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冷凍食品から垣間見る、 食の未来と環境の未来

冷凍食品から垣間見る、 食の未来と環境の未来

冷凍食品から垣間見る、 食の未来と環境の未来

最近の冷凍食品は美味しい。そう感じることが多くなったように思います。たとえば、本格中華顔負けの餃子やパラパラご飯の理想のチャーハンが家庭でも手軽に、しかもリーズナブルな価格で食べられるようになりました。冷凍力=保存食というイメージをまだ持っている人もいるかもしれませんが、今では家庭の食卓で料理の一品をサポートしてくれる心強い存在になっています。

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今回はそんな「冷凍食品」業界の中心にいる味の素冷凍食品株式会社に、「冷凍食品」の現在、そして、未来予想図を伺いました。
お話をしてくださったのは味の素冷凍食品株式会社の関根雅さん。
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少し前になりますが、SNS上で、冷凍食品は「手抜き」ではないか、という論争がありました。日本の食文化は手間暇かけた手づくりが基本でしたが、その考え方も時代とともに変化してきています。顕著になったのが、2020年8月の「冷凍食品手抜き論争」です。ことの始まりは疲れて帰ってきた女性が食卓に冷凍食品の餃子を出したこと。子どもは喜んだけれど、旦那さんは「手抜きじゃないか」と一言。それに対して味の素冷凍食品が「冷凍食品を使うことは、手抜きではなく『手間抜き』です」という投稿を公式ツイッターより発信しました。この投稿には合計「44万いいね!」がつき、テレビやネットメディアでも報道され、大きな話題になったというお話です。
「私たち冷凍食品業界では、冷凍食品は『手抜き』ではなく、『手間抜き』という意識がありました。それで『手間抜き』という発信をしたのです。ありがたいことに、それに共感いただけたということですね。もちろん、手づくりを否定しているわけではありません。冷凍食品を上手に取り入れて、家族の時間をもっとつくって欲しい、という願いを込めての投稿でした」
「手づくりしなければ」ということにとらわれ過ぎて、家族との時間が疎かになってしまっては、それこそ本末転倒な話でもあるというわけです。
「とても豊かになった社会で、冷凍食品の他にも安くて美味しいものが溢れてきています。別な価値観を生み出していくことが冷凍食品の未来に必要だと考えています」
「美味しい」は当たり前であり、絶対。
豊かになるということは、多様性が受け入れられるということでもあります。味の素冷凍食品でも同様に、お客様の多様なニーズに合わせた製品を開発しているそうです。
「例えば、アレルギーをお持ちの方や高血圧などで塩分コントロールを余儀なくされている方、こうした方にも冷凍食品を手に取っていただきたい。便利だけれど、食べられないから手が出せないという状況を、商品サイドが解決していかなければなりません。お客様に寄り添うことが、我々の使命の一つだと考えています」
実際に、味の素冷凍食品のいくつかの製品には、「塩分カット」表記のあるものや「食物3大アレルゲン(卵、乳、小麦)」を使わないものもあります。
「アレルギーのことを考えて、小麦不使用のしょうゆを代表に、全ての原料に小麦、卵、乳を使用していない唐揚げをつくったところ、疾患のある方から家族と一緒に食べられると感謝していただきました。ですが、その感謝は『次は何をやってくれるの?』という嬉しいプレッシャーでもあります。作るからには、美味しいものを食べていただきたい。減塩にしたら味が落ちた、では本末転倒です。美味しいは当たり前であり、絶対なのです」
味に対するこだわりは冒頭に書いたように、巷でも「冷凍食品が美味しい」、「冷凍食品が本格的すぎる!」、などの声があることからもわかります。味の素冷凍食品らしい、味へのこだわりを伺ったところで、地球環境に配慮した製造工程の見直しのお話を伺いたいと思います。
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持続可能な供給のためにできること
「生産工場の工程を見直して、工場で使用する燃料は、重油やLPG(液化石油ガス)から、CO2の発生が少ない都市ガスやLNG(液化天然ガス)への転換を行っています。揚げ物調理で使用済みになった植物性油をバイオ燃料として再利用することにより、CO2排出量を削減するなど、環境への負担を低減した取り組みも行っています。それは、地球のことを考えることが、ひいては今後の会社のためにもなっていくと捉えているからです」
その他にも、調理機器メーカーと一緒にエネルギー効率の良いものを開発したこと。国内工場の冷媒は脱フロンを掲げたことなど、大きなものから細かなものまで、様々な取組みをお話しいただきました。そんな中でも、脱フロンは意外な副産物を生み出したそうです。
「脱フロンのフリーザーでエネルギーを25%削減することができました。環境配慮に対して我々企業側は、従来のやり方やコストを考えてしまって二の足を踏んでしまうこともありますが、何よりも大事なのは覚悟だと思っています。目先の利益ではなく、未来のためにやり通す覚悟です」
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次にお話しいただいたのは「モーダルシフト」です。モーダルシフトとは、トラック等の自動車で行われている貨物輸送を見直すことです。環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換することをいいます。
「ロジスティックスの見直しでは輸送時に使われていたトラックや自動車を鉄道や船舶に置き換えていくことに取り組みました。加えて、自社のみならず他社とも連携する、<共同>という概念でさらなる見直しを行っています。他の冷凍食品のメーカーさんと<共同保管><共同出荷><共同配送>をしていくことで、CO2の削減と個々のメーカーの配送コスト削減に繋がりました。製品を売るという点でライバルなのですが、お客様にも会社にとっても効率的に商品を届けるという点では同じ視点を持てているのではないでしょうか」
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輸送・製造工程の見直しだけではなく、個々の冷凍食品のパッケージにも環境配慮型の施策が行われていると、関根さんは続けます。
「ギョーザやお弁当品を中心に冷凍食品にはトレイが必要という既成概念があります。確かに流通上で食品の保護には役立っています。ただ、その役目はパッケージを開封した時に終わってしまいます。トレイをなくして、どうダメージを軽減するのか。商品の味を損なわずに輸送できるのか。そんな様々なハードルを越えて作られたのが、あじペン®ECOが使用された商品です」
他にも日本の冷凍食品業界初の取り組みとして「地鶏釜めし」は、材質の一部に紙を使用したパッケージを採用していますが、そのアプローチは調理方法にも及んでいました。
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「いわゆる<レンチン>のときにラップを不要にしても美味しく食べられるように改良をした商品もあります。しっかりと美味しいものをつくって、お客さまに買っていただき、美味しさ、楽しさを味わっていただきたいのです」
関根さんは最後に再び、「美味しさは絶対」という言葉を残しました。冷凍食品のあくなきまでの進化はますます私たちの食卓を楽しませてくれると思います。そして、そこでもう一度考えさせられます。冷凍食品は「手抜き」ではなく「手間抜き」であるということ。忙しい主婦の方々が、家族との団欒の時間をもっと持てるように、そのために美味しいものをつくる、という決意が感じられました。
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writer
Equally beautiful編集部
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