三菱、日立など大手がシステムを構築
弊誌でも取り上げてきたように、再生プラスチックの採用は広がってきている。しかし依然として、プラスチックの廃棄量に比べて、再生されるプラスチックの割合は少ない。2021年の廃プラスチック総排出量は約824万トンで、そのうちリサイクルによって再生されたのは25パーセントにとどまっている。
再生材は品質がばらつきやすく、量も安定しない。回収したプラスチックを裁断する際に不純物が混ざりこむといった問題もある。つまり、取り扱いに専門知識や手間が必要になってくるのだ。再生プラスチック市場は広がりつつあるものの、その利用には高いハードルがある。
そうした問題を解決すべく、再生材の買い手と売り手の間を取り持つ、マッチングアプリの開発を進めているのが、三菱総合研究所(MRI)や、日立ハイテク・日立製作所(日立)だ。
これらのマッチングアプリで共通しているのは、相互の「需要」を満たすことができるところだ。再生プラスチックの供給者が、再生材の物性や由来などの情報をアプリに提供する。一方で利用事業者は、必要とするレベルの物性や由来の情報を提供する。するとアプリは、アプリ内のデータベースからニーズの近い事業者同士をピックアップしてくれるのだ。
供給者・事業者の情報をマッチングアプリに提供すると、各々の条件に適合したリストが出来上がる(三菱総合研究所作成)
アプリには、それぞれのメーカーならではの強みが生かされているのも面白い。
MRIでは2021年より簡易実証を進めており、2023年度の実証では再生プラスチック供給事業者6社および再生プラスチック利用事業者6社による本アプリの試験利用を経て、アプリの改善を進めている。その結果、マッチングが成立し、取引に向けた事業者間の初期面談を実施するなど、実現可能性が高まっているという。マッチングするとアプリ内のチャットで、取引に向けたやり取りができるなど、アプリ内で完結できるのも手軽さが魅力だ。
日立では、日立ハイテクが長年培ってきたプラスチック材料に関する知見やコア技術である計測・分析技術と、日立のマテリアルズ・インフォマティクス(MI)や、生成AIなどの自社技術でアプリ開発を進めている。また積水化学の協力のもと、日立の製造工程で発生した廃材を本実証において提供し、ユーザー視点でアップデートを行っている。
今後もMRI、日立ともに実証実験を続け、本格的なサービスとして提供していく考えだという。このマッチングアプリが利用されるようになれば、再生プラスチックのトレーサビリティも担保され、普及が進むだろう。多くの供給・利用事業者にとって、これらのマッチングアプリは、良きパートナーになりそうだ。