INTERVIEW

コーヒー豆の生産者と消費者をテクノロジーで繋ぐ。ファーマーコネクトが創るコーヒーの新たな世界。

コーヒー豆の生産者と消費者をテクノロジーで繋ぐ。ファーマーコネクトが創るコーヒーの新たな世界。

コーヒー豆の生産者と消費者をテクノロジーで繋ぐ。ファーマーコネクトが創るコーヒーの新たな世界。

日本人にとって身近な飲み物の一つが、コーヒーです。コーヒーのチェーン店からコンビニや喫茶店まで、コーヒーを楽しむための選択肢は街中に溢れています。そんな日本の年間のコーヒー消費量は約45万トン(※2019年時点)。一人当たりの消費量で換算すると、世界で四番目にコーヒーを飲んでいる国ということになるそうです。その一方で、コーヒーがどこで作られ、どんな人たちが携わっているのかを意識することは殆どないのではないでしょうか。今回はコーヒーの生産者と消費者を結びつける取組みをリードしている、スイスのファーマーコネクト社のCEOマイケル・クリスメント氏にお話を伺いました。

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farmer connect SA CEO MICHAEL CHRISMENT(マイケル・クリスメント)
TBWAやOgilvyといったマーケティングエージェンシーでの経験を経た後に、モンデリーズ・インターナショナル特やネスレなどの食品業界でデジタルマーケティングに取り組む。2020年から現職。

