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薬を守る包装で、地球も守る。医薬品包装の新しいスタンダード

薬を守る包装で、地球も守る。医薬品包装の新しいスタンダード

薬を守る包装で、地球も守る。医薬品包装の新しいスタンダード

私たちは普段、様々なものを何気なく使っています。しかし、それらのものがどんな機能を持っているのか、なければどうなるのか。深く考える機会はあまりありません。 薬を包装するシートも、その一つ。

透明なプラスチックに包まれた錠剤を、アルミ箔を押し破って取り出す。薬を使い切れば、シートを廃棄する。それは、多くの人にとってあまりにも当たり前の光景です。けれど、このシートがなければ薬品を安全に保管・輸送することは出来ません。

そして今、薬のシートは私たちの健康を守るだけでなく、地球環境にも配慮されたものになりつつあります。

その舞台裏を支えるのが、薬品包装機で国内トップシェアを誇るCKD株式会社です。
日本の“モノづくり”で支える、医療包装
CKDの成り立ちは、約80年前までに遡ります。1947年にオーディオのアンプやラジオに使用される真空管製造機を開発。その技術を応用し、医療用のアンプル(注射液などを入れるガラス製の容器のこと)生産に乗り出したのが、1951年。錠剤用ストリップパッキングマシン(SP 包装機)を開発したのが1955年のことです。そこから70年、医薬品の包装分野はCKDの主要事業の一つとなりました。
「私が所属している自動機械事業本部では、医薬品包装機、食品包装機、三次元はんだ印刷検査機、リチウムイオン電池用巻回機、錠剤用検査装置などを扱っています。一方、機器事業本部では流体制御機器、空気圧機器、電動機器をグローバルに展開しています。これだけ多岐に渡って事業を展開できているのは、大型の自動機械装置と、その中に組み込まれる機器(部品)の両方を手掛けているからなんですよ」
そう語るのは、自動機械事業本部 技術統括部 包装技術部 第1G グループリーダーの河田さん。
薬を守る包装で、地球も守る。医薬品包装の新しいスタンダード
「実は、世界的に見てもその両方を手掛けている会社は少ないんです。私たちの強みはそこにあると思っていて、その開発力で、社会の様々な課題解決を目指しています。医薬品の包装技術に限定して話をすると、患者の安全性や利便性を高めることで発展してきました」
すべてを自社で賄っているからこそ、時代の流れに呑まれず、むしろ応えることが出来る。それは日本の多くの企業が手放してしまった、モノづくりの強さなのかもしれません。
では、そのモノづくりの力で医薬品の包装は今、どんな進化を遂げようとしているのでしょうか。
70年続いた当たり前を変えた、PTP包装
「ずばり、“環境への配慮”を意識した進化です」
と、河田さん。
CKDは、PTP包装機を中心とした医薬品包装機分野において、国内トップシェア企業です。PTP包装とは、アルミとプラスチックを密着させて作られる包装で、指で押し出して使うタイプのもの。日本の固形剤包装の主流を占める包装方式です。
「PTP包装は品質だけでなく生産性や機能性にも非常に優れており、70年以上にわたり形を変えていない、固形製剤包装の完成形だと考えています。しかし一方で、包装としてどれだけ優れた形態であっても、薬を飲み終えた後に手元に残るのは、“中身ではない部分”、いわば廃棄物になってしまうという現実があります。完成された包装であるからこそ、次に問われるようになったのが、"環境への配慮"なのです。」
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PTP包装。

そこでCKDが考案したのが、PTP包装に新たな価値を加えることです。
「日本国内のPTP包装製造過程で使用される樹脂フィルムは年間約14,500トン。発生する端材などの廃棄物は年間1,300トン以上あります。樹脂フィルムに関しては使用量の削減は難しいので、製薬メーカーと共創してバイオマスフィルムに切り替えました。従来のフィルムの二酸化炭素排出量と比較すると、最大で約60%もの削減を実現しています」
エコブリスタで実現したのは、バイオマスフィルムの採用だけには留まりません。製造過程の廃棄物を削減する“エコスクラップ技術”を生み出したのです。
環境にもコストにも優しく
「従来のPTP包装は、シートを作る工程の中で製品にはならない部分を廃棄していました。それが、先ほど申し上げた廃棄端材にあたるものですね。エコスクラップ技術では、その廃棄端材を極力なくすことに成功したんです」
エコスクラップ技術で削減できるプラスチックごみは、実に70%以上。さらに、エコスクラップ技術には経済的なメリットも含まれているのだと河田さんは言います。
薬を守る包装で、地球も守る。医薬品包装の新しいスタンダード
「ゴミの廃棄にも、コストは発生します。エコスクラップ技術ではそのゴミの量が今までの3分の1になるわけですから、その分のコストが浮きます。また、シートの廃棄端材をなくしたことで、そもそものプラスチック使用量も7%削減しました。プラスチックを購入するコストも減らせる訳ですね」
環境にもコストにも効くエコスクラップ技術に加え、エコブリスタには実装を控えたもう一つの技術革新があります。それが、モノマテリアル対応です。
「PTP包装は大きく分けて、アルミとプラスチックという二つの素材から作られています。単一素材にすることができれば、リサイクル性が飛躍的に高まるわけですね。開発途中ではありますが、バイオマスフィルム採用・エコスクラップ技術に続く3本目の柱として期待を寄せています。」
手を緩めることなく、進化を続けるCKDの医療包装技術。その原動力はどこから来ているのか、最後に河田さんにお話いただきました。
お客様の声に耳を傾け、未来を描く
「お客様の声に耳を傾けながらも、業界でパイオニアの立ち位置を築く。これが長年、弊社が続けてきたことです。お客様のご要望に応えていい設備を作ったとしても、業界全体に広まっていかなければ、限定的なものに終わってしまいますよね。トップシェアであるからこそ、従来の技術の延長線上であっても、まったく新しい価値を提示していくにしても、私たちがリードしていかなければいけません」
業界を牽引する立場だからこそ、環境対応という新しい価値を示す。それが、CKDの使命なのです。
そして、河田さん個人にとって70年変わらないPTP包装に新たな価値を創ることは特別な意味を持っていました。
薬を守る包装で、地球も守る。医薬品包装の新しいスタンダード
「私はもともと、未来を創る開発に携わるために、この会社にやってきました。環境というテーマを通して、これまでの常識に囚われない新たなPTP包装は、まさに未来を変えていくものです。だから全力で、この業界の当たり前を塗り替えていくんだという意気込みで働いています。ただし忘れてはいけないのが、環境問題への対応に関しては、競争の時代ではないということです。今は、会社も業界も超えて、よりよい未来を目指す“共創”の時代。そのことを忘れずに、新たな時代を切り拓いていきたいと思います」
私たちが普段目にするのは、小さな薬のシート。しかしその裏には、トップシェア企業の想いと担当者の情熱があり、未来への歩みを静かに刻み続けていました。
writer
Equally beautiful編集部
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