INTERVIEW

世代を超えて、それぞれの想いが重なる渋谷。その過去と現在、未来をつなぐプロジェクト

世代を超えて、それぞれの想いが重なる渋谷。その過去と現在、未来をつなぐプロジェクト

世代を超えて、それぞれの想いが重なる渋谷。その過去と現在、未来をつなぐプロジェクト

日本のカルチャーを常に牽引してきた渋谷。そんな渋谷が「発信」してきた多くのカルチャーを次の世代に繋げる、そして、行政と企業と人々を結びつける役割を担う、まさに未来をデザインするプロジェクトが「渋谷未来デザイン」です。

「渋谷未来デザイン」長田新子さんに聞く渋谷の未来
渋谷区という場所は「若者」をつくり続けている、そんな風に思ったことがあります。1970年代、おしゃれな若者が集まる原宿のセントラルアパート。今はラフォーレ原宿がある、あの交差点にありました。訪れたものに刺激を与えるようなそんな場所だったと聞きます。
この原宿の街から世界で活躍するファッションデザイナーも育ちました。その後も原宿はさまざまに変容していきます。70年代の終わり頃からプレッピーというスタイルのファッションが大流行します。同じ頃、デザイナー&キャラクターブランドが社会現象にもなりました。DC(デザイナーズ&キャラクターブランド)ブームです。
そのデザイナーのアトリエやブランドの拠点もほとんどが渋谷区内でした。その後も「渋カジ」という「渋谷」を冠したファッションの流行や「ギャル」文化も渋谷の街から発信されていきます。同じ頃「裏原」という言葉もあり、ここからも世界で活躍するデザイナーが巣立っていきました。
ファッションだけではなく、渋谷でスタートアップした企業も多く、IT企業をはじめ多くの若き起業者がここで生まれました。その意味でも渋谷は若者が巣立つ街、という位置付けもあるのではないでしょうか。「渋谷」は未来をつくる場所とも言えます。
そんな個性的な街、渋谷の未来について「渋谷未来デザイン」の理事で事務局次長、ジェネラルプロデューサーの長田新子さんにお話を伺いました。
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「2018年の立ち上げでしたが、その半年くらい前からボランティアで立ち上げ準備をしていました。渋谷という街を良くしようと考えることと渋谷区民のためになるということは、同じようでずれている部分もあります。他の区に比べても昼間人口、つまり遊びに来たり、仕事で働く人が多いのです。そこで私たちは企業と区をつなげる役割を担っていこうということでスタートしています。大企業主導でまちづくり組織を作っているところはいくつかあると思うのですが、行政主導でこのような組織が生まれ進めているのは全国でもユニークな存在だと思います」
行政の基本的なあり方は課題があって、その課題を解決すること。例えば、子育て支援の要望があれば、それを受けて解決していく、ということです。しかし、この「渋谷未来デザイン」は従来の施策とは大きく異なり、その名の通り未来志向が強いプロジェクトです。そのためモデルケースもなかったそうです。
行政とともに未来をつくる!
「渋谷未来デザインは未来に対する可能性、つまり開拓型のプロジェクトです。ですから実証実験をしていくことが仕事になるわけです。参考になるものがないからこその面白さと困難の中から生まれたプロジェクトのひとつが、『バーチャル渋谷』です。デジタル上にもうひとつの渋谷をつくり、現実とデジタルのふたつの渋谷をつなげ、新たな文化を発信するというデジタル都市構想です。デジタルだからできることもありますし、デジタルでなければできないこともあります。仮想空間だからより多くの人が集まって楽しめるイベントを開催しています」
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様々な意味で注目を集めるようになった渋谷のハロウィン。街は賑わいますが、翌日のゴミ問題も同時に取りざたされてきました。バーチャル渋谷というメタバース上でハロウィンを開催することは、デジタル上での楽しみを生み出すだけではなく、そうしたゴミ問題の解決にも寄与するものなのかもしれません。コロナ禍における、イベントの新しい楽しみ方の一つとも言えます。
アイデアを有機的につなぐ。
