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連載

2021.05.28

知らぬ間に「エコ」や「サスティナブル」を実践、 画期的な新ブランド「Convenience Wear」の デザイナー・落合宏理さんインタビュー。3回目

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コンビニに置かれる商品は常に既成概念との闘いなのかもしれません。ただ新しいから良いわけでもありません。老若男女、さらはにファッションに興味がある人からない人までに届かないといけないものである。一見矛盾した考えをデザインというパワーで1つにまとめたのが「Convenience Wear」なのかもしれません。環境問題がファッションというキーワードと同列に並ぶクリエイティブの意識を、ファッションデザイナーの落合宏理さんにその原点から伺いました。

EQUALLY BEAUTIFUL(以下「EB」と略) 落合さんの環境に対する意識を教えていただけますか?
落合宏理さん(以下「落合」と略)​ 私がファッションに目覚めたのは高校1年生の頃ですが、その当時の経験に影響を受けているかもしれません。マルタンマルジェラをはじめ、アントワープシックスといわれるムーブメントが起こっていたタイミングで、東京ではアンダーカバーやベーシングエイプ、藤原ヒロシさんといった裏原宿といわれるカルチャーが生まれていました。そんな中、パタゴニアと出会い、衝撃を受けました。ペットボトルから服が出来るとはどういうことだろうと。
EB パタゴニアは目白に第1号店ができたときも衝撃でしたが、ペットボトルからフリースをつくるというニュースもすごい出来事だったと記憶しています。(※編集部注:1988年、目白に「パタゴニア」1号店がオープン。1993年「パタゴニア」はペットボトルからリサイクル・ポリエステルの製造を始め、ゴミをフリースに変革させました。)
落合 そのファッションを通じたリサイクルが10代の時に、すごくおしゃれに感じたのです。ペットボトルから服が生まれるというのはパタゴニアがパイオニアだったように思いますね。今ではマルタンマルジェラとパタゴニアを当たり前のように合わせる外国人の方は多いですけど、日本はもっと早かった。私が10代の頃、すでにやっていましたからね。マルタンマルジェラ、アンダーカバーやエイプが持つモードの熱量、カルチャーの熱量と、パタゴニアのようなアウトドアのエコロジーの熱量とが、同時多発的に発生していた時代でした。
EB 当時は「anan」や「ポパイ」が古着ミックスとかグランジ、アウトドアミックスというキーワードで特集を組んでいましたね。

環境問題はファッション界の 最重要課題になっている!

落合 パタゴニアに代表されるように、以前からファッションの中にも環境問題がありました。ですが、ここ2年ほどで、ファッション全体へと広がっているように思えます。過剰在庫を作らないこと、法律の整備といったことなど、さまざまな取組の話が耳に入ってきています。真剣に取り組まなければならない状況に来ているなと肌で感じています。そうした状況に対して、我々日本のブランドは、海外に比べると取組が遅れているのではないでしょうか。
EB 今回の「Convenience Wear」への影響は如何でしょうか?
落合​ 「Convenience Wear」は、従来のファッションにはないアプローチが出来ると考えています。ファッションには元々、服を着ることで日々の生活にちょっとした幸せを感じたり、「季節の変わり目だな」と自然と四季を感じるような力があります。「Convenience Wear」はそうした力を内包しつつも、コンビニという立地を活かして多くの人へメッセージを伝えられます。新しい形の日用品ブランドになっていくとの感触があります。
EB コンビニに自然に置かれている、ということがいかに大事か、ということですね。
落合 年間50億人が利用するからこそ、押しつけることなく、メッセージを伝えられます。コンビニという空間を上手く使うことで、自分の好きなもの・買ったものが社会貢献になっていく。
EB  なるほど、それは面白いですね。ちなみに「Convenience Wear」は素材でも環境に配慮したものを使っていると聞いています。
落合 伊藤忠商事さんのリサイクルポリエステルである「RENU®」や旭化成さんの機能糸「Paircool®」を使用した素材を開発しましたが、こうした素材の商品がコンビニに並んでいることはとても大きいことだと思います。パッケージひとつとってみても社会情勢によって変わるから、どれが新しい古いとかではなくて、信念を持って環境に良いものをちゃんとやっていきたいです。(※編集部付記:サスティナビリティの観点から一度はパッケージをなくしたものの、コロナ感染防止の観点からパッケージを復活させたブランドもあります。)
EB ​環境とビジネスの調和が取れた事例と言えますね。環境ビジネスには様々なものがありますが、知識が先行してしまい、どうしても頭でっかちになってしまう印象があります。その点、落合さんは対照的です。デザインはできるだけシンプルに、あまりメッセージを出さず自然に。受け手にストレスがないように考えられているように感じます。
落合 アートが良い例で、少し前まではアートは限られた人たちだけで語っていました。それが今ではすっかり一般的なものになっています。何故かというと、お金という尺度でアートを見られるようになったからです。そして実際に、ビジネスが生まれるようになっています。アートとビジネスの調和ですね。また、アートの中でもエコは話題になります。そのときに「お金になる。しかも環境にも良い」というとギャラリーにお金が入ってくるわけです。お金が発生するから文化が発展する。そうするとデザインする側も、より高みを目指す必要が出てきて、好循環が生まれるわけです。ビジネスは回っていかないといけない。環境ビジネスも回していくことが大切なのだと思います。
EB お金が回るということは長く続くということです。みんなが参加できるような場をつくっていくことでカルチャーが生まれていく。
落合 だから良いデザインもお金にならないといけないと思います。
EB デザインに関して、次回、さらに詳しく伺いたいと思います。
落合 宏理(おちあい ひろみち)1977年 東京生まれ 。日本のファッションデザイナー。文化服装学院卒業。卒業後はテキスタイル会社に勤務。2007年「FACETASM」を立ち上げる。2011年には‘12SSコレクションをランウェイでコレクション発表。2015年にはアルマーニに招聘されアルマーニ/テアトロにてミラノメンズコレクション発表。2016年には第三回LVMH Young Fashion Designer Prizeで日本人初のファイナリストに選ばれる。世界から注目を集める日本人デザイナーのひとり。
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