INTERVIEW

ガンダムファンの熱量をサステナブルな行動へ! BANDAI SPIRITSが取り組むサステナブル活動の最前線

ガンダムファンの熱量をサステナブルな行動へ! BANDAI SPIRITSが取り組むサステナブル活動の最前線

ガンダムファンの熱量をサステナブルな行動へ! BANDAI SPIRITSが取り組むサステナブル活動の最前線

「機動戦士ガンダム」のプラモデルを通じて地球環境問題へのアクションを起こそうと、BANDAI SPIRITSは「ガンプラリサイクルプロジェクト」を2021年4月1日に開始しました。その素晴らしい活動内容については公式サイトをご覧いただくとして、Equally Beautifulでは、ファン心理をきっかけにしてサステナブルな行動を動機付けるという、とてもスマートな取り組みに着目しました。この記事では、サステナブル事業を推進する同社・松橋幸男さんにお話をうかがい、どういう思想を持って資源循環を実現しようとしているのかをお伝えします。

TOP画像:株式会社BANDAI SPIRITSホビーディビジョン グローバルビジネス部兼クリエイション部 デピュティゼネラルマネージャー松橋幸男さん。新社屋のエントランスロビーにて。
ファンと一緒に、リサイクルを楽しみ、想いを寄せる
「あれは2018、19年ぐらいだったと思います。将来的に石油が枯渇するのではないか、いずれプラスチックを作れなくなるのではないか……。そうした危惧に対して私たちのトライアルがはじまったのです。バイオマス由来プラスチック、生分解性プラスチックなど、さまざまな選択肢を検証しましたが、コストが壁として立ちはだかりました。企業のエゴになってもいけない。そんな中で行き着いたのが、プラスチックをリサイクルすることでした」
こう話すのは、株式会社BANDAI SPIRITSの松橋幸男さん。
同社は、プラモデルのパーツを切り取った後に不要となる外枠(ランナー)をナムコのアミューズメント施設などで回収。回収したランナーは粉砕され、環境負荷をかけずに、新たなプラモデル製品へと生まれ変わります。その製品名は「エコプラ」。
ガンダムファンの熱量をサステナブルな行動へ! BANDAI SPIRITSが取り組むサステナブル活動の最前線

