INTERVIEW

「日本盛」が真正面から取り組む、 持続可能な日本酒造り。(前編)

「日本盛」が真正面から取り組む、 持続可能な日本酒造り。(前編)

「日本盛」が真正面から取り組む、 持続可能な日本酒造り。(前編)

「日本盛は良いお酒〜♪」というCMソングは耳に残る素晴らしいメロディとキャッチコピーでした。「良いお酒」の「良い」とはただ「美味しい」だけではありません。時代に合わせて、お酒造りは変わるところもあります。その反面、本質はずっと引き継がれるものでもあります。今回は「日本盛」さんの工場を訪ね、その変わったところ、変わらぬ酒造りの本質を見学してきました。

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日本酒の三大産地といえば、兵庫の灘、京都の伏見、広島の西条と言われます。、灘を代表する蔵元のひとつ、「日本盛」さんの工場を訪ねてきました。この灘地方は古くは室町時代の終わり頃から栄えてきたそうです。
かつてはお酒の造りもされていて現在は専務取締役の曽我浩さんにお話を伺いました。
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「日本盛」の良さをお話ししてくださる曽我浩専務。楽しいお話を伺えました。
「灘は昔から六甲おろしが北風を運び、「寒造り」という美味しい酒造りに適した場所だったのです。北風はこの寒造りで米を蒸して冷やすのに効果を発揮しました。今は冷凍機があるから良いのですが、それでも灘の酒は宮水(兵庫県西宮市の沿岸部で湧き出る井戸水を指し、「西宮の水」が略されたもの)が違うので、やはりこの地域で酒造りが盛んなのです」
水の硬度の違いから「灘の男酒、伏見の女酒」と言われています。
「灘の宮水は硬水です。それでキリッとしたお酒ができあがります。反対に京都伏見の宮水は軟水。まろやかな仕上がりになるのです。そのため、男酒、女酒と言われています」
取材の後、工場に伺って、水を触ると確かに硬いことがわかりました。水にも手触りがあるのです。口に含むとさらりとしていますが、硬い水の感触を味わうこともできました。
健康、新鮮、自然の柱でお酒造りで環境に取り組む。
曽我専務に「日本盛」さんの取り組みを伺ってみました。
「弊社の取り組みは三つの柱があります。「自然」「健康」「新鮮」です。順に説明しますが、簡単にいうと「自然」は化粧品への取り組み。「健康」は機能性清酒などの開発。「新鮮」は今までお届けできなかった生原酒をお客さまに届けることです」
とおっしゃって、日本酒や人気商品の「米ぬか美人」などを見せていただきました。
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「米ぬか美人」のラインナップの一部。右手前のパッケージは「ケセラセラ」。
「まず「自然」に関しては35年の歴史を持つ、1987年発売の「米ぬか美人」があります。元々は杜氏の手が綺麗な点に着目したことから、開発が始まりました。お米の糠(ぬか)をはじめとした自然由来成分からできているので、年齢問わず使える自然派のスキンケア化粧品です。当時の若手女性社員が100人の使用データをとり、役員を説得して作り上げるというチャレンジ精神が功を奏しました。弊社は日本酒業界としては初の取り組みを数多くやっている会社です。役員も「やってみなはれ」という感じで、社員のチャレンジ精神を大切にしています。業界初のサウンドロゴを使用したテレビCM「日本盛は良いお酒〜♪」もそのひとつです。「米ぬか美人」も業界初の化粧品です」
「米ぬか美人」はお酒の原料である、お米を精米する際に出る米糠を使用した化粧品です。本来なら廃棄される原料の一部を再利用して化粧品に変える。今でも人気がある、ロングランのヒット商品であり、35年前から続くSDGsと言っても過言ではありません。
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初代「米ぬか美人」のパッケージ。酒屋の奥様の口コミでひろがり、ヒット商品に。
化粧品の開発は「米ぬか美人」の基礎化粧品にとどまりません。
「2020年には業界初のメイクアップ化粧品「ケセラセラ」を発売しています。ベース、チーク、アイシャドウ、アイブロウ、マスカラと必要なものはほぼすべて揃います。メイクアップ化粧品にも日本酒由来の成分が入っています。また、パッケージにもサトウキビ由来のバガスを使い、環境に配慮をしています」
と曽我さん。この「ケセラセラ」も環境への取り組みがなされていました。通常メイクアップ化粧品は数色が一つのパレットに入っていることが多く、好きな色もあれば、それほど使用しない色が入っていることもあります。好きな色を使い切ってしまうとパレットごと購入するのでお財布に優しいとは言えません。そこに注目して、「ケセラセラ」は色ごとにパレットを分けているので、好きな色だけを買い足すことができます。節約にもなり、無駄をなくすという意味では地球環境にも優しい化粧品になりました。
企業としてのSDGsへの取り組みのお話を社長室経営企画グループの八木浩祐さんに伺いました。
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「日本酒はSDGsの考え方をずっと実践してきた業界です」と八木浩祐さん。
「日本酒という存在を含めて、日本酒業界はSDGsに近い業界だと思っています。これは2年前に始めた「SDGs通信」です。いわゆる社内報的なもので、会社全体で継続的に意識することが大切だという想いから刊行しています。「my SDGs」をテーマに、社員から自分なりの環境や自然を考えた行動を書いてもらっています。健康のためにハイキングをしたという話や、日々大量に出るゴミを考えることの大切さ、節電のことやリサイクルの話など多岐に渡っています。同じ「日本盛」の社員がこんなことをしているんだ、と思うと自分もやってみよう! そんな風に感じてもらえたらと思ってつくっています」
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次回は本業の日本酒に関して伺います。
writer
Equally beautiful編集部
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