「渋谷区の基本構想 『ちがいを ちからに 変える街。渋谷区』があるのですが、渋谷は多様性の街だと思うのです。ファッションは世界でも有数の多様性がありますし、個々人の面白さが際立ってもいます。ユニークな人が集まる渋谷区だからこそできることもあるのです。そのひとつが“アイデアの祭典”と呼んでいる、『Social Innovation Week Shibuya (SIW)』です。アイデアを持っている人と人や企業を横並びに繋ぐことで、そのアイデアを実現できる世界にしていこうというものです」
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確かに個人の力だけでは、実現の難しいアイデアもあります。もし、SIWを通して、実現への足がかりが得られたとしたら。そして、そのアイデアが渋谷をより良いものにする可能性があるとしたら。まさに、『ちがいを ちからに 変える街。渋谷区』の体現です。また、こうした取り組みを可能としているのは「渋谷」そのものが持つ価値を、誰もが認識しているからでしょう。
「街がブランドであるという側面はあると思っています。世代を超えた『シティプライド』がありますよね。渋谷での想いや経験がプライドになる感覚です。渋谷に人が集まるのも、その存在感があるからです。起業する方が渋谷でスタートしたいと思うのもひとつのシティプライドだと思います。街としての包容力があるからだと感じることも多いですね」
そんな街の包容力が発揮されているのは『Social Innovation Week』に代表されるクリエイティブな面だけではないそうです。
スポーツの可能性を渋谷がサポート!
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「スポーツを通じた街づくりのプロジェクトも立ち上げていて、その中の一つが『アーバンスポーツ事業』です。ランニングやバスケットボール、eSportsやストリートスポーツなど渋谷にあったスポーツを活性化させ、活動の場を提供していくものです。中でもストリートスポーツは、NEXT GENERATIONSプロジェクトとして、体験の場を設けるとともに、マナーの向上を目指して新宮下公園と連動したイベントや実証実験を行っています。2024年以降には、岸体育館跡地にストリートスポーツの公園設置が計画されています。昨年からのスケートボード等ストリートスポーツへの注目や、ブレイクダンスが国際スポーツ大会の正式種目に追加されたこともあり、この事業には期待をしています」
クリエイティブのみならずスポーツにも注力する。こうした動きが渋谷の未来のカルチャーを形作っていくのでしょう。一方で、何をするにもつきまとってくるのが、お金の話。つまり、経済的な側面です。
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「渋谷は様々な店舗があり、同様に様々な人が訪れる街であることは皆さんご存知です。ただ、渋谷ならではのお土産はありません。先ほどシティプライドのお話を少しさせていただきましたが、シティブランドを醸成していくには、渋谷区の魅力をお土産=スーベニアという形でアウトプットし、発信していくことが必要だと考えています。コロナで打撃を受けた2020年に、『YOU MAKE SHIBUYA』というクラウドファンディングを実施させていただいたのですが、その際に返礼品として渋谷に縁のあるファッションブランドとのコラボレーションを行いました。この『YOU MAKE SHIBUYA』を渋谷ならではのブランドとして拡張していけないか、ということも考えています」
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女性の健康を考えるプロジェクト発進!
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その他にも、すべての女性の健康を考える「Woman’s Wellness Action」プロジェクトも立ち上げられたとのこと。お話を伺っていると「渋谷未来デザイン」の根底に流れているものに、社会貢献という意識が感じられます。より社会を良くしたい、渋谷区を良くしたい、そこに住む人たちの生活を良くしたい、そんな気持ちが伝わってきます。
「渋谷未来デザイン」がデザインする未来は、今までとはひと味もふた味も違う渋谷のカルチャーを世界に発信していくものになる。そんな期待感がある、ワクワクしたプロジェクトでした。
一般社団法人 渋谷未来デザイン
http://www.fds.or.jp
writer
Equally beautiful編集部
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