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廃棄になるテントやシュラフを 新しい商品に生まれ変わらせる 「コールマン」の新プロジェクト「MFYR」とは。

廃棄になるテントやシュラフを 新しい商品に生まれ変わらせる 「コールマン」の新プロジェクト「MFYR」とは。

廃棄になるテントやシュラフを 新しい商品に生まれ変わらせる 「コールマン」の新プロジェクト「MFYR」とは。

アメリカのアウトドアブランドの老舗、コールマン。今年、テントなどを再利用する「MFYR」というプロジェクトを立ち上げました。コールマンのSDGsへの向き合い方とは。中里社長に伺いました。

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『MFYR』= MOVEMENT FOR YOUR RIGHTは、サステナビリティの思想が、キャンプやアウトドアを愛する人々の中にムーブメントとなって拡がっていくことを願って立ち上げられたプロジェクトです。これまで廃棄されてきた、流通過程で処分対象となったテントやシュラフの生地を、日常使い出来るバッグへと生まれ変わらせています。
そんな「MFYR」が生まれた経緯は、どのようなものだったのでしょうか? 
「実は、特に難しいことは考えていません。やれることをやる。その流れで生まれてきたのが『MFYR』でした。そもそも、SDGsという言葉が生まれる前から、我々は同様な取り組みを行ってきました。たとえば、製品をご購入されたお客さまに20年30年は使っていただけるよう、メンテナンスに力を入れています。SDGsの中で、あまり声高には言われませんが、モノを長くつかうことも大事ですよね」
気負いなく答える中里社長の答えは、実にシンプルなものでした。
アウトドアとサスティナブルの親和性。
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「せっかくですから『MFYR』についてもう少し話させていただくと、先ほども申し上げたように、ただ一メーカーとしてやれることをやっていこうというシンプルな発想から生まれたプロジェクトになります。まだ使えるのに処分せざるを得ないテントの生地を、どうにか廃棄せずに再利用できないか?と考えているうちに「バッグを作る」というアイデアが生まれて、クリエイティブアドバイザーの松岡善之さん、デザイナーの森由美さんの協力を得て、形にすることができました。ひとまずやってみようかというようなところから始まり、課題が出る度に1つ1つクリアしていきました。そんなスタートではあったのですが、嬉しいことに現在販売しているバッグが好評なので生産量を倍に増やそうと計画しています。でも、生産量を増やすということは、その分機械や人のリソースも増やすということです。どの程度の規模が適切なのか、このプロジェクトを持続可能なものにするためにバランスを考えていきたいですね。ただ、本業(アウトドア商品)とのバランスについては、あまり考慮していません。やりたいことだからやっていて、今の時代に必要だからやっている。それでいざトライアルを始めてみたら反応が良かったので、全員がハッピーになったんですよね。正直に言って、それが一番大きな一歩だったかなとも思っています」
『MFYR』のアイテムは税込価格3,000~6,000円台。廃棄対象となる素材の回収や、そのリサイクル作業を経ているとは思えない金額感です。ユーザーからの反響も大きく、オンラインショップでは第2弾も発売後すぐに完売しました。
「価格面も含めて、皆さまからは嬉しいリアクションをいただいています。とはいえ、『MFYR』だけで今の事業規模を維持できるのかといえば、そうではない。あくまで副業という位置付けです。でも、今はそれでいい。SDGsとビジネスの折り合いをどうつけるのか、何が正しくて何が悪いのかは、これから分かってくるものです」
『MFYR』は日本独自のプロジェクトですが、コールマンはアメリカ発祥のメーカーです。グローバルでの展開についてお聞きしたところ、意外にも中里社長は首を横に振るのでした。
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「アメリカはアメリカでSDGsに取り組んでいます。その他の国も、それぞれの国で取り組んでいますね。そもそも、キャンプというのは地元に根ざしていくもの。私たちは日本のキャンプ場にお世話になっているので、日本に貢献しなければならない。グローバル全体としてもそうです。各地で今まで取り組んできたことを継続している感じですね。SDGsという気負いは、どの国もあまりないのではないでしょうか。ビジネスとの折り合いをどうつけるのかと先ほど言いましたが、SDGs自体がまだまだ発展途上の概念とも言えますからね」
SDGsを、中里社長は客観性をもってとらえているようです。日本におけるSDGsは、この先どう進むべきなのでしょうか。
「日本人は完璧主義で、とかく細かいところを見がちですよね。だけど、それはSDGsにとっては弱点になるのでは、と思っています。ある程度良いと思ったら、やる。その中で色々な新しいものが出てきて、成功するものもあるでしょうし、そうでないものも出てくる。その繰り返しによって、SDGsを実現する上での型とでも呼ぶべきものが出来ていくのだと思いますね」
つまるところ、やれることをやる。中里イズムとでも言うべきものを感じられるひと時でした。次回はコールマンが提唱する商品のロングライフの話を伺っていきます。モノを長く使ってもらうために、コールマンが守り続けている伝統とは? ご期待ください。
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writer
Equally beautiful編集部
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