FEATURE

高校生たちのSDGs。 世代を超えて広がり続けるSDGsの波。 10代の熱い想いが伊藤忠商事のプラスチック問題への取り組みに迫ります!<前編>

高校生たちのSDGs。 世代を超えて広がり続けるSDGsの波。 10代の熱い想いが伊藤忠商事のプラスチック問題への取り組みに迫ります!<前編>

高校生たちのSDGs。 世代を超えて広がり続けるSDGsの波。 10代の熱い想いが伊藤忠商事のプラスチック問題への取り組みに迫ります!<前編>

 (735)
プラスチックが環境を破壊している。昨今の論調では、プラスチックは分かりやすい悪者として槍玉にあげられがちです。ですが、そうした見方が全てなのでしょうか?どうやら話はそんなに簡単ではないようです。聖心女子学院の中等科、高等科合わせて約50人で活動する「プラスチック フリー キャンパス」の生徒たちからの熱いメッセージで実現した伊藤忠商事・小林拓矢さんとのリモート座談会では、今こそ考えたい環境問題とプラスチックの未来について熱く語られました。
 (736)

画面の中に24の瞳ならぬ、100の瞳が集まって、真剣な眼差しを向けていました。さまざまな話題に興味津々。

プラスチックと環境に対して関心を持つ人は年々増加しています。特にここ数年は「脱プラ」という言葉を含め、プラスチックストローやプラスチックスプーン、フォーク廃止の動き、あるいはレジ袋の有料化など生活に関わるところまでプラスチックを減らすことで環境に配慮したい、という機運が高まっていることも確かなことです。
そんな折、伊藤忠商事で化学品環境ビジネスを統括する小林拓矢さんにある高校生から連絡が届きました。それは聖心女子学院の中等科・高等科にわたって活動する「プラスチック フリー キャンパス(通称「PFC」)からのディスカッションの依頼でした。
「生徒が、朝日新聞に載っていた小林さんの対馬での海洋プラスチックリサイクルへのお取り組みの記事※を拝見し、お話を伺ってみたいと切望しまして、今回のリモート座談会をお願いしました」とは「PFC」の顧問、平山美樹先生の談。
「PFC」ではいかにプラスチックを減らすかというディスカッションや、資料集め、ポスター制作、関連商品の制作販売などを中心に活動されているそうです。聖心女子学院PFCの皆さんは各々リモートで接続されていましたが、小林さんは伊藤忠商事本社の隣に設置された「ITOCHU SDGs STUDIO」から参加しました。
※「ITOCHU SDGs STUDIO」は、伊藤忠商事が人と世界をつなぐSDGsの取り組みの発信拠点として今年4月15日にオープン。

伊藤忠商事 SDGsオフィシャルムービー

「きちんと答えられるかどうかわかりませんが、一緒に考えていきましょう」。お互いの自己紹介のあと、そう語る小林さん。
生徒からは身近な問題として、学校の校庭の「人工芝」がマイクロプラスチックを作り出し、雨や風で海に流れ込んでいくことを懸念しているという話題が上ります。
「人工芝から生まれるマイクロプラスチックが海に流されてしまうかもしれない。その結果、海洋汚染を招いてしまうかもしれない。こうした可能性が、一次的な問題として考えられます。一方で、たとえば、人工芝ではなく土の地面に替えたとしましょう。その際に使用する建築資材が環境に対してどのような配慮がなされているのか、あるいは重機が生み出す二酸化炭素量がどうなのか。また、人工芝から土に切り替わったことで、子供たちが怪我をしやすくなるなどはないのか、環境配慮以外の要素も入ってきます。このように、違う観点から見てマイナスにならないか、と考えること、これを『トレードオフやオフセット』と我々は言っています。今起きている問題を考えることはとても良いことですが、様々な視点から考えつつ、すぐに100点満点を求めないで、少しでもいい方向に変えていくこと。つまり50点ならそれを51点、52点にしていくのが大事なことではないでしょうか」と小林さんは答えました。
続いての話題は、この対談のきっかけになった対馬の海洋プラスチックの記事にまつわる話。
プラスチックが悪いのか? プラスチックを捨てる人が悪いのか?
 (737)
「対馬は日本で一番漂着物が多い場所です。そこで、アメリカのテラサイクル社とどうにかしたいとリサイクルに乗り出しました。海岸で集めたプラスチックゴミから、対馬の人たちが海洋ゴミを集めるときに必要なゴミ袋を作り、さらに身近に使われるファミリーマートの買い物かごなどを作りました。その売り上げを、海洋ゴミを減らす活動に使います。ちなみに海洋ゴミの中で一番多いのが流木です。他には海に浮かべるブイや、漁業で使われるさまざまな道具がゴミとして漂着します。ですが、ブイも漁業用品も素材が何か特定できないので、今のところリサイクルできていません。ポリタンク、ペットボトルは素材を選別して、リサイクルします。理想はすべてのゴミがリサイクルできることですが、素材が特定できないと難しいのです。こうしたプラスチック系のゴミは対馬で細かく粉砕して、リサイクル工場に運搬、プラスチックの元になるペレットと呼ばれる素材にし、目的にあった工場で成型され、商品に再生されます」
 (738)
ここで生徒から一つの疑問があがります。
「なぜ、またプラスチックにするのですか? ふたたび海に流れてしまったら、環境に良くないと思います」
 (739)

