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連載

2021.05.21

知らぬ間に「エコ」や「サスティナブル」を実践、 画期的な新ブランド「Convenience Wear」の デザイナー・落合宏理さんインタビュー。2回目

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毎日行くコンビニだからできるアプローチがあります。裾野広く、多くの人々の意識を行動で変えることができるメディアがコンビニなのかもしれません。それを今体現しようとしているのが「Convenience Wear」のデザイナー・落合宏理さんです。

EQUALLY BEAUTIFUL(以下「EB」と略)​ 前回では「Convenience Wear」のスタートから、コンビニの現状を伺いました。そこからどうやって「Convenience Wear」を展開させるかのさまざまなアイデアがあることを知りました。そして、袋、つまりパッケージに対する考え方にも相当にこだわっていらっしゃると思いました。
落合宏理さん(以下「落合」と略)​ 私たちデザイナーができることはどんどんいろんなものを開発して、良い素材を毎シーズン用意することだと思っています。今もパッケージデザインの素材集めから動いています。その際に考えているのは、まずは環境に良い素材で、それを捨てさせないということです。
EB​ 「捨てさせない」と言葉でいうのは簡単ですが、結果的に「捨てられない」デザインに落とし込むということだと思います。それはなかなかハードルが高いことではないのでしょうか?
落合​ 我々ファッションの人間としては、良い中身、良いデザインは当たり前です。その中で、どうやって新しいライフスタイルに定着させていくかという部分を考えて動いていました。
EB​ 定着させるためにどうデザインするか、ということですね。
落合​ 一応勉強したつもりの私たちでも、エコについて1分話せと言われたら話せない。
EB​ 我々でも聞いたこともない片仮名言葉を理解できないこともあるのだと思います。

「普通」を理解することで進化した 「Convenience Wear」の秘話がある。

落合​ その感覚のズレをまず、理解していませんでした。当たり前が当たり前でなくなる瞬間でした。でも、それもそうだよなって思い返しました。都会にいることが偉いわけではなくて、私たちが受ける情報量が逆に多すぎるのです。それを強要したところで土台無理なのです。SNSもいらない、「いいね」ボタンも押さないが、コンビニには行く世代もいるわけです。だから、言葉で説明し、「これがエコなのですよ」と押し付けるより、「いつの間にかエコを実践している」が良いんじゃないかなって思います。こうした現状を理解していきながら、デザインを進めて、「Convenience Wear」がデビューしたという感じですね。
EB​ 情報過多とおっしゃっていましたが、今、環境問題を考えている多種多様な業界は更に情報を付加してきています。例えば紙コップとプラスチックコップで比較した時に、素材の製造時と輸送時ではCO2の排出量が異なるかもしれない。CO2の排出量を見える化し、比較できるという発想に進むことを、ビジネスチャンスに繋げようとしている会社もあり、そこでは情報や理論が重視されます。それに引き替え、ファッションはカルチャーですから、服を選ぶ時に頭で考えるのでは面白くなくなってしまうのではないかなと思うのです。情報がどんどん明らかになっていく状況ってどう思いますか?
落合​ ファッションブランドも環境に配慮しないと、百貨店とのビジネスや、セレクトショップも運営できないという情報は入ってきています。明確な線引きは今のところありませんが、環境に配慮すべきだと考えています。環境配慮に対してのレギュレーションが明確に出たところで、新しいファッションの価値観を付加することができるかもしれません。だからファッションは何が出来るかっていうひとつの新しいカードをいただいたと思っています。そこに新しいファッションの進むべき道はあるとも思っていて、テキスタイルメーカー、資材メーカーの方々の対応の仕方もすごく重要になってくると思いますし、すぐに変わるということは出来ないかもしれないけど、すぐに変わらなきゃいけない部分もあると思っていますね。業界全体で何かを変えるチャンスなのです。
EB​ ファッション業界にとっても逆に面白くなるカードになるということですね。
落合​ そうですね。ただ、気をつけなければならないのは、言葉遊びに陥らないことです。こういう素材を使うのはよくない、ということが出てくるとそこにみんなが集中することがあります。でもそれは、本質ではないと思うのです。
EB​ ファッションではありませんが、プラスチックストローが良い例かもしれません。プラスチックが悪者になりましたが、紙ストローを作るときもCO2の排出はあるわけですよね。CO2排出の観点からして、どちらがエコなのか? その辺りのことを正確に把握している人は、殆どいないと思います。
落合​ そこを明確化できるのであれば、つまり、ちゃんとした現代の答えがあった中でデザインできるのであればありがたいと思います。実際そうした情報がわからない状況の中に我々ファッション業界があるのも確かなことです。一方、「Convenience Wear」はコンビニ業界から端を発したものなので、ファッション業界にいるだけでは取れない情報も入ってきます。日本のこの産業にはこういうアプローチができますね、というような新しい方向性が出てくる可能性もある気がしています。
EB​ 環境ビジネスの情報はある意味で専門的な気がしますが、「Convenience Wear」は基本的に普通に使ってほしいと思っていると感じました。靴下でもラインものはコンビニにはなかったと思います。かつては冠婚葬祭用であるとか白と黒のもので、お泊まりグッズという印象です。そういえば、昔ラジオで、永六輔さんが「旅の時に持っていくのは紙パンツが良いのです」とおっしゃっていたのを思い出しました。旅には使い捨てが気軽で良いということだったと思います。ほとんどの人がコンビニの下着やソックスは使い捨てだと認識していそうです。そのできあがった概念、いわば常識へのアプローチが今回の「Convenience Wear」なのだと思いました。常識に反して長く使えるという部分は、かなり意識して作られていますよね。
落合​ 私は洋服全体が好きです。大量生産には大量生産の美しさがあり、それも好きです。コンビニも、海外の友だちはみんな好きです。特に日本のコンビニはきれいだし、美味しいし、日本の面白いものが詰まっていると言ってみんな好きですよ。これはクリエイター、デザイナーとしてもそうなのだろうなって思います。
EB​ 古着で人気のアイテムももとはアメリカの大量生産の服で、スーパーマーケットで売られていたわけです。古着屋に並ぶ普通のネルシャツ、ワークウェアなど古いものは良いなと思うこともしばしばです。でも逆にいうと、なんで今これが出来ないのだろうとも思いますね。質実剛健という言葉が1番合うような、デザインとしても最もシンプルで、最もポピュラーであるものを「Convenience Wear」を通して落合さんがデザインする、それもコンビニ好きな人たちに向けて。次回は少し話を変えて、落合さんの環境に対する意識を伺えれば、と思っています。
落合 宏理(おちあい ひろみち) 1977年 東京生まれ。日本のファッションデザイナー。文化服装学院卒業。卒業後はテキスタイル会社に勤務。2007年「FACETASM」を立ち上げる。2011年には‘12SSコレクションをランウェイでコレクション発表。2015年にはアルマーニに招聘されアルマーニ/テアトロにてミラノメンズコレクション発表。2016年には第三回LVMH Young Fashion Designer Prizeで日本人初のファイナリストに選ばれる。世界から注目を集める日本人デザイナーのひとり。
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