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目指すは廃棄物ゼロの未来。空間づくりにおける日本のトップランナーとして、環境配慮型オフィスを追求する「リリカラ」のビジョンとは?

目指すは廃棄物ゼロの未来。空間づくりにおける日本のトップランナーとして、環境配慮型オフィスを追求する「リリカラ」のビジョンとは?

目指すは廃棄物ゼロの未来。空間づくりにおける日本のトップランナーとして、環境配慮型オフィスを追求する「リリカラ」のビジョンとは?

内装材メーカー国内大手の「リリカラ」が、新たにフランスのTarkett(ターケット)社の再生タイルカーペット商材「 DESSO(デッソ)」を取り扱います。この床材は環境配慮型商材のなかでも、一歩踏み込んだリサイクルスキームで、これからのオフィスづくりに役立てられていくようです。本記事では、リリカラご担当者へのインタビューを交えつつ、環境配慮型内装材の最前線と、今後のオフィス環境に対するビジョンをお届けします。

TOP画像:2023年10月に完成したばかりのリリカラ日比谷オフィスのエントランスにて。左/リリカラ スペースソリューション事業部の森 芽久美さん。右/リリカラインテリア事業部床材プロダクト課の浅沼香里さん。
エコニール(R)を採用。100%リサイクルできるタイルカーペット
「 一般的にタイルカーペットとは、 繊維層とバッキング層を合わせた2層構造のカーペットを指しています。Tarkett(ターケット)社の『DESSO(デッソ)』は、この繊維層に再生ナイロンであるエコニール(R)(※)を使用し、さらにバッキング材にもリサイクル材を使用しています」
※エコニール(R)とは、廃棄された魚網やリサイクルされた使用済みカーペットなどを原料としたイタリア・アクアフィル社のリサイクルナイロン糸のこと。参照URL https://equallybeautiful.com/glossary/159
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タイルカーペット断面。上側の白〜グレーの部分が繊維層。下側のベージュの部分がバッキング層。

こう説明するのは、リリカラ インテリア事業部部床材プロダクト課の浅沼香里さんです。エコニール(R)のみならず、バッキング材についても、ターケット社の生産工場が位置するオランダの水道浄水過程で発生するチョーク( 炭酸カルシウムが主成分)をリサイクルしてバッキング材の中に再利用しているので、「デッソ」は既存製品よりも格段にリサイクル比率が高いものになっているそうです。
「ターケット社では、エコニール(R)製造元のアクアフィル社と共同で、 オランダにリサイクルセンターを設立しています。世界各国から回収してきたタイルカーペットを再度、繊維層とバッキング層に分離したうえで、それぞれの素材別に再生。リサイクルの循環を繋げていくコンセプトが注目されています」(浅沼さん)
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画像上2枚/ターケット社にて回収されたタイルカーペットの繊維層を分離してリサイクルする工程。画像下2枚/同じくバッキング層を分離して破砕し、再びリサイクルする工程。

これまでにもタイルカーペットをバッキング層にリサイクルする事例はありましたが、「デッソ」はさらに一歩踏み込み、素材を厳密に分離したうえで繊維層は繊維層に、バッキング層はバッキング層に余すところなくリサイクルして、再び新しい「デッソ」製品に生まれ変わります。
そして「デッソ」を日本で導入する際にも、上記のリサイクルスキームが適用されると言います。カーペット取り換え時のみならず、施工時に発生した端材も含め、廃棄ゼロが目指されています。リリカラでオフィス空間の設計・デザインを担当するスペースソリューション事業部の森 芽久美さんはこう話します。
「今回は『デッソ』を日本で初めてリリカラが扱うことになるので、そのテストケースも兼ねて、東京・日比谷にあるリリカラ スペースソリューション事業部のオフィスに『デッソ』を導入しました。実際に、床材の2〜3割が『デッソ』製品となっています」
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多彩な色が混ざったシリーズと、色糸が特徴的なシリーズ。左右ともに「デッソ」。

日比谷オフィスでは「デッソ」以外の既存カーペットも敢えて使用。工事を進めながら、端材を分別して回収できるか試行錯誤したそうです。また最新のゾーニングデザインによりカーペットが円形にくり抜かれていますが、その端材も厳密に管理されました。
「端材はゴミではありません。付加価値の高いものに再生するという意味において、貴重な資源と捉えています」(森さん)
内装業界において、日本は欧米に比べて環境意識が遅れている?
環境省が発表する産業廃棄物の排出量、処理状況データを見ると、最も環境負荷がかかっているのは電気・ガス・水道。その次に農業、そして3番目に建設業が挙がっています。
そのような中で、建設業の環境対策として目覚ましい進展が見られるのは、躯体や窓・サッシの断熱性能など、光熱費を抑えるといった方面での取り組み。一方で、内装材においては環境というキーワードが、まだまだ定着していないというのが日本国内の現状です。ところが、欧米諸国では異なる状況があると言います。
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リリカラ スペースソリューション事業部の森 芽久美さん。

