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木製バリケードで、和歌山の緑と産業を救う。学生のアイディアから生まれた「森のスタンド」

木製バリケードで、和歌山の緑と産業を救う。学生のアイディアから生まれた「森のスタンド」

木製バリケードで、和歌山の緑と産業を救う。学生のアイディアから生まれた「森のスタンド」

世界の二酸化炭素排出量の増加や、欧州が直面するリサイクル事業のコスト。地球環境を取り巻く話題は決して明るいものばかりではないが、それでも歩みを進める人々はいる。今回紹介する「森のスタンド」は、産学連携で生まれた木製のバリケード。その規模は決して大きくないが、未来を変えていくのはいつだって小さな一歩だ。

自然に恵まれた土地を持つ和歌山県。しかし、徐々にではあるが緑地面積は減っている。都市化や土地所有者の高齢化などが主な原因だ。
また、人口流出も和歌山県の大きな課題の一つ。29年連続で人口減少が続いており、“人”にも“緑”にも課題を抱えているのだ。
「未来事業共同デザインプロジェクト」は、そんな和歌山県を元気にするために2022年からスタートしたプロジェクトだ。
本プロジェクトは、和歌山大学ときのくに信用金庫の包括連携協定からスタートしたもので、毎年地元企業に向けた新規事業計画を発表するというもの。
今回形になったのは2023に発表されたプロジェクトだ。
木製バリケードで、環境も街も救う。学生のアイディアから生まれた「森のスタンド」
学生たちが提案したのは、地域材を活用した木製バリケードだ。従来は鉄やプラスチック素材が使われるバリケードを、木に置き換える。発想はシンプルながらも、地域資源である紀州材を活用することで、地元企業の活性化を見据えている。
このアイデアに着目したのが、和歌山県海南市の山一製材だ。紀州材の活用を進める同社は学生の発想をヒントに、木製バリケード「森のスタンド」を開発し、2025年11月に販売を開始した。
木製バリケードで、環境も街も救う。学生のアイディアから生まれた「森のスタンド」
素材には和歌山県産の紀州材サーモウッド(桧)を使用。特殊な熱処理を施すことで防腐・防虫性能を高めながら、軽量で施工しやすい仕上がりを実現した。屋内外を問わず幅広い場面で活用できる。
さらに「森のスタンド」には企業名やロゴ、メッセージが印字可能だ。
バリケードの枠を超えて、情報発信の場としても機能する設計となっているわけだ。
既に採用が進んでいる和歌山県内では、和歌山城、紀州東照宮、玉津島神社といった歴史的建造物や観光施設、和歌山マリーナシティなどのレジャー施設、さらには複数の公共工事現場でも使われている。
木製バリケードで、環境も街も救う。学生のアイディアから生まれた「森のスタンド」
木製バリケードで、環境も街も救う。学生のアイディアから生まれた「森のスタンド」
木製バリケードで、環境も街も救う。学生のアイディアから生まれた「森のスタンド」
山一製材の木下憲治代表取締役は、こう語る。
「私たちは、森を守り、持続可能な森林を次世代へ引き継いでいくことを使命としています。
木材を活かすことは、森林の循環を支えるだけでなく、自然災害の軽減にもつながります。その想いから生まれたのが、学生の発想をもとに開発された森のスタンドです。背景には、森林を守りたいという強い願いが込められています。この製品が、環境や地域社会のために“自分たちに何ができるのか”を考えるきっかけとなり、全国の現場へ広がっていくことを願っています」
木製バリケードで、環境も街も救う。学生のアイディアから生まれた「森のスタンド」
学生の発想から生まれた取り組みが、地域材活用・景観保全・環境配慮を同時に叶える製品に。
この一歩が今後どのような広がりを見せていくのか。その答えを日本中で見られる日を楽しみに待ちたい。
writer
Equally beautiful編集部
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