リサイクル困難とされてきた複層フィルム包材をリサイクル可能に
2022年までに高品質マテリアルリサイクルの実用化を目指す
昨今国内外で使い捨てプラスチック問題への対策が急がれている。
日本でも廃棄物として排出されているプラスチックの約16パーセントが単純焼却や埋め立てなどで未処理のまま処理されている。そして約56パーセントが「サーマルリサイクル」や「熱回収」と呼ばれる焼却型の対策に頼っているのが現状だ。
特に食品のパッケージや洗剤などサニタリー商品の詰め替え用パウチなど、「軟包装」と呼ばれるフィルム包材は、構造が複雑だ。
用途ごとに異なる要求性能を確保するために、ポリオレフィンやポリエステルなどのフィルムの間に、印刷インキと接着剤といった多素材を用いる複層構成になっており、脱離が困難であることが要因だ。
2019年、化学メーカーである東洋インキSCホールディングスは、複層フィルム及び包材を構成するインキや粘接着剤などを脱離する技術を開発。2020年より伊藤忠商事と協業展開をスタートした。
2022年までに世界初(※1)となる高品質マテリアルリサイクルの実用化を目指している。
2021年中に実証パイロットプラントを建設し、LCA(ライフサイクルアセスメント)評価・コストシミュレーションなどの検証を進め、2022年のポストインダストリアルリサイクル(※2)事業開始を目指す。
また2025年を目途に商業プラントでのポストインダストリアルおよびポストコンシューマーリサイクル(※3)事業を開始する予定だ。
伊藤忠商事は本技術に関連する主要な製品材料における国内での独占マーケティング権及びアジア・欧州での優先交渉権を取得。同時に本技術を用いたマテリアルリサイクルの仕組みの構築、リサイクル可能な環境配慮パッケージ設計の訴求を通じて、食品・日用品メーカー、小売り、ブランドオーナーなどに向けた幅広い環境ソリューションの提供を行なうという。
両社はこの取り組みにより、現状再利用が難しい複層フィルム包材をリサイクル可能なものに転換し、国内外のマテリアルリサイクル率40パーセント以上(※4)を目指す。
(※1)東洋インキ調べ。複層フィルム素材及び包材を構成するインキや粘接着剤等を同時に脱離、リサイクルする技術として世界初。
(※2)製品の製造工程で出る廃棄原料のリサイクルをさす。
(※3)消費者が製品を使用した後に回収されたごみをさす。
(※4)例えば日本における現在のマテリアルリサイクル率は約27%であり、本割合を約1.5倍に引き上げることを目指す。