「2019年に行われたドイツの展示会『ハイムテキスタイル』あたりから環境商材がチラホラと出始めた印象です。同年のイタリアの展示会『ミラノサローネ』でも、大手メーカーからは環境配慮した家具が出始めていました。そして翌年の2020年、ドイツの展示会『ハイムテキスタイル』では、環境商材がかなりフィーチャーされている印象を受けました。
特に欧米企業のプロジェクトですと、空間デザインの良し悪しよりも、環境にどれだけ配慮しているかの評価配分のほうが、高くなっている事例も出てきています。実際に進んでいる案件でも、マテリアルの選択のみならず、 関連業者、内装業者が施工先の300km以内にいるかどうか、 資材運送時の車の排ガス総量といったものまで考慮されます」(森さん)
たしかに欧米に比べて、日本の内装材に対する環境意識は出遅れているようです。ただし森さんによると「そんな風潮も、変化の兆しが出ている」とも。森さんの部署ではオフィス空間を設計・デザインしていますが、デザインコンペティションにおけるクライアントの評価軸が変わりつつあるそうなのです。
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リリカラ インテリア事業部床材プロダクト課の浅沼香里さん。

そして浅沼さんも、こう続けます。
「オフィスには環境対策済みの内装材や家具以外、使いたくないという会社も、日本国内で出てきています。したがってこれからは内装材の隅々まで、そういった商品を取り揃えていかなければなりません」
ちなみに、今回の「デッソ」シリーズですが、一般的なバージン素材を使用するタイルカーペットとの価格差はおよそ2倍となります。最も安価なタイルカーペットの上代が平米あたり7400円前後。対する「デッソ」は、1万4800円の想定です。もちろんデザインの違いなどがあり、一概に比較はできませんが、価格差に開きがあるのは事実です。
一方で品質についてはどうでしょうか。実は繊維部分に使用されている再生ナイロンのエコニール(R)はケミカルリサイクル(※)で再びナイロンにされているため、糸の成形性、発色性はバージン素材となんら変わらず、見た目にも両者にまったく相違はありません。
※化学的再生法。化学的に一段階前の原料に分解してから、再び原料に戻すリサイクル手法。参考URL https://equallybeautiful.com/glossary/242
逆に、相違がないからこそ、地球環境に対する企業の想いが大切なのであり、その視点をまっすぐに発信する姿勢が問われるのです。
リリカラが率先して取り組む内装業界のSDGs
では、リリカラの想いとはどのようなものでしょう? 同社の環境対策について、森さんはこう具体策を語ります。
「スペースソリューション事業部の立場からは、施工工事に出る廃棄物をゼロにする取り組みをやっていきたいです。すでに8割程度のリサイクル率を達成できてはいますが、残りの2割を減らしていくのはハードルが高いことです。
ただ私たちは現場施工のみならず、設計そのものも手掛けています。それゆえ廃棄せざるを得ないとしても、“捨てやすい素材を選ぶ”というように施工の前段階からエコに配慮することで、両軸で廃棄削減を目指していけると思っています」
一方で、インテリア部門も環境対策を進めているそうです。浅沼さんが、こう話します。
「私たちは、取り扱い製品の見本帳を作っています。 この見本帳は、現物の壁紙、床材、カーテンといったサンプルが貼られているので、販売期限を過ぎた見本帳は産業廃棄物扱いになってしまうのです。
この問題に対して、最近ではウェブカタログの展開を広げています。 建築現場、内装業者、施工業者、どうしても見本帳がないといけないという方もいらっしゃるのですが、業界の常識に縛られず、可能ならばウェブを活用していただき、最適な配分で取り組んでいきたいと考えています」
そうした取り組みは、リリカラのオフィス設計の思想そのものへと結びついています。オフィス構築ですでに50年の長い歴史を持つリリカラですが、そのリリカラがリードするサステナブルオフィスの最新形が、ここ日比谷オフィス。働く人が快適に、より豊かでポジティブに働ける、 未来社会を思い描いています。
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リリカラ スペースソリューション事業部が入る、リリカラ 日比谷オフィス。円形でくり抜かれているのが、ターケット社のタイルカーペットです。異なる床材を用いて、緩やかにゾーニングすることで、仕切りを廃した、開かれた空間となっています。

「キーワードは“+1℃”(プラス1℃)。熱すぎるわけでもなく、冷たすぎるわけでもない。リリカラに集う人が、ちょっとずつ熱くなれて、その熱量がどんどん他者に影響していくことをイメージしました。それが、例えば波紋のような円形のゾーニングデザインとなっています」(森さん)
「家具なども既存メーカーの環境配慮されたものを中心として使っています。ペットボトルを再生したチェアや、伐採することでCO2削減に貢献するラウンジチェア、PFAS FREEのカーテンなど、世の中にある環境配慮製品を選んで使用するだけで、ここまで徹底できることをアピールしたいと考えました」(森さん)
なるほど「デッソ」のように先進の環境商材を国内拠点でも導入することが可能になり、環境対策の視点において日本のオフィスは大きなターニングポイントを迎えたようです。その一方で、コストを潤沢にかけられない場合でも、環境配慮製品の既製品を選んでデザインに取り入れていけることをリリカラは証明しています。
企業ごとでさまざまに状況、モチベーションが異なるなかで、理想を追うばかりに対策が進まぬことがないように、リリカラは多彩な選択肢を提供しはじめています。そうすることで、あらゆる日本のオフィスに環境対策を推進していくこと。それが国内大手の内装材メーカー、リリカラのビジョンであると受け取りました。
リリカラ株式会社
http://www.lilycolor.co.jp

スペースソリューション事業部
https://www.lilycolor.co.jp/ss/
writer
Equally beautiful編集部
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