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連載

2021.03.30

今、プラスチックを取り巻く現状を知っておきたい。#1

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数年前から「脱プラスチック(通称「脱プラ」)」という言葉を耳にするようになりました。ですが、現代を生きる私たちにとって、プラスチックをなくす生活というのは本当にリアリティのあるものなのでしょうか? そんな疑問を持ちながら、伊藤忠商事でバイオマスプラスチックを主に取り扱う小林拓矢さんにお話を伺いました。バイオマスプラスチックが変えていくものとは…? 全4回にわたるプラスチック談義をお楽しみください。

「毎日」という言葉。そして、「日々の営み(いとなみ)」という言葉。私たちの暮らしを改めて振り返ってみてください。食品を買って、食べる。飲料を買って飲む。服を着る。生活必需品を使う。毎日の暮らしを見回してみるとプラスチックという素材がいかに身近であり、必要不可欠な存在であるかを知ることができます。
とはいえ、一方では地球環境の観点から「脱プラ」という言葉をはじめ、プラスチックの現状はなかなか厳しい立場にいることも確かなことです。こんな状況だからこそ、「EQUALLY BEAUTIFUL」はプラスチックの現状と地球環境に優しいプラスチックのあり方に注目しました。バイオプラスチックの中でも特に環境への配慮が高いと注目を浴びる「バイオマスプラスチック」。そんな「バイオマスプラスチック」の扱いでは第一人者である伊藤忠商事で、日々バイオマスプラスチックを好循環させて市場に送り出すために奔走している小林拓矢さんにお話を伺ってきました。
EQUALLY BEAUTIFUL(以下「EB」)大きな枠組みとして、伊藤忠商事の環境問題へのアプローチをお聞きしたいと思います。
小林拓矢さん(以下「小林」)まず、環境問題とは何か? から話してみたいと思います。環境問題の話と一口に言っても多岐に渡るのですが、その中でも大きく、「ゴミ」の問題、「CO2つまり温暖化」の問題、そして「限りある資源」を大切に使わなければならないという問題が挙げられるのではないでしょうか。ゴミに関していえば自分の街にゴミが溢れているという皆さんの実生活に関わる部分だけではなく、「海洋ゴミ」の問題があります。グローバルな視点から見ても沿岸に漂着するゴミ問題はかなり深刻です。
CO2は地球温暖化に直接関わることで、かなり身近に感じられるかもしれません。投資家たちも身近な問題として迫っているからこそ注目しています。わかりやすい例で言うと日本では最近の様々な豪雨の問題、2005年・2017年にアメリカ合衆国を襲ったハリケーンの甚大な被害、2019年9月から2020年2月まで発生したオーストラリアの山火事などです。このように、気候変動によって生じる弊害は誰もが知り、身近に捉えられる問題になっています。そして、限りある資源というのは水もしかりですが、石油や天然ガスなどの資源を大切にしていくことも大事だと思います。
そこで私たち伊藤忠商事はどうアプローチするかと言うことになるのですが、この「ゴミ」「CO2」「限りある資源」の3つの問題がいずれかが重なっている、もしくは全てが重なっている領域に対して行っています。
EB 包括的というか、かなりの広範囲なアプローチをしている印象です。
小林 伊藤忠商事も「商事」と名がつく以上、お客様の関心に対してビジネスとしてご提供できるものを見つけていくことが肝心です。お客様がどんなこと、つまりお客様が環境へのアプローチのどの方向に興味を持っていただけるか、が私たちにとってとても重要な仕事です。「御用聞き」としての役割を担い、その関心にかかる課題を解決するソリューションをご提供していくわけです。ですから、私たちはバイオマスプラスチックだけではなく、海洋ゴミ由来再生プラスチック、リサイクルプラスチックなどといったさまざまな環境に配慮のあるプラスチックといったものの全部を把握していくことで企業の関心にお答えするのです。企業に対しての環境周りのコンサルティングの業務をしながら、ビジネスを展開していく。こうした一連の流れを私たちは「古くて新しい御用聞き」と呼んでいます。お客様の商品で環境対応しなければならないとなったとき、この商品はストーリーとして、主にどういう形で出発しているのか、あるいはその出自を伺います。例えば瀬戸内海だったら、海洋ゴミ問題もありますし、そういうところの対応ができると良いですよ、とお話しさせていただくわけです。
EB その会社にとって必要なものを見つけ出していくという作業をされているということですね。それにしても、古くて新しい御用聞きという言葉は新鮮ですね。
小林 商社ってなんだろう、という疑問を持つ方も多いと思うのですが、プラスチックをひとつとって具体的に言いますと、例えば大元の石油や天然ガスなどを出発点にそこからさまざまな化学品やプラスチックの原料を作る人がいて、それを成形する人がいて、ボトルになることもあれば、ファミリーマートなどの食品容器になることもあるわけです。それがブランドオーナーに納品されて商品になって小売に並ぶというのが一般的なバリューチェーンのイメージです。ではその中で商社は何をするのか、というと、例えば原料を作る人に売ってもらって、成形する人に買ってもらうという間に入る仕事をしています。つまりこのバリューチェーンのすべての間に入ってお願いをして、頭を下げているわけですね。ですが、環境ビジネスにおいてはこのすべてを見直しました。点で話すと交渉をそれぞれにしないといけませんが、この間を取り持つことをすべてやっているのであれば、全部繋げて、ひとつの機能として提示しましょう、という考えに変わってきているのです。
EB 一括して提案できるというわけですね。
小林 食品関連であれば、ルーツを辿って廃食油を原料にしたバイオマスプラスチックを進めますし、シャンプーなどはリサイクルプラスチックが適していると思っています。また、会社の主力製品のイメージが「海」と関わりがあるのであれば、海洋ごみ由来再生プラスチックをお勧めしますね。ですので、環境問題に対するソリューションを、原料から製品への大きなストーリーの中でブランドオーナーさんにお渡しするところまで考えているというのが現状です。
EB 環境問題というと、意識が高い人たちが語るものというイメージがありましたが、伊藤忠商事の取り組みはかなり「身近」な気がします。たとえば、コンビニエンスストアの陳列棚に並んでいるものがすべて対象になっている感があるような。
小林 そうですね。環境問題は以前は意識の高い人の関心事だったことは否めませんが、ストロー問題やレジ袋の有料化あたりから、かなり広範囲の人たちが意識してくださるようになりました。「脱プラ」の動きや海洋ゴミの問題など、かなり悪者にされているプラスチックですが、良い意味で考えれば日本人全体の「関心」へと導いてくれた気がします。一方で、有用なプラスチックというものを考えてみたいと思います。今回の新型コロナウイルス感染症予防でもプラスチックの必要性が顕著になりました。
EB 感染症予防ではどんなものがプラスチックと関わっているのでしょうか?
小林 意外かと思われるかもしれませんが、マスクです。今、私がしている不織布マスクもポリプロピレンです。また、感染症予防に欠かせなくなっている仕切り板はアクリルやポリカーボネートだったりします。フェイスガードもプラスチックです。
EB なるほど。現在の生活において、プラスチックという存在は本当に切っても切れないものになっていることが如実にわかりますね。
次回は現代の生活におけるプラスチックの必要性から話を伺っていこうと思います。
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