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「樹脂窓」と暮らす未来。樹脂窓リサイクルビジョンとは

「樹脂窓」と暮らす未来。樹脂窓リサイクルビジョンとは

「樹脂窓」と暮らす未来。樹脂窓リサイクルビジョンとは

高い断熱性を誇る樹脂窓。しかしその耐久性、リサイクル性について課題が残っている。カーボンニュートラル社会へ向けて樹脂窓の普及に期待が高まるなか、樹脂窓リサイクルの意義や仕組みづくりを進めるべく、樹脂窓リサイクルビジョンが策定された。

樹脂窓リサイクルで2050年カーボンニュートラル社会実現を目指す
近年の環境問題への対処のひとつとして日本国内では、住宅や建築物の高断熱・高気密に高い効果を発揮する樹脂窓の普及が期待されている。室内の温度変化を少なくすることで、空調の稼働率の低下や環境負荷の大きい設定温度を回避できるからだ。
日本における樹脂窓は1980年ごろ、寒冷地である北海道を中心に広く普及した。しかし樹脂窓は紫外線に弱く、色の変化、硬化、変形がみられるなど耐久性の面で他素材に劣る。北海道ではその多くが廃棄され、その最終処分方法が課題となっている。
一般社団法人日本サッシ協会では、「樹脂窓リサイクル検討委員会を発足し、上記の課題を解決すべく樹脂窓リサイクルの仕組みづくりに取り組んでいる。そこで『樹脂窓リサイクルの意義』、『樹脂窓リサイクルの目標』、『リサイクルの仕組みづくり』、『再生材活用の留意点』についての議論を重ね、樹脂窓リサイクル検討委員会の活動が実効的なものとなるよう樹脂窓リサイクルビジョンを策定した。
「樹脂窓」と暮らす未来。樹脂窓リサイクルビジョンとは
樹脂窓リサイクルビジョンをもとに、一般社団法人日本サッシ協会、樹脂サッシ工業会、塩ビ工業・環境協会と樹脂窓リサイクル検討委員会、委員各社が主体となり、樹脂窓リサイクルビジョンで示す目標達成に向け活動を推進していくという。
■樹脂窓リサイクルの意義
樹脂窓の普及を図り住宅の省エネ化を推進するとともに、資源循環性を高め、リサイクルを推進することにより廃棄物の最終処分量の削減、製造時の再生材活用によるCO2排出量の削減に貢献する。
■樹脂窓リサイクルの目標
検討委員会の委員各社において、2024年までに使用済み樹脂窓由来の再生材(塩化ビニル樹脂)を用いたリサイクル製品の市場投入を目指す。また ゼロエミッションを目指し、工場内で発生する端材の再利用及び再生原料化、更に使用済み樹脂窓を含めた再生材の回収に努め、2030年までに10,000ton/年の再生材活用を目指し、樹脂窓リサイクルの研究・啓発活動を推進する。
■リサイクルの仕組みづくり
地方自治体、解体事業者、中間処理事業者との連携を促し、回収拠点となるリサイクル協力企業を定め回収の仕組みづくりの支援を実践する。また中間処理業者、リサイクル協力企業とともに、分離回収、異物除去等の技術開発を支援し、リサイクルシステムの実装化を目指す。それらに加えて、ハウスメーカー・工務店、樹脂窓メーカーとの共同で再生材を用いた樹脂窓等のリサイクル製品の開発、易解体構造化など環境配慮設計を促し、リサイクル製品の開発・普及、環境配慮設計によりリサイクルを促進していく。
■再生材活用の留意点
使用済み樹脂窓由来の再生材を用いる場合、異物が混入し表面に異物の影響が表れることがある。さらに、使用済み樹脂窓の形材には過去に用いられた添加剤(鉛系安定剤)が含まれ、対応が必要になる可能性もある。そのため、リサイクル製品においては、品質への影響を考慮し再生材を適切な箇所に用いることを推奨する。
トステムがリサイクル率を高めた樹脂窓をリリース
「樹脂窓」と暮らす未来。樹脂窓リサイクルビジョンとは
そんな中、建築・住宅設備機器を取り扱うLIXIL(リクシル)は、窓・玄関まわり建材のブランドであるトステムにおいて、リサイクル率を大幅に高めた樹脂窓「EW」をリリースしている。
この「EW」はドイツに拠点を構えるプロファイン社と共同開発したもの。欧州ではドイツを中心に樹脂窓リサイクル事業が欧州各国に広がりをみせており、品質性能だけではなく、環境や社会にも貢献する多様な性能が社会に求められるようになっている。
共同開発によって、プロファイン社の世界有数の樹脂形材設計・押出技術、樹脂リサイクル技術と、住宅構造や台風などの気候風土など日本の住宅にフィットしたトステムの知見と技術を融合。性能やデザインはもちろん、リサイクル材の使用率を従来品と比べて3倍にまで拡大させた。
「樹脂窓」と暮らす未来。樹脂窓リサイクルビジョンとは
トステムでは現在、樹脂窓の開発・製造過程でできることとして「リサイクル材利用率の拡大」「樹脂とガラスの分離回収への配慮」「樹脂形材再資源化への配慮」を同時に推進し、端材再使用率100パーセント、さらに「市中回収材の再利用」についても検討を開始し、樹脂窓リサイクルの最大化を目指している。
樹脂窓リサイクルの実現、そしてカーボンニュートラル社会の実現には、官民一体による課題解決が必須だ。行政と企業のより強い連携と相互理解が求められている。
writer
Equally beautiful編集部
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