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小売業界の課題を次世代素材「セルロースナノファイバー」が解決する

小売業界の課題を次世代素材「セルロースナノファイバー」が解決する

小売業界の課題を次世代素材「セルロースナノファイバー」が解決する

伊藤忠商事、ファミリーマート、三甲、京都大学生存圏研究所が連携し、木材由来の次世代素材「セルロースナノファイバー(CNF)」を活用した物流資材の実証事業をスタートさせる。小売店舗におけるCNF実装として世界初の試みとなる。

普及が期待される新素材「CNF」
セルロースナノファイバー(CNF)は、木材を原料とする繊維状の素材で、優れた強度特性とリサイクル性を併せ持つ。鋼鉄の5分の1の軽さでありながら強度は5倍という特徴を有し、環境負荷が低い持続可能な素材として注目を集めている。
セルロースナノファイバー素材が、これからのファミリーマートの物流を支える
現状の市場規模は60億円と決して大きくないが、脱炭素社会の実現に向けた切り札として成長が期待されている分野だ。
日本はCNFの研究開発において世界をリードしてきた実績があるが、製造コストなどの課題により産業用途での本格的な活用範囲は限られている。このため、実用化に向けた企業の取り組みが急務となっているなかで今回の連携がスタートした。
実証事業は静岡県の「令和7年度 セルロース循環経済ビジネス実証事業」に採択されており、今年8月から約半年間にわたって静岡県内のファミリーマート約80店舗で実施される。対象となるのは店舗への商品輸送で使用される「バット(番重)」と呼ばれる物流資材で、三甲が製造するCNF配合バットをファミリーマートの物流網で実際に運用し、その効果を検証するというものだ。
セルロースナノファイバー素材が、これからの物流を支える
物流資材の開発にあたり、伊藤忠商事は、国内最大手のプラスチック物流資材メーカーである三甲と協力。CNFの配合によりプラスチックの使用量を減らすだけでなく、物流資材の薄肉化・軽量化が実現できると期待されており、小売業界における物流課題の解決にも大きく貢献すると期待されている。
例えば商品輸送時の作業負担軽減や積載効率の改善といった効果が見込まれる。物流資材の軽量化により、配送トラックの燃費向上や作業員の身体的負担軽減が実現されれば、環境負荷の削減と労働環境の改善という二重の効果を得ることができる。
将来的に15%以上のバットの薄肉化・軽量化を目標に掲げており、実証結果が良好であれば他の物流資材への展開も視野に入れている。この取り組みが成功すれば、コンビニエンスストア業界全体の物流効率化と環境負荷削減に大きな影響を与える可能性がある。
本実験では、CNF研究の第一人者である京都大学生存圏研究所の矢野浩之特任教授が製品性能評価と環境評価を担当する。科学的根拠に基づいた厳密な検証により、CNF配合物流資材の実用性と環境効果を定量的に評価する計画だ。
伊藤忠商事は「The Brand-new Deal~利は川下にあり~」という経営方針のもと、CNFの用途拡大に向けて産業用途分野から嗜好品分野まで幅広い研究を展開している。同社はマーケットインの発想を重視し、実際の市場ニーズに基づいた製品開発を推進することで、CNFの実用化を加速させる方針だという。
コンビニエンスストア業界における物流の効率化と環境負荷削減を同時に実現する革新的なソリューションとして、その成果が注目される。成功例が出来れば、小売業界全体のサステナビリティを大きく前進させそうだ。
writer
Equally beautiful編集部
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