カップを開けると現れる、スライスレモンとキメの細かい氷。口に含めば広がる、ほどよい甘さと果実の香り。フタバ食品株式会社の『サクレ』は1985年の発売以来、39年もの間、多くの人々に愛され続けてきました。
そんなサクレがアップデートを重ねていることをご存じでしょうか? 甘さや酸味のバランス、氷の粒の大きさなどの改善、容器へのバイオマスインキ導入など、美味しく、環境にやさしく、日々進化し続けているのです。
容器メーカーである株式会社コバヤシが今年の夏からは容器をさらにアップデート。コバヤシが提供するオパレイ容器※に、マスバランス方式のバイオマス樹脂が導入されました。
環境にやさしい“新しいサクレ”にまつわるお話を、両社にお伺いしていきます。
※オパレイとは、プラスチック樹脂に非石油由来の無機鉱物を配合した素材。オパレイ容器は耐久性・成形性ともに優れていて、様々な企業の商品に採用されています。
そんなサクレがアップデートを重ねていることをご存じでしょうか? 甘さや酸味のバランス、氷の粒の大きさなどの改善、容器へのバイオマスインキ導入など、美味しく、環境にやさしく、日々進化し続けているのです。
容器メーカーである株式会社コバヤシが今年の夏からは容器をさらにアップデート。コバヤシが提供するオパレイ容器※に、マスバランス方式のバイオマス樹脂が導入されました。
環境にやさしい“新しいサクレ”にまつわるお話を、両社にお伺いしていきます。
※オパレイとは、プラスチック樹脂に非石油由来の無機鉱物を配合した素材。オパレイ容器は耐久性・成形性ともに優れていて、様々な企業の商品に採用されています。
1987年に生まれたオパレイ容器と、1985年に生まれたサクレ
「プラスチックの容器をただ作り続けていくだけでは、未来が立ち行かなくなるだろう。そういう危機感があるからこそ、我々はプラスチック容器をアップデートし続けているのです」
そう語るのは、株式会社コバヤシの鈴木啓一郎さん。
同社の事業の一つが、我々の食生活には欠かせないプラスチック容器の生産。食品を保護するために欠かせないもので、コバヤシは豆腐・納豆・冷菓など様々なプラスチック容器を手掛けています。
同社の事業の一つが、我々の食生活には欠かせないプラスチック容器の生産。食品を保護するために欠かせないもので、コバヤシは豆腐・納豆・冷菓など様々なプラスチック容器を手掛けています。
株式会社コバヤシ 容器事業部 販売部 販売2課 課長 鈴木啓一郎さん
「現在サクレに採用いただいているオパレイ容器は耐熱・耐寒に優れた製品で1987年から製造しています。オパレイ自体が環境配慮型の素材で、非石油由来の無機鉱物を30%配合しています」(鈴木さん)
オパレイ容器の他にも、とうもろころしの澱粉を配合したバイオマスプラスチックReseamSTを開発。プラスチック=悪いものという図式を作らないための工夫を日々続けています。
そんなコバヤシと30年間歩みを共にしているのが、フタバ食品株式会社です。サクレを始めとする冷菓の他に、冷凍餃子や肉まんなど様々な製品を展開。一日のご褒美から主食まで、私たちの食卓を彩ってくれています。
コバヤシがこれまでフタバ食品で担当してきたのはアイスクリームの容器。オパレイ容器がサクレに採用されたのは、2008年のことでした。サクレの容器の変遷から、オパレイ容器の採用に至るまで、フタバ食品の小野泰司さんにお話しいただきました。
コバヤシがこれまでフタバ食品で担当してきたのはアイスクリームの容器。オパレイ容器がサクレに採用されたのは、2008年のことでした。サクレの容器の変遷から、オパレイ容器の採用に至るまで、フタバ食品の小野泰司さんにお話しいただきました。
「オパレイ容器の存在は昔から知っていたのですが、サクレの方が2年ほど先輩だということもあり、長く別の素材を使っていました。開発当初、我々がサクレの容器に求めたのは“手に持っても冷たくない”こと、“サクレをより楽しんでいただけるように内容量を増やすこと”、“他社との差別化”でした。そこで参考にしたのが、当時、保温性に優れたカップみそ汁のプラ容器です。その結果、カップのアイスクリームに近い形状の容器が生まれました。手に持っても冷たくないですし、かき氷の容器特有のギザギザがない分、サクレをたっぷりお楽しみいただけるような作りをしていました」