ポテトチップスが気軽に買える、その裏ではプラスチックの力がありました。

「プラスチックの良いところ、悪いところそれぞれを見て包括的に考えてみましょう。たとえば、フードロスの問題一つとってもプラスチックの働きは重要です。ポテトチップスを運ぶのにプラスチックの袋がなかったらすぐに湿気ってしまいます。出来るだけ長く食品を傷めないような環境を作ることが、フードロスをなくすことに繋がります。また軽いプラスチックを使用すると輸送時のエネルギー消費、温室効果ガス排出量が他の素材に比べて少なくなることが多いです。悪いところはおっしゃる通り、海に流されることです。ですが、それはプラスチックが悪いのでしょうか? 捨てる人が悪いのではないでしょうか? 日本ではゴミの85%以上が回収されて、きちんと処理されています。この割合を上げることが重要です。また、環境問題を考える上で何が悪くて、何が良いのか、という判断も場所や社会のシステムによって違うので、一括りにできないのです。単純な話ですが、リサイクルの際にゴミ袋を作ったとします。ゴミ袋を単体で捨てる人はいないですよね? 対馬のゴミを集めていらっしゃる方々はゴミ袋をご自分たちで購入していて、それが負担になっています。そこで、再生したゴミ袋を対馬の方々にお配りして、ゴミ収集に使っていただく。そんなゴミ袋への再生は悪いものではないと思います。こう考えてもらうとプラスチックが常に悪者という見方ではなく、色々な見方をしていった方がいいと思うのですが、どうでしょう?」
小林さんは丁寧に、慎重に言葉を選びながら、生徒たちにプラスチックの必要性を話していました。必要性という意味ではこんな声もありました。
「プラスチックは便利で、安くて、長時間使えるという利点から色々な製品になっていると思います。プラスチックを使わないで環境に優しい製品を作るとなると技術の開発にも時間がかかるし、コストも高くなってしまうと思います。こうした製品を作ることで企業は利益が上がるのでしょうか? 政府からの補助や環境問題に熱心な方からの投資で賄われているのでしょうか?」
この問いに対して小林さんは「利益を出さないといけないと思っています。我々伊藤忠商事は、自らを商人と呼んでいますが、利益を出すことは商人としての使命です。ではなぜ利益を出さないといけないかと言うと、利益を出さないと結局みんなやらなくなってしまうからです。サスティナブルと言いながら持続できない、ちょっと格好良いことをやってすぐに終わってしまいます。そこに関わる人たちがそれぞれしっかりと利益を作り出せるようにいろんな仕組みを作り出すことが使命だと思っています。儲かる仕組みを作ることができれば、みんなが儲かるし、我々も儲かるし、それが環境にも良い。伊藤忠商事ではこれを売り手よし、買い手よし、世間よしの『三方よし』と言っています」
利益が出ないと続かない。この新たな視点は、生徒たちに新しい発想として受け入れられたようです。
「プラスチックが必要なことはわかっていますが、日本は過剰包装も気になるところです。もちろん、衛生面のことを考えると必要不可欠であるのも理解はしているのですが」という生徒の声に小林さんは、
「パッケージが何故必要なのかを、改めて考えてみましょう。商品を守るためのバリア性を確保し、さらに衛生面も保たれます。そして、広告デザインとしての機能もあるのです。ですが、通販になるとこの広告デザインの機能は必要なくなるかもしれません。実際にラベルレスの商品も販売されています。ぜひ一緒に色々と考えていけるとよいと思います」
コンピュータの画面には、小林さんのひとつひとつの言葉をメモに取り、真剣な眼差しを向ける生徒たちの姿がありました。

※リンク先の記事全文を読むには、有料会員登録が必要になります。
writer
Equally beautiful編集部
  • facebook
  • twitter
  • line