プラモデルのパーツを支える外枠(ランナー)。切り取った後に不要となるこのランナーを回収してリサイクルしています。

ガンダムファンの熱量をサステナブルな行動へ! BANDAI SPIRITSが取り組むサステナブル活動の最前線

回収したランナーは破砕してフレーク状へ。さまざまな色のパーツが混ざった状態で再び成形工程へと送られます。

ガンダムファンの熱量をサステナブルな行動へ! BANDAI SPIRITSが取り組むサステナブル活動の最前線

こちらが「エコプラ」。色が混ざって出来た色を敢えてそのままにしています。

エコプラは、回収ボックスに投函された、さまざまな色彩のランナーを粉砕して混ぜ合わせるので、どうしても黒に近い灰色や茶色になり、色の混ざり具合でロットごとに仕上がり色もバラバラ。それを敢えてそのまま、着色などをせずにお客様にお届けしています。
※エコプラ詳細は公式HPへ
https://www.bandaispirits.co.jp/about/sustainability/
「私たちは”Connect with Fans”というビジョンを掲げています。ファンともっと深く結び付いていこうとするメッセージです。モノを作る→届ける→買ってもらって、組み立てを楽しんでもらう→組み立て終わった後、ランナーを持ってきてもらう→回収して、もう1回製品にしていく。この回収するところも楽しんでもらい、ファンと企業が一緒に輪を作っていく。これが私たちの目指している方向です」
エンターテイメント企業らしく、リサイクルを楽しませようとするところがユニークであり、実際に自分の行動が新たな製品の誕生に貢献するとあらば、それは喜びに他なりません。さらに松橋さんは、現在の回収方法のその先に、次なるフェーズを見据えています。
「もしも、ファンの皆さんがランナーを色分けして持ってきてくださるなら……。すると色が混ざらず、赤や青といった鮮やかな発色のリサイクル品ができるんです」
それは、一歩踏み込んだリサイクルスキーム。企業とユーザーとの間に信頼関係がなければ成立しませんが、ファンにとっても協力する意義が大いにあります。何より、リサイクル品でもカラフルな仕上がりが実現するのですから。松橋さんは、これ以外にもさまざまな可能性を模索していきたいとしています。
ガンダムファンの熱量をサステナブルな行動へ! BANDAI SPIRITSが取り組むサステナブル活動の最前線
プラスチックリサイクルとは、人と人を繋ぐこと
「ガンプラリサイクルプロジェクト」は、2021年の初年度回収量が11トン。2022年度が21トン。2023年度は30トン(予想)と、順調に広がってきています。現状はマテリアルリサイクル(※1)がほぼ100%の運用スタイルですが、すでにケミカルリサイクル(※2)も試作段階に入っているそうです。
※1 組成を変えずにもう一度、製品に生まれ変わらせること。回収してきたランナー(プラスチック)を、そのまま粉砕して、もう1回成形することは、世の中に製品を戻すのに圧倒的に最短距離です。環境負荷を抑えられて、コストも低く抑えられます。
https://equallybeautiful.com/glossary/243
※2 化学反応させて物質を一段階前の物質に分解してから、再び原料に戻すリサイクル手法。一度原料に戻してから再度プラスチックを合成しているので、バージン素材と同等の品質が実現できます。
https://equallybeautiful.com/glossary/242
「一方で、私たちがやろうとしているのは、人と人を繋ぐこと。作り終えたプラモデルのランナーをわざわざ回収ボックスに持っていくって、熱量が要るものだと思っているんです。その熱量を、しっかりと価値にしなくてはいけない。アウトプットされた『エコプラ』の意味合いを、さらに繋げていくところが非常に重要だと思っています」
その取り組みとして、「エコプラ」体験キットを活用した小学校向けプログラム「ガンプラアカデミア」がはじまっています。授業のなかで、「エコプラ」に触れながら、体験を通して想いに触れる。プラスチックリサイクルの現状を知り、モチベーションに繋げてもらう主旨です。
「ガンプラアカデミア」は2023年には大阪府と連携して、府内の全小学校で実施。ほかにも全国各地で実施され、昨年は30万人弱の児童のもとに貴重な体験が届けられました。この数字は、推奨対象の小学5年生のおよそ3人にひとりが体験したことになります。彼ら、彼女たちの感動は、やがて行動に繋がり、この国の未来に寄与するはずです。
ガンダムファンの熱量をサステナブルな行動へ! BANDAI SPIRITSが取り組むサステナブル活動の最前線
さらに松橋さんは、プラスチックの可能性をこのように語りました。
「プラスチックは熱で溶けて、容易に別の形に生まれ変わることができるので、循環に向いた素材だと思っています。その一方で、プラスチックが使われた“旅の歴史”を感じてもらえると、別の経済循環が成立するとも思うんです」
松橋さんの思い描くビジョンはこうです。たとえば、このプラスチックは、かつて高名な人が使ったものであるという履歴が残ることで、その素材が歩んできた歴史が価値となるケース。それはマテリアルリサイクルによって新たな形状に生まれ変わったとしても、まるでヴィンテージ品のような価値が備わります。
「昔のものだからこそ、貴重で珍しい……という新しいプラスチックの捉え方が生まれるかもしれません」
なるほど、プラスチックがリサイクルされる際の機能再生に私たちは目が向きがちでしたが、情緒的な価値を愛でる視点からの議論も面白そうです。それは、ファンに体験価値を提供してきたエンターテイメント企業だからこそ到達した発想であり、この視点はいろいろと応用が効きそうです。
「私たちも異業種とのコラボレーションに可能性があると考えています。日常で使う消費財企業とのコラボレーションに発展していけたらいいなと思い、すでに各種業界の企業とも握手をしています」
プラスチックリサイクルとは、関わる人たちの想いの集まり。想いをひとつにするべく、人と人とが最適な形で繋がることが、事業成功の鍵を秘めています。ガンダムというキャラクターで繋がったファンの皆さんによるリサイクル行動を幸せな成功事例として、このスキームがさまざまな形で広がっていくことを願っています。
ガンダムファンの熱量をサステナブルな行動へ! BANDAI SPIRITSが取り組むサステナブル活動の最前線

BANDAI SPIRITSのサステナブル事業の現在をまとめた展示エリア。訪問客の目を引く、魅力的な内容です。

©創通・サンライズ
writer
Equally beautiful編集部
  • facebook
  • twitter
  • line