フタバ食品株式会社 取締役 企画部 部長 小野泰司さん
私たちが何気なく口にしていたサクレには、食べやすさと食べ応えを両立させるための工夫が隠されていたのでした。
その他にも氷の削り方、シロップの工夫、空気をどの程度含ませるのか。サクレ独自の味わいを生み出すため、複合的な試行錯誤を繰り返してきたそうです。
手のひらに収まるサクレのカップに詰まった、職人気質のようなこだわり。だからこそ、長く愛され続ける商品になったのでしょう。
その他にも氷の削り方、シロップの工夫、空気をどの程度含ませるのか。サクレ独自の味わいを生み出すため、複合的な試行錯誤を繰り返してきたそうです。
手のひらに収まるサクレのカップに詰まった、職人気質のようなこだわり。だからこそ、長く愛され続ける商品になったのでしょう。
ところが、そんなサクレにも、ロングセラー商品ならではの“壁”がありました。
「サクレが誕生した1985年から色々なリニューアル施策を行ってきたのですが、2000年代に入るとだんだん限界が見えてきました。時代の変化に合わせて、サクレもアップデートしなければいけない状況になったのです。味やロゴ、パッケージに至るまで見直しをかけてフルリニューアルしたのが2008年でした。容器のリニューアルで重視したのは、環境負荷の低減でした。オパレイ容器は潰しやすいのでゴミの減容化に繋がりますし、燃焼時のCO2発生量も少なく抑えられ、我々がこだわってきた手触りも維持できるものだったので、採用に至りました」(小野さん)
2008年から「サクレ」表記を発売当初の「SACRÉ」に変更。ロゴ・パッケージデザインともにリニューアルが行われた。
オパレイ容器がサクレに採用されてから、16年。その間にも環境を意識したアップデートは続けられており、2020年には印刷インキをバイオマスインキへ切り替えました。そして2024年、サクレのオパレイ容器にマスバランスバイオマスPPを導入。これまで以上に地球に優しい容器に、今夏から切り替わっています。
マスバランスバイオマスPPの導入で、年間2,950kgの石油由来のプラスチック使用量を削減
「オパレイ容器は冷凍からレンジアップまで幅広い温度域で使用できるため、これまでアイス容器やカップラーメン容器、納豆容器、デザート容器などに使われてきました。様々な用途で使用いただいている製品だからこそ、アップグレードは欠かせません。そこで今回、マスバランスバイオマスPPをフタバ食品様にご提案させていただきました」
そうお話しいただいたのは、コバヤシの黒宮さん。鈴木さんとともにフタバ食品を担当しています。
株式会社コバヤシ 容器事業部 販売部 販売2課 黒宮有喜さん
これまでEquallybeautifulでも何度か紹介してきましたが、マスバランス方式最大のメリットは、物性を保ったまま素材を切り替えられること。
今回のサクレにおいても同様で、「素材を切り替えると数か月から半年単位で評価試験を行わなければいけないのですが、マスバランス方式ではその手間を省けるんです」と、コバヤシの鈴木さん。
今回のサクレにおいても同様で、「素材を切り替えると数か月から半年単位で評価試験を行わなければいけないのですが、マスバランス方式ではその手間を省けるんです」と、コバヤシの鈴木さん。
「業務の効率化という点では、工場の運用も恩恵を受けています。マスバランス方式の考え方は“割り当て”なので、通常のバイオマスよりも管理が楽になります。通常のバイオマスの場合、お客様の要望に対してバイオマス資源の比率を厳格に管理しなければいけません。端材も管理対象で、定められた比率を元に保管する必要があります。そうした手間が、マスバランス方式では発生しません。工場の負荷が減ったのは、思わぬメリットでした」(鈴木さん)
工場の実働時間が減ると、エネルギーの節約にも繋がっていきます。メリットばかりのマスバランス方式ですが、前例のない仕組みゆえに最初は理解が得られなかったそうです。そこでコバヤシは、2022年11月に豆腐容器※の一部にマスバランス方式を採用。そのサンプルとともに、各企業との対話を進めていきました。その地道な努力が実を結んだのが、サクレへの採用だったのです。
