NEWS

衣服を循環させることを目指して。SPAが古着販売を開始

衣服を循環させることを目指して。SPAが古着販売を開始

衣服を循環させることを目指して。SPAが古着販売を開始

ファッション業界は世界第二位の環境汚染産業である。衣料品の大量生産・大量廃棄が環境的・社会的な問題となっている昨今だが、その問題はSPAの台頭によって加速されたといってもいいだろう。そんな中で、世界を代表する2つのSPAが循環型社会を目指す取り組みとして、古着の販売に乗り出した。

資源を大量に消費して生産され、売れ残れば大量に焼却される衣料品
まずSPAとはSpeciality store retailer of Private label Apparelの略称で、「製造小売業」と呼ばれる垂直統合型のサプライチェーンモデルを指す。商社などを通さず直接仕入れたり、卸などを経由せず自社直営で販売することでコストを抑えることが可能となり、さらに販売・在庫・顧客情報をサプライチェーン全体で共有できる。つまり「消費者のニーズを捉えたファッション性の高い商品を、低価格で販売できる」が最大のメリットなのだ。
しかし、これらのメリットとは裏腹にコストを抑えるために大量生産されることによって資源が使われ、売れ残った衣料品のほとんどが焼却処分されている現実をご存知だろうか。
 (4059)
衣料品をつくって売るには、素材や原料の生産、紡績、染色、裁断、縫製、輸送、販売といったいくつもの工程が必要で、廃棄も含めて環境にダメージを与えることが多々発生している。綿花をつくるには農薬、化学肥料、水が大量に必要で、合成繊維は石油からつくられ、紡績や染色には化学薬品が使われている。もちろん原料や製品の輸送に際しては、温暖化につながる二酸化炭素が排出される。ちなみに日本総合研究所によると服を1着つくるのに2368リットル(浴槽約11杯)もの水が必要という計算になる。
私たちが安価で流行に合わせた衣料品を購入できるのは、大量の資源を使って大量に衣料品を生産し、売れ残った衣料品のほぼ90%が焼却処分されている現実の上に成り立っているのだ。
大手SPAブランドが循環型社会を目指す取り組みをスタート
SPAブランドの代表でもあるユニクロは、「RE.UNIQLO(リ・ユニクロ)」の一環として新たにUNIQLO古着プロジェクトを立ち上げた。第1弾として、2023年10月11日から22日まで回収した衣料に手を加えて販売するポップアップストアを、ユニクロ原宿店(WITH HARAJUKU 地下1階 スペース・ストリート)で開催した。
 (4058)
ポップアップストアでは、回収したユニクロの衣料に染めと洗い加工を施し、ヴィンテージのような風合いにリメイクした古着と、染め加工をせず丁寧に検品と洗浄をし「その時代のユニクロ」を手頃な価格で購入することができる古着の2種類を販売。さらに、これらの古着を自分好みにカスタマイズできるワッペンも用意し、世界に1着だけの古着を楽しめるサービスも実施した。なお、今回のポップアップストアによる利益の一部は、地域で活動を行う社会福祉法人「渋谷区社会福祉協議会」に寄付し、渋谷区の子どもの健全育成事業推進に役立てられるという。
また、H&Mは10月5日からロンドンの旗艦店で古着やアクセサリーを販売する予定で、H&Mグループのブランドだけでなく、他のいくつかのブランドやデザイナーの衣類も販売対象にしている。※これまでも古着回収サービスはあったが、回収した古着の販売は関連会社に委託されていた。
古着=サスティナブルなもの。人から人の手に渡ることを考えれば、衣服の循環を象徴するものだとも言える。いまだ大量生産が続くSPAが古着販売に着手するのは、「売れるための服を作り、売れないものは廃棄する」という姿勢から「衣服を循環させること」への転換の兆しなのかもしれない。今後の動向にも注目したい。
writer
Equally beautiful編集部
  • facebook
  • twitter
  • line