境負荷も少なくなります。つまり、新しい工場を建設するという初期投資も少なくなります。これは商品の価格にも影響しますし、環境にとってもとても頼もしいシステムだと考えています。意外に思われるかもしれませんが、新素材のために新しく小さな工場を作ることは結局環境にとってはためにならないということもあります。建設のためにさまざまな資材も必要ですし、運搬、建設にかかるエネルギーのことも考えていただければ良いと思います。また、小規模な専用プラントを作ってもエネルギー効率は結局既存のものに比べて劣後してしまいます。
EB 石油化学原料のプラスチックと同じ工場でバイオマスプラスチックを作れるのには驚きました。特別なラインや技術、資材もいらないのでしょうか?
小林 原料が違うだけで、ほとんど同じラインで作れます。
EB ちょっと意外です。原料が違うので、どんなところに苦労とか、現場で困ることはあるのでしょうか? という質問をしようと思っていましたが、それはないということでしょうか?
小林 その通りです。
EB 目から鱗ですね。次回はこのバイオマスプラスチックを日本に普及するために必要と言われる、「マスバランス方式」について伺いたいと思います。
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writer
Equally beautiful編集部
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