環境にいいこと。だけでは、企業は活動できない
テラサイクルのミッションは、「捨てるという概念を捨てよう」というもの。企業活動を尊重しながらも、各企業の製品を廃棄しない。原料化して再利用する。そんな独自の視点で20年以上の活動を続けています。
日本法人が事業を開始したのは、2014年。そこから10年、歩みを止めることなく現在では約50のリサイクルプログラムを運営するまでに成長してきました。
「極端な話、コストを度外視すればリサイクルできるものはたくさんあります。ですが、リサイクルがマイナスに繋がってしまうのであれば、合理的ではありませんよね。私たちテラサイクルが重視しているのは、経済合理性を高めながらも、リサイクルの仕組みを企業様に提供することです」
そう話すのは、テラサイクルジャパン ジェネラルマネージャーを務める浪花(なにわ)さん。
浪花さん自身、これまでにオーガニックコットンやフェアトレードのパイオニア的なブランドや、脱プラスチックを目指す企業に勤務。環境を意識した企業活動の変化を目の当たりにしてきました。
テラサイクルジャパン ジェネラルマネージャー 浪花さん。廃材を使った会議室の棚には、グローバルを含めたこれまでの取り組みに関わるアイテムが並ぶ。
「たとえば、リサイクルに取り組んでいることでブランドイメージが向上することがありますよね。これも経済合理性です。今までに飲料ブランド様、日用品ブランド様、化粧品ブランド様などと幅広くお取り組みをさせていただいてきました。一方で、容器の回収やリサイクルには、どうしてもコストが発生します。そのコストを吸収するのは、低単価の商品ではなかなか難しい。ですから今は、リサイクルのコストを原価の中でまかなえ、かつブランディングにも繋がる化粧品ブランド様とのお取り組みが相対的に多くなっています」
リサイクルに取り組むうえで、決して避けられない経済合理性に対して、各メーカーはどのよう取り組んでいるのか。次章では、2025年の最新事例からひも解いていきます。
おくすりシートから時計へ。広がる可能性
最新事例の一つが、第一三共ヘルスケア社と2022年から進めてきた、「おくすりシート リサイクルプログラム」です。使い捨てが当たり前とされてきた“おくすりシート”がリサイクルできるとは、誰も考えつかなかったのではないでしょうか。しかも、リサイクルの対象は第一三共ヘルスケア社以外の製品も含まれています。
これまでに回収された約17トン(枚数にして約1,700万枚)が、このプログラムの反響の大きさを表しています。
「当初は横浜市限定の展開で30拠点ほどだったのですが、現在の拠点数は100にまで広がりました。さらに2025年の12月からは東京都で初の自治体となる東大和市でのリサイクルプログラムがスタートしたんです。現在、おすくりシートのリサイクルは、さまざまな手法を並行して実施・検討しているところですが、その中で、おくすりシートをまったく別のものに生まれ変わらせています」
回収されたおくすりシートは粉砕処理を経て様々な用途で活用されています。時計へのアップサイクルや、第一三共ヘルスケア社によるペン、トレイ、ベンチなどが製作されました。
2025年10月に早稲田大学の施設内に設置されたカウンターテーブルにもおくすりシートが活用されており、学生たちが自然とこの取り組みに触れられるような仕組みになっています。
おくすりシートをアップサイクルして作られた壁掛け時計。おくすりシートらしい風合いが残っている。
そうと謳わなければ、何気なく設置されているテーブルやベンチ、時計の原料がおくすりシートだとは気づけません。しかし、知ることによって社会は少しずつ変わっていきます。そこにあるのは、啓蒙という経済合理性なのかもしれません。
同様の取り組みは、他のプロジェクトでも行われています。2025年4月から同年10月まで開催された大阪・関西万博では、P&Gジャパン合同会社、イオングループ各社とともに、「これからのごみ箱(資源回収箱)」を製作・設置しました。
「これからのごみ箱(資源回収箱)に使用したのは、全国のイオングループ店舗様で回収したプラスチック容器です。パウチ包材も関係なく集めたのですが、綺麗にリサイクルすることはあえてしませんでした。この取り組みの目的は、廃棄される資源の回収に協力をいただきながら、資源の循環をイメージしていただくこと。ですから、一目でプラスチック容器の再資源化がわかるような作りになっています」
これからのごみ箱(資源回収箱)でも活用した使用済み空き容器から作った板材。様々な包材の名残が見て取れる。
様々な形で広がりを見せる、テラサイクルジャパンの活動。捨てるという概念を捨てるために、今後どのような活動を行っていくのか。最後に浪花さんにお話しいただきました。
中小企業も参加できるリサイクルプログラムを
「我々が提供するリサイクルプログラムの先にいらっしゃるのは、消費者の皆さんです。各ブランド様とのお取り組みが広がったのは、皆さんの協力があってこそなんですよね。ですから、まずは知っていただくことが重要だと考えています。そのためには大阪・関西万博での取り組みのように、幅広い方々とのタッチポイント作りが必要になってきます」
その最新事例が、アシックス社がサーキュラーエコノミーの実現に向けて開発した循環型ランニングシューズ『NIMBUS MIRAI™(ニンバス ミライ)』の取り組みである『ASICS MIRAI RETURN プログラム』です。
このプログラムが目指すのは、“シューズからシューズへ”と生まれ変わらせること。回収した使用済みのNIMBUS MIRAI™ をリサイクルした原料が、今年実施される世界最大級の国際スポーツ大会で着用されるシューズのベロ部(シュータン)裏材の約5%に採用されました。
しかし一方で、「大手企業様以外へのアプローチも必要なんです」と浪花さんは言います。
「大手企業の“作る責任”は大きく、世論の声に応えようとする企業様が多くいらっしゃいます。ですが、いずれ中小企業も“作る責任”を求められることになります。そのために今後は、もう少し小さいブランドや企業向けに、それこそスモールスケールでも取り組めるようなサービスを展開していければと思っています」
「地球にとっても、企業にとってもいいことが出来ている。そういう会社でありたいですね」
捨てるという概念を捨てるために。テラサイクルジャパンはこれからも挑戦を続けていきます。