Equally Beautiful(以下、EB) 日本ではコーヒー文化が多様化しています。例えばスターバックスはとても人気で、若い人は新作ができる度にお店に駆けつけ列に並んで楽しんでいます。一方で昔ながらの喫茶店も変わらず人気で、様々なスタイルが混ざり合っています。多様性という観点で言うと、スイスでは4つの公用語が話されているそうですね。それぞれの公用語が使われる地域によって、コーヒー文化も異なるのでしょうか。
マイケル コーヒー文化というのは国やコミュニティによって異なりますが、多民族国家で話される言語の数も多いスイスでは言語によってコーヒーの呼び方も異なるし、それぞれが独自の伝統や文化を持っています。スイス独自のコーヒー文化、というと特に“これ”といったものが明確にある訳ではないのですが、スイス国内の言語的、民族的多様性に加えて、今は世界中の文化や要素が混ざり合っています。スイスのコーヒー文化はとても多様性があって豊かなんです。
ファーマーコネクトはスイスで始まった会社なのですが、メンバーはスイスの中でも色んな地域出身の人がいて、ドイツやブラジル、オランダなど国外のメンバーも多くいる多様性のあるグループです。とても大事なのは、ファーマーコネクトの核でもあり目的でもある、コーヒーの消費をテクノロジーで人間味あふれるものにするということ。そしてこれは実現可能なことだと信じています。
スターバックスも、Instagramなどのフィード/投稿(テクノロジー)を通して新商品の情報が手元に届いて、みんながお店に駆けつけ、シェアする。これらの体験はスターバックスがテクノロジーを通して生み出しているもので、それが生産者とエンドユーザーを繋ぐものにもなります。私たちがやろうとしていることはコーヒー豆が手元に届くまでの道のりと、どういう人がそのコーヒー豆を作ったのかということを知ってもらって人と人を繋ぐ、ということなんです。
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EB ファーマーコネクトが提供するThankMyFarmer™は、まさにテクノロジーで生産者と消費者を繋げるサービスですよね。コーヒーやカカオ製品のパッケージにプリントされたQRコードを読み取ると、生産者から産地の情報や輸送ルートまでも知ることが出来る。それだけでなく、コーヒーの生産地域の支援プロジェクトに参加することも可能で、自分がどんなコーヒーを購入し、楽しむのかをより一層意識することになりそうです。
トレーサビリティコーヒー自体は以前から流通していましたが、ファーマーコネクトはもっと先のことを見据えているように感じました。
マイケル トレーサビリティというのはサステナビリティへの第一歩だと思います。どこからきたのか、というルーツを知らずに、自分の信念を持つことは難しいし、その信念なしにどこかへ向かうという決断をすることはとても難しい。サステナビリティというのは“点”ではなく、“道のり”、“線”なんです。
トレーサビリティはサステナビリティの第一歩、という風にさっきお伝えしましたが、そこにはいくつものステップがあって、トレーサビリティもそうだし、影響力の大きいことをしたいのであればデジタライゼーションもとても重要。なぜなら私たちはコーヒー豆の生産において何が起きているのかを知り、データを集めるために一つ一つの農場を実際に訪れることはできないからです。
ファーマーコネクトはend to end、二者間を結ぶ存在であるということをとても大切にしていて、生産者同士、また生産者と消費者を結び、繋ぐことを目的としています。この目的を実現するためにも私たちはコラボレーションということも大事にしていて、様々なパートナーたちと協力してこのエコシステムを作り上げているんです。
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EB トレーサビリティをきっかけに、コーヒー業界の持続可能性が創りあげられていく。そんな未来が見えるようです。
マイケル 我々のサービスによって消費者はコーヒー豆だけではなく、生産者のデータも一緒に得られるので、「能動的にコーヒー豆を選ぶ」というアクションを誘発出来ます。そうなるとコーヒー豆の商品価値が上がり、生産者にとって経済的なメリットが生まれてきます。
このような経済的なメリットに加えて、情報自体も彼らにとって大きなメリットになります。生産に関するデータ、コミュニティに関するデータ、取引に関するデータなどコーヒー豆の生まれから消費されるまでの様々な段階でのデータがありますが、それらの情報は農家の方たちを中心に据えています。生産の過程をデジタル化することで、自分たちの事業を第三者に対して証明できます。そうなると、銀行などから経済的なサポートを受けやすくなりますし、ビジネスパートナーの人たちに必要なトレーニングや支援をしてもらうことができます。
また、エンドユーザーと繋がることによって得られる共同体意識というものも大きなメリットの一つだと思います。スキャンするだけで私たちは東京にいながらウガンダなど遠く離れた地域にいるコーヒー生産者の人たちを知ることができるんです。
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EB ThankMyFarmer™は伊藤忠商事の出資を受け、2021年から日本でもローンチしています。スペシャリティコーヒーを取り扱うPHILOCOFFEAがパートナーとして参加されていますね。日本でのネクストステップ、展望をどう考えていらっしゃいますか?
マイケル PHILOCOFFEAと出会い一緒にコラボレーションできることは本当に素晴らしいことでとても感謝しています。ThankMyFarmer™は日本のカルチャーからもインスピレーションを受けていて「専門家によるコーヒーのレビュー機能」と「コーヒーの豆知識クイズ・ゲーム大会」という日本市場向けの機能もあります。
日本人はもっとコーヒーのプロフィールなど詳細を知りたいと思っていると思うし、日本やアジアで馴染みのあるゲーム文化と合わせてコーヒーや生産者について理解を深めることができます。ファーマーコネクトは先ほどお伝えしたようにコラボレーションということをとても大事にしているので、PHILOCOFFEAや伊藤忠商事などのようなパートナーシップを今後もより増やして行きたいと思っています。
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EB 最後に少し未来の話をお話させてください。深刻な気候変動の影響で、2050年にはコーヒー栽培に適した土地が約半分になってしまうと言われています。ThankMyFarmer™がこの問題に関してどのような影響を与えられると思いますか?
マイケル バリューチェーンをよりサステナブルな方向性に持っていくために動機づけをし、促していくようなアクションはとても大切です。企業がサステナブルな習慣をもち、その価値をシェアすることで人々がよりサステナビリティについて責任意識を持つようになると思いますし、特に若い世代に影響が大きいと思うんです。そうすることで最終的には一番大事な生産者にとって利益がもたらされます。経済的な意味だけでなく、必要な指導などがきちんと受けられるという意味において社会的な意義も生み出します。今はっきりと2050年問題に対するインパクトを語ることは出来ませんが、一歩ずつ進歩していくことで、新しい未来が開けてくると信じています。
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writer
Equally beautiful編集部
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