※コバヤシの豆腐容器は、国内トップのシェア率を誇ります。
※コバヤシの豆腐容器は、国内トップのシェア率を誇ります。
「コバヤシさんとは常にオパレイ容器のアップデートについて会話をさせていただいていました。オパレイ容器そのものが環境配慮されているのは重々承知ですが、それを更に進化させていく上でコストの問題はどうしても避けられません。それこそ、カップ重量を数ミリグラム単位で減らしていただくなどの細かい調整をしていただいたり、インクにバイオマスを使っていただいたり、環境配慮とコストを両立させるための取り組みを続けてきたのです。その流れでマスバランスバイオマスPPをご提案いただいたので、思い切ってサクレのカップ類全商品に採用させていただきました」(小野さん)
サクレの年間出荷量は5,000万個。今回、マスバランスバイオマスオパレイ容器になったことで年間実に容器50万個分、約2,950kgもの石油由来のプラスチック削減に繋がります。
「今回の取り組みはサクレという商品を通して、環境に興味のない方へもマスバランス方式をお知らせできると考えています」とは、フタバ食品企画開発の中井三鈴さん。
「今回の取り組みはサクレという商品を通して、環境に興味のない方へもマスバランス方式をお知らせできると考えています」とは、フタバ食品企画開発の中井三鈴さん。
「私は20代なのですが、購買理由の一つに“環境への配慮がなされているのか”を意識している世代だと思っています。私自身、スーパーで買い物をするときに、環境に配慮したものを少し高くても選ぶようにしています。その点、サクレは値段は変わらず環境にいいものを提供していきます。若い世代はもちろん、様々な方たちに受け入れていただけるのではないでしょうか」
フタバ食品株式会社 企画部 企画開発課 中井三鈴さん
39周年のその先へ。フタバ食品とコバヤシの歩みは続く
1985年に誕生し、今年39歳になったサクレ。サク(39)周年を記念して、『サクレ39サンプリング』や『新フレーバー総選挙』などの企画を行ってきました。今後もサクレを楽しんでもらうための試みであり、今回のマスバランスバイオマスPPの採用にも同じことが言えます。
「今後もお客様が望む味を作る。そして届ける。そのために容器は欠かせないものです。まずはマスバランスバイオマスPPを採用させていただきましたが、そこで留まることなく、再生可能な原料や再生エネルギーの利用にも取り組んでいきたいと考えています。ですから今回は、持続可能な未来に向けたコバヤシさんとのスタートラインという意味合いが強いかもしれません。未来の地球環境のためにやれることをやる、というのが我々フタバ食品のスタンスなので、コバヤシさんには今後もお付き合いいただければと思います」(小野さん)
「私たちコバヤシが扱う食品包装容器は、食べていただいたあとにはゴミになってしまいます。時にプラスチックを取り巻く逆風に悩まされることもありますが、我々が製造しているものは人々の生活に密接に関わっていて、便利に生活する上では欠かせません。だからこそ、少しでも環境負荷を軽減する取り組みが、企業責任だと考えています。マスバランスバイオマスPPのサクレ容器への割り当ては、現時点ではごく僅かですが、将来的には比率を増やしていかなければなりません。そのためにはマスバランス方式を多くの方に知っていただく必要があります。ですから今回のサクレへの採用は大きな意味を持つだろうと感じています」(鈴木さん)
食品会社と、食品容器の会社。立場は違えど、未来への眼差しを同じくするフタバ食品とコバヤシの歩みは今後も続いていきます。
美味しく優しく進化したサクレを手に、地球のことを少し考えてみる。時にはそんな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
美味しく優しく進化したサクレを手に、地球のことを少し考えてみる。時にはそんな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。