国内初、太陽光発電所における「生態系リデザイン」事業開始
地域自治体向け、“未来の生態系を育む太陽光発電”を提供
世界的な脱炭素の流れを受けて、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの導入拡大は必要不可欠だ。
しかし、太陽光発電所を建設する際には、森林の伐採や土地の造成などが必要となる。それにともない、動植物や生態系に悪影響を及ぼすことが指摘され、現在多くの太陽光発電所では、パネルの下の土壌が剥き出しになっている。また、50年後、100年後の太陽光発電所跡地の扱いについては、事業者や自治体にもノウハウが備わっておらず、必要な対応に着手できていない状態である。
一方、人による適切な利用・管理が行われないため、緑の砂漠と化した森林は、生態系が本来持つ二酸化炭素の吸収や土壌保全といった機能が発揮されず、災害防止や地球温暖化防止など森林の公益的機能の維持に支障が生じ、各地方自治体は森林・生態系の管理に頭を悩ませている。
ETSは、これまで300MW超の太陽光発電の設計・工事を手掛ける中で、かねてより、敷地内における環境や生態系への配慮。また、その役割を終えた数十年先にある自然への理想的な回帰方法を模索してきた。
そこで、きわめて複雑な植物と微生物との共生ネットワークの解明・制御に関する研究で、世界から注目される東樹宏和京都大学准教授の研究成果を社会実装するサンリットの「生態系リデザインTM事業」に共感し、サンリットも適用領域を探査していたことから本事業の開始へと至った。
「生態系リデザイン」とは”いまある生態系”の性状を、生態学的知見から把握、特に、植物と微生物との共生関係に着目し、その生態系の価値を高める植生を設定。「ありたい姿/あるべき姿」から逆算して”いま”を考える、バックキャスト思考法で、土着の微生物を活用した土づくりや植栽を行い、設定した生態系を科学的に誘導する。
ETSが太陽光発電所設備の設計・施工・管理運営を行い、サンリットが敷地の土壌解析・太陽光発電の発電効率を維持した状態で「未来の生態系」を育む方法やデザイン、評価を行う。
これにより、太陽光発電を行いながら、生物多様性の保全や希少動植物の育成などに寄与する未来の生態系の育成を図ることができ、太陽光発電所の稼働が終了した土地で、所望の生態系サービスを提供・構築することが可能となる。
今後の展開としては、再エネ電源を求める事業者や荒廃した生態系を抱える地域自治体向けに、サービスの提供を行っていく。例えば、災害復興・災害予防としての“新たな生態系”誘導や単なる「植生回復」以上の価値創出、森林経営管理制度下での森林管理の支援、未利用・管理負担生態系の価値づくりなどだ。
本事業の実施には一定の知識やノウハウが必要であり、これらを持たずに太陽光発電をしながら生態系づくりを行おうとすると、ともすれば、価値ある生態系を毀損する恐れもある。そこで、2社のみならず、理念を共にする企業・自治体にも適宜、本事業の実施に必要な知識やノウハウを提供し、本事業の理念の実現のために協力し合うネットワークの形成に着手していくとしている。